チィーちゃんと子犬 / 子供なんて泣くだけ

 

 

 

5歳のチィーは、小さすぎて、男の子なのに女の子のようにみえます。

パパもママも、そんなことには無頓着。

チィーはまだ人間の形が出来たばかり。人間のいろはを始めたばかり。

チィーは泣き虫。ほんとに頼りにならない子。

パパもママも、そんなこと、当たり前だとニコニコ余裕。

 

うちの目と鼻の先、チィーは子犬を見た。

門のすぐ先、犬小屋につながれてた。

犬小屋の前で突っ伏していた。

暑くて死にそうな、真夏のカンカン照り。

近寄るチィー。動かない子犬。チィーにも気づかない。

チィーは硬くなったゴハン粒が 一個だけついたエサ入れを持ち上げた。

熱いッ!

カランカランカラン!

落ちた金物皿が、大きな音を立ててシンバル。

子犬が、わずかに動いた。

水がない。食べ物もない。

「おうちに入りなよ。ここ熱いからね。ね?」

チィーは歩み出て、犬小屋の中の床をポンポンと叩いた。

熱いッ!

お外以上に熱かった。

 

チィーは子犬の首輪のクサリを外し始めた。

「今はずしてあげるからね」

硬い留め金。

開かない。開かない。開かない。

だめだ、どして開かないの。

子犬はぐったり

クサリの熱で、チィーの指先もヤケドしそう

開かない開かない開かないよ

 

カチャッ

 

開いた!

「好きなとこ行って。ほら」

グッタリ動かない子犬。

さすってあげても、撫でてあげても

悲しそうな眼をした子犬

動かないの?

どうしたの?

苦しいの?

 

 

チィーはポロポロポロ涙をこぼしながら、子犬を抱き上げようとした。

力のなさで、子犬がズリ落ちそうになる。

何度も何度も繰り返す

「待ってね、今連れてってあげ…

「何やってんだ人の家でッ!!」

 

 

玄関先で母親が怒鳴りつけられている。母親はあやまり続けた。

 

やがて部屋で蒼ざめているチィーのところにママが来た。

 

「チィーちゃん。よそんちの子犬をどうして盗もうとしたの?」

チィーはママの声で、自分がいけないことをしてしまった、

大変なことをしてしまったと気づき、泣き始めた。

「泣いてちゃママ分かんないでしょう」

 

 

夜。チィーの寝顔を見下ろし、パパはママの待つリビングへ。

「今度オレが教えるよ、やっちゃいけないことを。キチンと」

 

 

◆写真タイトル / 摘まれぬ花

 

 

 

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