耳なし芳一VS平家落人 / そのミエミエの展開とは

Title : エレベーターの亡霊さん達

 

 

 

「肩透かしを食らっちまったんだねえ、オマイさん(笑)」

「おうよ、たまげたわいなァ~。ガキの時分にガッコでな、歌ァ習ろうたわけよ歌ッ。♪ 手の平を太陽に 透かしてみれば~ ♪ ってなもんよ。まさか肩まで透けて見えるたあ、流石にこのオレも思わなんだ。大した発達してはりまッせー、近頃の進歩ゆーもんは」

「何言うてはりますのん。お札(紙幣)の透かしは今に始まったことやないやないのん。おかしなこと言わはるお人やわあ~(笑)。平家の亡霊に耳ちぎられはった耳なし芳一の話、知ってはりますやろ~?(笑)。偉いお坊様に、ありがたいお経を全身に書いてもらいなはったんやろ?。せやから現れた平家の落人には芳一の姿は見えなんだ。お経の字ィの力で見えなんだ~ゆう話やろ~?」

「そやそや思い出したワ!。ウッカリ耳にだけお経書くのを忘れてもうたんやったな!。せやけど取返しつかん話ッちゅーことやでホンマの話がな。平家に耳だけ見えたんや。あれ、透けてたんかいなァ!。耳、全部見えてたんと違はりますの?~」

「手ぇの平も、肩も、透けて見えるんやろ?。ほしたら耳かて透けて見えとるに決まっとるやないの~、あんじょう分かったってや」

「透明人間てあるやんか。な?。体が全部見えんちゅーやつ。な?。あれな、透けて明るいて書くやん?。あれ、明るいトコだけで透けてんの?。暗いトコやったら透けへんの?。あら?、暗いとこやったら透けてのうても見えへんちゅー話やでしかし。あ、分かた!。明るいとこやと、多少は見えてんねん!、全然見えへんのとチャウチャウ!(爆)、すこぉぉ…し見えてんのよアレ。透けてんのよ」

「オマイさん、ワテ今ふと思うたんやし。何やろ…。暗いとこおるん透けたお人は、透暗人間、言わはりますのん?。何やおかしいなあ…」

「どっちにしたって関係あらへん。いッくら透けようともなあ、こっちが力持ってりゃエエの。分かるか。こっちがきちぃ~んと見透かす力持ってりゃええの。ただそれだけの話やで、しかし」

「平家のお人らは見透かす力、よう持たんかった言うんかえ~?」

「平家の場合はなッ、自分らが怨霊になって透けとんのや。透けてるんが芳一んこと見透かしてもやで、透かしと透かしで二重否定になってまうんや。見えへん見えへん、もう金輪際見えへんのッ!」

「もうエエわ」

 

失礼しましたぁ~

 

 

◆写真タイトル / 明白に紫陽花

 

 

 

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喜怒哀楽コントロールのコツ/ 癒されるために

Title : 喜怒哀楽は飛んで行く。ピヨピヨ。

 

 

 

 

 

 

これまで一連の亜万田ボードを見て諸君も薄々気づき始めたように、上記ボードもまた、それらの事柄にダメ押しする驚愕の恐るべき内容である。我々はこれらの喜怒哀楽について長きに渡り苦しめられてきた。もううんざりだ振り回されるのは。そう痛感している御同輩も少なからずだと思う。喜びも怒りも、全てこのツマミをつまんでオッポリ出す、つまみ出すことが実にたやすく出来るものだったのだ。

ほがらかなピクニックの際、ジャムパンにアリが乗っているのを見た経験はおアリだろうか。座した自身の持つジャムパンにまで登頂成功し、挙句ジャムに後ろ足取られ必死の脚振りをしているアリ。これらを、いともたやすくツマみ捨てた経験が1度や2度ならずともおアリではないだろうか。

喜びに浸っていると突然誰かに冷水を浴びせかけられ意気消沈してしまう、という苦い経験。その時、その者はアナタの “ 喜 ” のツマミ、インデックスをつまみ上げ、アナタの “ 喜 ” を放り投げたということなのである。これを油断大敵と人は言う。ツマミは無防備なのだ。

