絶食ダイエット(22) / 浪人生の絶食ダイエット / 死神を呼ぶ拒食症

Title : 生きるも死ぬも、双子の死神

 

 

 

ボクの胃袋は一体どれほど小さくなっているのだろう。

通常のお守りくらいだったりして、と想像するが笑えない。( 笑えたならシワだらけの笑顔。

それが今のボクの顔。さっきもそれ見た。作り笑顔で… )。

トーストをほんのひとくち食べただけで超満腹になってしまうのならお守りどころか目玉位ではないだろうか。絶食前には全く想像だにしなかった、哀れきわまりない抱腹絶倒状態である。

親にも友達にも極秘にされたボクの崖っぷち、たった独りの意味なし現状。それでも拒食症についてググるつもりは毛頭ない。

恐い。異常に恐い。同じ理由で医者に行く気もない。

恐い。もうダメ。何もかもイヤ。

 

何とかなるはずだ。自力で解決出来るはずだ。元の状態にまで必ずや戻せるはずだ…。

根拠は?。根拠など有ろうはずもない。

ただ、何とかなるんじゃな~い?、というありがちな楽観主義。

甘やかされた自己がいとも簡単に打ち出す最強の方策、それが “ 何とかなる ” 作戦だとは!。

うあーはっはっはっは!!。語るに堕ちたと自虐笑いがひとしきり、それが覚めれば即座に最近売り出し中の死神笑顔。

 

午前中、洗濯物を干している母の眼を盗み、すかさず冷蔵庫を開け食べられそうな品を物色。チーズを見つけ素早く自室へ退却。

包み銀紙を掻きむしり現れた石鹸(チーズではなく石鹸に見える)を口に投入。

されてない。

入らない。

 

チーズが口に入らない。

またもチーズ持つ手は口前で門前払いをくらった。

脳は既に持ち主であるボクを完全に見限り、一切の命令に従おうとしない。

再三にわたる自殺行為にすっかり愛想尽かしてブンムクレ~、なんて可愛らしいものではない。自分の脳に冷たく絶縁されてしまったのだ。縁を切られてしまったのだ。

だって考えることが出来るんだから縁切り状叩きつけられてないジャン?。

違う。

脳内各部署作業員全員に絶縁されたのではなく、生存本能部門の食欲科に携わる者達に愛想を尽かされたのだ。

このように1時間もかけ、口の中に一切れのチーズを押し込もう、ネジ込もうと絶望の努力を続ける愚か者の図がネットで世界配信されたなら、一体どのくらいのアクセス数が得られるのであろうか。

ヨレヨレのパジャマ姿で背中を壁にもたせかけ座り、息も絶え絶え、死ぬぅぅぅぅ…。

お願いですから神様どうかこれ以上の体重減だけは勘弁して下さい。

食物が口に入らないだけで本人は食事復活させるつもりで努力しているんですから、どうかお願いしますお願いしますアア何たる皮肉だ。

あれほど痩せたがっていたはずなのに、今度は痩せるのが恐ろしいなどと!。

だがその恐ろしさは半端ではない。

何とかなる、なんて感じは全然ない。

想像出来る?。自分の脳が自分の命令に、意志に、頑として従わないなんてこと、想像出来る?。

あり得ないでしょ?、笑っちゃうでしょ?、ギャグでしょ?、冗談でしょ?、夢見てんの?。

一歩も外出せず、ひとくちも口に出来ぬまま夜。悲痛な願いも空しく

 

49キログラム。

 

口の中がカラカラ。いくらコーヒー飲んでも水飲んでも、電解質摂ってもダメ。

口が開いたまま固まってゆくこの感じ…。

ああそうか。

 

 

死体だ。