幸福の洗礼 / 横浜元町散歩のススメ / ワンちゃんのオシッコシャワー

 

 

 

大学生のボクは、オシャレで小粋なファッションタウンを

ゆっくり歩いている。快晴、時折そよ風。出がけの天気予報は

本日最高気温18℃、人が最も快適だと感じる気温だと報じていた。

誠にそのようで、ソフトクリームを舐め舐め歩くボクの心も、

躍動したくてたまらないゴムマリさながら。しかし

此処はホットでクールなガイズが行き交う、

ピープルウォッチが楽しい小路。

大人のボクはやや伏目がちに構えて歩かなければ。

1人歩きのハシャギ小僧と思われてどうする。

 

はたと気づく。大人バージョンで歩くなら、この手持ちソフトは邪魔。

目の前の曲がり角で裏道に入る。裏道もオシャレ。

道行くガイズの数も表と変わらない。見れば

すぐ先に街路樹が目隠しするちょっとした広場がある。

あそこでサッサとコイツを舐めきってしまおう!。

と早速、木陰でガツガツ。

すると、ボクの背後で熱い期待に胸躍らせる犬の誘い鳴きが、

「クォォワッ!、ハヒハヒーッ!!」

激しい興奮を物語るカリカリッ!カキキ!という

コンクリ道路に当たる犬の爪音!。振り返ると

ソーセージを圧縮したような体型の

薄茶色フレンチブルドッグの若造!。

 

「ピンクの首輪からして、お嬢様か!」

 

ボクの呼びかけに彼女は激しく反応!

柱に繋がれたリードをピイーンと張ってボクに抱きつこうと

前傾直立。左右の前足はもどかしく空を切り続ける。

ハッ!。この腕の動きは見たことがある。

海の家のオバサンが、かき氷機のレバーを片手で掴み、

激しい勢いで腕を車輪の様に回転させていた、アレだ!。

そう思った時、間髪入れずボクの背後から女性の声。

 

「撫でてあげて!、撫でてあげて!、早くッ!」

 

振り向けば、セレブチックなヤンママ風、

チブル ( フレンチブルドッグ ) の飼い主に間違いなし。

ボクに抱きつきたいチブルの失望

を見たくないのだな、分かりましたと歩み寄るボク。

言われたからではない。ボクも撫でてみたかった。

 

ソーセージの前にしゃがみこんだ瞬間、

寸詰まりガールはボクに体当たり!。

こぶりな体格とは塑像もつかないほどズッシリ重い手応え。

 

「あっはっはっは、元気だねえ」

と微笑むボクにソーセージは弾丸の様に再度激突!。

 

「ハアヒヒ!キャワワワーッ!」

 

と嬉しさ通り越し半狂乱。グリングリンの真っ黒に光り輝くビー玉

のようなつぶらな目、頭を撫でようとするボクの両手をすり抜ける程の

激しい回転を見せるチブル。一瞬、満足そうに笑みを浮かべ、

通りに戻る飼い主の姿が見えた。その刹那、

 

シュウウウウーッ

 

ボクのジーンズめがけ、シャワーのようにまき散らされるチブルの湯!。

熱い液体がみるみるジーンズに染み広がるのを感じる。

 

「どうしてなのぉ~?。こらこら、女の子がはしたな…」

 

軽く制そうとしても、彼女は激しく昂ぶり、

駒のように鋭く回転しながら湯の放出を続ける。

可哀そうに、ずいぶん長くつながれていたからだね?。

そうそう、そうなのよ!と彼女はボクのジーンズに

偏りなく、まんべんなくシャワーを放出し終えると、

グリグリとオデコをボクのみぞおちに押し付け、

満ち足りた甘え声をあげてみせた。

 

「キミは……湯を引っ掛けた箇所だけを

上手に避けて密着してくるね。冷静だね」

 

躍動したくてたまらなかったのは

ゴムマリではなく、ソーセージだったか!。

 

●写真タイトル / 夢は湧き上がる