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最新、中古、全て取り揃え / 新しきは古きへの道

 

「スマホとかケータイ出来て、誰でも何処でもすぐさま写真の時代になりましたもんねえ~。動画とかも撮れちゃうし、世界中の人に見てもらえるし、ホントいい時代になったと思います」サワニコフェ(さわやかニコニコ・フェイスの略)で上司のルッコにお茶を入れる秘書のラッコ。

「ホントホント。ちょっと前までオーケストラの中に、トロンボーン奏者の代わりに小象が混じり込んでてパオーッて声上げてても誰も気が付かなかったのにねえ~。いい時代だわ。ものによってはTVより情報早い時あるもんね」と口紅をティッシュで押さえながら切れ長の目を光らすルッコ。

「あの……。小象は観客席からは、見えなかったん、ですかね……」

「見えたら騒ぎになるじゃないのォォ…。何言ってるのよォォォ…」

「お茶どうぞ。あ、さっきの話なんですけど、今、インスタントカメラが流行ってるらしいですよ。アレ、失敗しても削除出来ないからソレが面白いみたいですね、今の人達には。時代は繰り返すってことでしょうかね(愛想笑)」

「そうねえ…。優れた殺虫剤が開発されても、ノミ除去は結局、洗面器に水を張って、お酒入れて、一晩中明かりで照らしとくわけじゃないのォォォ…。ノミが飛び込んで溺れ死ぬって、ノミ何考えてるのかしらァァァ…。ノミだけに飲んべえ?、ハハハ。アッハッハッハッ!。ちょっとこれ何、すごく可笑しいわアハハハハ!」

「そうですねえ~。私もゴキブリ対策でホウ酸ダンゴ作ったクチなんで分かります。とどのつまりは昔の知恵はバカにならないってことですよね。新しければいいものじゃないっていうか…」

「テープレコーダーも人気だっていうじゃないのォォォォ…。アナログが珍しすぎちゃって、でしょォォォォ?。飽きたらコッチ、また飽きて戻りの繰り返し」

「ルッコさんも、こないだ離婚したダンナさんとバッタリ出会って焼けポックンに火が付いたって大騒ぎしてましたもんね(面白い返答を期待する笑)」

「そほよォォォォ…。“ 女房、分かれてみればイイ女 ” って外国の教訓にもあるじゃないのォォ、全くそうみたいだったわネェェェ…。そのうち人工衛星にも飽きて、お正月のタコ上げのタコで月に行こうとする時がくるわよNASAもォ」

「そうかと思えば、更にさらに進化も開発も止まりませんよね。いつかルッコさんも口紅は手描きじゃなくってスタンプ押すだけの時代になると思います。実は私、自分で唇の型を取って合成樹脂で固めたやつで毎朝スタンプしてるんです口紅」

「自分にキスマークしてるのアナタ……。恐いヒトねェェェ…」

 

 

◆写真タイトル / 夢の競演

 

 

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幸福認証 /人に触れ変わる人

 

その路をどこまでも 真っすぐに歩いてゆけば 答が分かる

幸福認証にそう言われ 他に代案もなかったから 歩き始めた

誰の姿もない 行き交わないのは好都合 挨拶の緊張がない

左右に 高い高い灰色の壁 見上げれば空も曇天

壁と空の境界が 分からない でも大丈夫

空を見上げるのは 1日に 1度きりだから

 

この路は裏路地のようで 袋小路のようで 引き返したくなる

幸福認証に言われたので 引き返さないだけ

歩き始めて小一時間 自分の着衣の色柄が 薄くなって 色抜け

そんな気がしたけど 大丈夫 そんなはずは ないから

 

進む 進む 進む 歩く 歩く 歩く 音楽聴きながらが 良かった

バッグがないから 仕方ないけど

おや どうしてバッグがないのだろう いつもの肩掛けは

 

歩き疲れ始めた頃 良かった ここで行き止まり

うすうす袋小路の気がしていたよ とにかく飽きてしまった

答がないと確認出来たから 無駄とは言えず とりあえず納得

そうと分かれば 引き返そう 長居は無用 さっさとね

戻る 戻る 戻る 帰る 帰る 帰る

いくら速度を速めても ペースダウン ペースダウン 疲れてるから?

