無観客試合の別呼称決定 / 消えたスポンサーの正体とは

Title : 虎が来る

 

 

「それでは心労の方。…アナタはこちらの針布の前で一生かけて変容しないと誓いますか」

「誓いません。てか、かなり近いっちゃぁ近いけど。つぅか、変容でなくて変身じゃね?。アフターコロナで以前には戻れないしオレ。芸人辞めて何か他のバイト探すわけだから。変身すっけど変容はしないっしょ」

「♪ 山口さんちのツトム君、このごろ少し変容……とはいかないのですね?…。では針布にも伺います。アナタはこちらの蜃気楼、いや、心労を一升飲んでから…てん、いや、言い換えましょう…。一生かけて変容しないと地階でステイホー……、いや、誓いますか」

「誓います。女は妊娠すれば見た目かなり変容するのは当たり前の話ですし。私、子供欲しいですから」

二人は指輪を互いに投げ合い、指にはめるセレモニーに入ったが、周囲の心配通り針布は指輪を取り損ね、それは足元で空しい音を響かせた。

針布はウェディングベール型のフェイスシールドを持ち上げ言った。

「だからプロ野球の無観客試合の様子って社会人野球の試合と勘違いしやすいって私、さっき言いましたよね?。したらば無観客試合は観客は無冠、って呼ぶのがフツーだろ、そんなん」

それを聞きムッとした心労、「てか、秋口前にサーファーは既に第100何波くらい乗ってんじゃネ?。したら、プロ野球の選手が波に乗って調子掴めずシーズン終わっても沈黙の観客は居ねーんだし、良くね?」

「違ぇーよブァァ~カ。全力投球で違ぇよ、ブァァァァ~カ。東京五輪が規模縮小って開催形式変容だってネ。無観客競技、無スポンサーだかんネ、ウチラの欠婚式と同じジャケ。オンラインで招待客って知らせた知り合い、オンラインをライン川下りって勘違いして皆ドイツに行ってしもうたけんネ」

「どうやって行けた」

「細けぇんだよオメエはよぅ~。それよっか、

私達はパラ応援してます

って、すぐ逃げる応援だったってか」

「だべ。食らいついたら絶対離れないのがスッポンサーでねーか。したら、スポンサーってただの亀のこと?。てか、カメだろ、そんなの」

 

二人は話すうちに次第に接近してゆき、ついには社会的距離を逸脱し、指輪を拾うのも忘れ仲良く腕組みしたまま夜の街へ消えて行った。