桑田佳祐のバラード / 真夏の果実

Title : 若葉の中、いつまでも若く

 

 

大抵の楽曲って、男が主役か女が主役か、割とハッキリしてますヨね。

男言葉とか女言葉でなくっても、歌詞の内容で簡単に分かっちゃったりネ。

サザンオールスターズの真夏の果実って、その点では稀な楽曲ですヨ。

男、女どちらが主人公だか分からない。

というか、きっとどちらでもあるってコンセプトなのかもネ。

加えて、何かどこかしら中性的な主人公だなって雰囲気も。

 

 

泣きたい気持ちは 言葉に出来ない

今夜も冷たい 雨が降る

 

こらえきれなくて ため息ばかり

今もこの胸に 夏はめぐる

 

こんな夜は 涙見せずに

また会えると 言ってほしい

 

 

主語のない歌詞。具体的な物語も一切描かれていない

ということはドラマの要素がないってことですよネ。

だから誰もが主人公を自分に置き換えることが可能。

物語性のある楽曲って多いでしょ。

とても具体的だから?リスナーの心に入りやすいですもんネ。

ということは真夏の果実の場合、

漠然と主人公が自分の想いだけ、気持ちだけを描写しているだけなので、

具体性が薄らいでしまう。

はず。普通なら。大抵。

胸に迫る、心を射抜く説得力がこの歌にはありますヨ。

もの凄く具体的な説得力です。

良い楽曲が加工されたダイヤの工芸宝飾品なら、

この歌はダイヤの原石に当たるのかもしれません。

 

真夏果実という二つの言葉を並べると

夏のアバンチュール的な要素を連想してしまいますヨね。

実際そういう内容の歌も多いですヨ。

もしかしたら、この主人公もそんな感覚や心持ちで

恋愛ゲームを始めたのかもしれませんヨね。

アバンチュールだからといって、割り切った遊びだからといって、

そんな遊びには切なさ、いとおしさ、狂おしい思いなどは無縁。

そう思い込んでいただけで、本当はそうじゃないのだとしたら?。

途中から相手に夢中になった、真剣になった、本気になったってお話、

よく聞きますヨね

。お遊びじゃなくって真剣で真面目な交際に切り替えたいんだって。

でもでもでも。もしかしたら。

真剣で真面目な恋人関係だとか、

結婚を前提に、だとかということではなくっても、

遊びのままでも、本気でも、

そんなこと最初っから全然関係なくって、

相手をただ好き。ほんとに好き。大好き。愛している。

それ以外の要素は何も思いつかない。

だったら正式な恋人?、いずれ必ず結婚?。

そんなこと一切考える余裕さえないほど好き、そして、

好きと言う気持ちを形にして欲しいと

どちらかが言い出す前に

突如として破局が起こってしまったら?。

どうしてよいか分からず、

破局を何とか取りつくろいながら、

相手が望む形にしてやり直そう。

だなんて冷静に考えられないくらい、

心が純な状態を保ち続けたままだったとしたら?。

 

物語など描けず先行きも分からない。

四六時中も好きだと言って、

という狂おしい気持ちに身を焼いて、

大人であれば当然考えてしまう通常の、形式も、計画の手順さえ、

何もかも考えられない位に

心が相手で満たされてしまったら?。

自分が男なのか女なのか、大人なのか子供なのか、

それさえ分からなくなってしまったとしたら?。

 

夏の果実、は魅力的な女性のを象徴する言葉ですヨね。

 

この歌の果実、その正体。それこそが恋。

恋が成就した結果、その時目撃する自分自身のひたむきな想いの結実。

だとすれば、この歌の主人公は男、そして女。

 

とても不思議で純度の高い楽曲だと思います。

流行歌ではないですヨね。

だってもう随分になるでしょ?発表されてから。

大事にしている人が多い気がします。

男も女も関係なく。