もどかしいな 思うようにならないのは いつものことだけど

 

始発点が見えてきた ああ 幸福認証が現れた 近づいて来る 来る 来る

ごくろうさま

ご苦労様 どうだった? 随分といいようだね すっきりしないでしょう?

答えようと 返事をしようと思ったけど 急にシラけて言うのをやめた

なかなか いいぞ 答えるのを踏みとどまるだなんて 確かに随分といい

 

今度はこちらの番だ 思うところへ行ける 選んで行ける

幸福認証は別れ際

認証されました と言った

何が? 何を?

まさか幸福? 行きどまっただけなのに? もしやして儀式だった?

おまじない? さっきの 進む がダウンロード? だったらいいな

 

 

夕暮れ 誰ひとり居ない 車も自転車もない おや いま気がついた

音がしないよ 音がない 色もないよ どうした?

すごくついてる 人が来た 人が来た どうしてなのか聞いてみよ

あの、

「行きどまった へ行ったでしょ」

え 行きました 今も戻ってきたばかり どうして分かりました?

「だって うつむきっぱなしで 歩いてるじゃないか アンタ」

言っちゃったよオイ 何だ失礼なやつ 話がまるで見えないよ

誰かまた来る 男か女か不思議と分からない だけど聞かなくちゃ

あのう、

「行き止まりは アナタでしょ」

あ 袋小路でした 確かに どうして分かりました?

「だって誰とも目を合わせないで 進んでるじゃないの アナタ」

 

いなくなっちゃったよエエエ? 何てやつだ おかしくないか

目を合わせないのはエチケット 暗黙の了解なんだ  知らないのか

 

向こうからまた来る 今度は顔上げて 目を見て 聞いてやる

3度目の正直だ 同じ手に乗って たまるか

 

あの、

「幸福認証されたんでしょう(笑)。ボクもこないだ、されたんですよ」

「え。どういうことですか」

「え?。…だってキミ、目を見て、顔上げて、ボクと話してるじゃないですか」

 

 

◆写真タイトル / 歌を聴いている

 

 

 

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オタマジャクシは見た / 高齢化社会のマナー

 

小学2年生の夏休み。道端で近所の顔見知りお兄ちゃん達3人とバッタリ。向こうもボクに一目置いている。生まれながらのザリガニ・ハンターであると。小学5年生といえば立派な大人。そんな者達にクチボソ釣りに連れてってやろうかと誘われたからサア大変!。

こッ、このボクが一緒に?!。行く行く行く!、何処行くの?、クチボソってどんな魚?!、大人の仲間入りをした小猿は有頂天、菜の花周りを飛び交うモンシロチョウさながら、お兄ちゃん達の周りをモンキーチョウ。

なんかよく知らないがバスに乗って小一時間。訳分からぬ間に、ウチの近所よりもっと田舎の風景の中に降りた。バス賃タダだった(ホントはお兄ちゃんがボクのを支払っていた)。

平野みたいなとこで山が周りにあんまりない。田んぼ横の流れがない川に沿って少し歩く。草がこんもり柔らかくて沈みながら歩く。1回だけ片っぽのズック脱げちゃったや。

「ここで釣ろう」と親分のお兄ちゃんが言ったもんだから、皆それぞれバッグを下ろして釣りの準備を始めた。

「ボクのも(釣り竿)ある?」「あるわけないだろ」

クチボソ早く見たい。フナとどう違うかな?。もっと大きいか小さいか、色はどうかな?。ワクワクする。暑い。汗たらたら出る。

待っても待ってもチッとも釣れない。お兄ちゃん達は不機嫌な顔をしてアグラ座り。皆デコチンに汗玉が一杯吹き出ている。

あんまりにも退屈だからボクはぷらぷら歩き出した。ザリガニ、カエルでも居ないかな。見つかったら最後だと思え。ククク。

オオッ!。湯のようにぬるい緑色した池の水面、大きな大きなウシガエルのオタマジャクシが、暑さでやられたか夢遊病のようにふらふらふらぁ~と川底から垂直に上がってきて、ポッ、と水面の空気を吸って、再びふらふらふらぁ~っと川底に戻ってゆく!。ボクは足音忍ばせ小走りにお兄ちゃん達の元へ取って返し、

