温情のないロボット軍団がやって来た / 勝利宣言を聞きながら / 子供を守れ

Title : ハートのないラッパー

 

 

 

マスタードとレッド・バイオレット、二層に分割された夕映えを背に、

とうとう、空恐ろしいまでに無責任な大型ロボットが2台、

こちらに向かってやって来るのが見えた。

人間の温情を脳が冷酷情と解釈する、

即時転換機能を搭載したこれらのボットが誰に作られたものか

PTAが未だに把握出来ないでいる間、

CD・BOY・ボット達の

無責任アプリ拡散扇動は快進撃を続ける。

 

「子供は隠さなくていい!、大人からだ!、子供をおとりにしてボットが引き寄せられているうちに、

働き盛りの大人は全員シェルターに全力で避難しろ!、急げ急げ!!」

 

走り出す大人達の長い長い真っ黒な影が、

子供の一群と真反対に飛び交ってゆくさまはどうだ。

灰色の絶望的なコンクリートを打ち叩くヒールの音に、

女性達の心の安全確保を実感する。

シューンシューンという凄まじき無責任音は、

ロボットの360度回転頭部が

活発に動いていることを意味するものだ。

 

大型ロボットはいつしか何百台も。

150人ほどの子供達を取り囲んで見下ろし、

機械影に取り込まれた大人ではない者達の耳に、

好感度ソーシャル周波数の

ラップミュージックを唐突に流し始める。

 

 

違ッタ 奴ラニ 出シ抜カレルゼ  同ンナジフリシテ 奴ラハ ヤルゼ

お前ノ 心ハ オヒトヨシ   ヘイ ガイズ!

今ノ時代ハ ダンシンダンシン  頭使ワズ ハートヲ燃ヤセ

燃ヤスのチョロイゼ 捨テチマエ  捨テルノ簡単 焼却炉

ヘイ ガイズ!  ヘイ ガイズ!

大人ハ キツイゾ  ヤメチマエ

大人ハ ツライゾ  ヤメチマエ

子供デイタケリャ コレ浴ビロ  マジデ イケテル コノ ビーム!

 

 

「子供達の声が全然しないな。ロボットの音も全くしない。

もうロボットは言ってしまっただろうか」

「まさか。まだ5分も経ってない。

子供達は全員ファットフォンを持っているから大丈夫。

何か異常があったらすぐに連絡してくるはずだ」

 

「しかし恐ろしいロボットだな。

大人から責任感を抜き取って

未来への夢計画をブチ壊そうというんだから。

その点、子供はまだ大きな責任感を持っていないし

未来の展望を描くのもまだまだ先の話。

抜き取られるものは何ひとつ持っていないから安心だ。

奴ら、子供に危害は絶対に加えない。そこが不思議だけどな」

 

「オレ達ほどではないにせよ、

子供に手は出さないってプログラミングされてるらしい。

狙いは国の行く末を担っている大人だけなんだそうだ」

 

1時間ほどして、子供たちが全員無傷でシェルターに戻って来た。

 

「大丈夫だったか。何もされなかったんだろ?。

あんな奴らが同時に2台も来たのは初めてだから、

心配してたんだ。おかしなことはなかったか」

 

「ない」

「音楽聴いてた」

「ラップ。勝利宣言みたいで、ノリが良かった」

 

「どんな歌詞だった」

「子供でいたけりゃ、ハートを燃やせ」

 

「そうか!。お前達、子供で良かったな!。

大人は大変なんだ

苦労するんだ

みんな全部、

おまえ達のためなんだ

子供のうちに色々経験して

なりたいものを見つけるんだいいな?

将来失敗しないように、

途中までは道筋をつけてやるから

後は自分で考えて、

しっかり責任感持った大人になるんだぞ

良かったな

今は子供だから狙われな……

 

「うん。よく分かってるよ。パパ」

 

 

 

She sold me Magic

 

 

Maybe, it’s always maybe maybe maybe I love you

my face keeps turning for the love light

Maybe, it’s always maybe maybe maybe I love you

But I keep Falling, stumbling out of sight

 

She sold me Majic〈song by , Lou Christie〉

◆ 魔法〈ルー・クリスティー、歌〉