「ねえねえ、網貸してッ」「何。何すんだ」「オタマジャクシ」

「釣りしてんだぞ。魚が逃げちゃうだろ」「うんとアッチ」

網を片手、転がるように取って返す。「待ってろ!許さないからな」

何をどう許さないのか自分にさえ分からないが、とにかくそんな気持ち。身を屈ませ、さっきの奴だか他の奴だか分からないが、とにかく此処で待ち伏せす…アッ!、もう来たあーッ!!

ジャブァーッ!!

限界ギリギリまで身を乗り出していた小猿は全身横一直線で宙を横ッ飛び、シュートを阻止せんとするゴールキーパーさながら、そのままドブオン、と川に全身沈んで見せた。

プァッハアーッ!!。

瞬時に襲った地獄の戦慄!、は次の瞬間、アリャ「何だ~、これ」

水深はボクの首元までしかない。こんな浅かったか!。しかも、全身が夏の暑さにウダっていたので水に浸かって肌が心地よすぎ!。ひゃああ~気持ちいい。川からお兄ちゃん達の方を見やると、皆お地蔵様のように並んで座って全然動かない。ククク。何にも釣れてないみたい。陽炎が立ちのぼり、哀れな釣り小僧達のダルマ大師ぶりがゆらゆら揺れている。

「何しちょんのボク、ほら、早く上がってき、ほらほら」

真っ黒に日焼けこんがり焼けの痩せたオジイチャンが手を伸ばしている。誰?。ボクはオジイチャンの手を掴んで岸辺へ帰ってきた。

「何が入っちょんの」言われて網を見下ろすボク。オオ!何とオタマジャクシが1匹、真っ黄色のお腹を見せ気絶しているではないか!。

「オタマジャクシ。今獲ったの」「おうか!えかったの!(良かったな)」

ボクはオタマジャクシを入れる適当な何かを探してキョロキョロ。ない。仕方なくオタマを水が半分残っている上着のポケットに転がし入れる。

「フォッフォッフォッ!(満面笑)。ジイチャンが何か探してきちゃるけん、ここで待っとき」

すぐそばの木立の向こうからオジイチャンはすぐ戻って来た。手には泥のついた固いゴワゴワのビニール袋。

「これ、穴開いとらんから、これに入れな、ジイチャンが水入れちゃるな」

「ありがと」

ボクとオジイチャンはオタマジャクシの入ったビニール袋を日にかざしてみた。ううう~ん…。オタマジャクシは意識を取り戻したのか、ハッ!と息を飲み、体勢をあるべき姿勢に慌てて戻し、うろたえながら言った。「ドコでしょう此処!」

「オタマジャクシ好きなんか?」「うん。大好き」

オジイチャンはマっ黄色の歯を見せ、さも嬉しそうに笑った。

「何だジジイといるのか汚いッ。オイ、もう帰るぞッ」

いつのまにか、お兄ちゃんの1人が3メートルほど傍まで来ていて、そう言い放つとプイッとキビスを返してスタスタ言ってしまった。

「気いつけて帰りや」「うん。さよなら」

ボクもスタスタ戻る。お兄ちゃん達の姿がズンズン迫って来る。さっきのお兄ちゃんに向かって思わず大声で叫びたくなった。

「汚いのはオマエだ!」

 

それは声にならなかった。勇気がなかった。意気地なしのサル。

ボクは言ったことにしてうつむき、オジイチャンの方を振り返った。うつむいて向こうへ歩いてゆくオジイチャンの後ろ姿も、ボクとおんなじ、ションボリして見えた。

 

 

◆写真タイトル / 一期一会(いちごいちえ)

 

 

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