第一印象〈2 〉/ 気配を感じる / 本質を見抜く

Title : 本質、ド真ん中!

 

 

 

森を歩き、セミ時雨 ( しぐれ ) を聞く。

“ うるさい ”

と、第一印象。或いは

“ 真夏なんだなァ ”

との第一印象。

セミが鳴くのは、オスがメスを呼ぶため。

力強く鳴けるオスが此処に居る、と知らせている。つまりは、

“ うるさい ” だの “ 真夏なんだなァ ” の第一印象は

セミが鳴く行為の本質とは何の関係も持たない、

人間サイドの、第一印象という名の単なる意見。

 

親の静止叱責も聞かず、ファミレスを所狭しと走り回る子供。

周囲には大迷惑この上なし。

“ ちゃんと躾 ( しつけ ) られてないわね ”

と、その子に対する誰かの第一印象。確かに。

しかし、走り回るは子供の習性。

駆けずり回って情報を収集するように、

遺伝子が指示出しをしているから。

いい悪いを言っているのではない。

“ ちゃんと躾られてないわね ”

の第一印象は、子供の本質とは直接的な関係がない。

つまりは、第一印象という名の、単なる意見。

こんなことなら、第一印象など取るに足らないシロモノ。

何の役にも立たない。

面接の時だけ、誰かの前でネコ被る時だけ、必要なダマシテク

ならどうでもいい。

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もうひとつのナイター中継 / 叔父 VS 甥っ子 / デタラメ解説にNO!

Title : 何かちょっと変!

 

 

 

夏休み八月。

泡吹 醸 ( あわふきじょう。35歳既婚。子供なし ) 宅へ

甥っ子の波浮彦 ( はぶひこ。12歳 ) が3泊4日で泊りに来た。

夕食後、花火大会に行きたいとゴネる甥っ子を制する泡吹き。

 

「だめだってば、オジサンはこれから野球中継を観るんだから。

今日の試合だけは絶対に見逃せないんだぞ。

ハブは野球しないのか?、サッカーだけなのか?」

 

「だって野球のルール、全然知らないんだもん」

 

「何だ?!。うあーっはっはっは!( 枝豆を口に半分残したまま爆 )。

有り得ない小僧めが!。よしよし分かった、

これからオジサンと一緒に試合観よ!。何でも聞いていいぞ!。

オジサンに解らないことなんて全くないんだからな!」

 

大型TVの前に甥っ子と並んで座り、枝豆つまみながら

ビールぐびぐびの泡吹きは上機嫌。そんな夫の後ろで、

冷えたソーメンで遅い夕食をとる妻の細代 ( ほそよ。30歳 )。

 

挙人 ( きょじん ) VS半身(  はんしん )。息詰まる首位攻防戦が後支援球場で火ぶたを切った。

 

アワフキ「何だよ、いきなり死球かよォーッ!」

 

ハブ「えッ。って、ボールって生きてるのと死んでるのと居るの?

夜店の金魚すくいだってんでるのは混ぜないのに、

どうしてなのさ。怠慢?、倹約?」

 

アワフキ「違うって。球を当てられた打者にとって、

を意味するに等しいってことだよ。あっははは…

オオッ!、あ、何だよファールかよ。チェッ」

 

ハブファールって日本語だと何?」

 

アワフキ「え!。ファールは………。白線外打球……かな…」

 

ハブ「ふう~ん……変な名前……。あ、今バント成功って解説者が言ったけど、バントって日本語でいうと何なの?」

 

アワフキバントは!、……ええとアレだ………送り打撃……」

 

ハブ「何だか自信なさげだけど、オジさんホントに野球通なの?。アレ、送りバント成功って言ってるよ。どうして?」

 

アワフキ「どうしてって、一塁ランナーを二塁に送ることが出来たって意味」

 

ハブ「そうなんだ。じゃあ見送り三振てさっき言ってたけど、バッターは何をどこへ送ったのさ。さっきはランナーいなかったよね確か…」

 

アワフキ「そりゃあ!、…ボールを見送っただけだよ。…ほら、駅のホームから電車を見送るっていうだろ?。あれと同じことだよ」

 

ハブ「…………」

 

番組はコマーシャルに入り、叔父と甥は押し黙ったまま画面を直視。

センベイをボリボリとかじる音だけが妙に響き渡っている。ほどなく中継再開。

 

アワフキ「エエエーッ!、CM中にホームランかよーッ!、そりゃないぜセニョール、セニョリータァァーッ!」

 

ハブホームランて日本語で何ていうの?」

 

アワフキ本塁打だよ!。チッキショー、1点リードかぁ~。ソロで良かった」

 

ハブ「アレ、キャッチャーの前にあるのが本塁ベースじゃないの?」

 

アワフキ「そうだよ」

 

ハブホームランて外野席に飛び込んでるよね、このスローモーションだと。外野席にも本塁があるの?本塁打って。一体いくつあるの?」

 

アワフキ「あっはははは!。本塁まで回ってこられるから本塁打って意味だよ」

 

ハブ「さっき一塁打なのに三塁のランナーが本塁ベースまで戻って来てセーフだったよ。あの一塁打も本塁打なんだよね?」

 

アワフキ「違う違う ( 上から目線で )。打った打者と塁に出てる選手全員が

本塁を踏めるのが本塁打だよ。塁に選手がいない時はソロホームランだな」

 

4番打者がレフトヒット。レフトが球を遠くまで足蹴りしてしまい、

打者と2塁3塁ランナーも全員ホームへ帰還。

 

アワフキ「ヤッタアアアアアアアアアアーッ!」

 

ハブ「良かったねオジさん!本塁打が出て!」

 

アワフキ「ええーッ、違うよ、まあいいや。とにかくやったやったァーッ!」

 

ハブ投げるから投手受けるから受手。アレ?、捕手になっちゃうの?」

 

アワフキ「うん、キャッチャーだからね。キャッチは捕まえるって意味だからね」

 

ハブ「捕まえる…。球技は全てボールの捕まえ合いかぁ~。選手はみんなオマワリさんだね」

泡吹はトイレに立ち、洗い物する妻の脇を通る時、

 

「細代、オレやっぱ子供欲しくないワ」

「ええッ?」

 

泡吹がTV前に戻ると早速甥っ子が、

 

盗塁成功だって言ってたよ。あの選手、何を盗んだの?」

 

アワフキ「あっはっはっはっは!。それはピッチャーの目を盗んだ隙に、

ということだよ。盗み見るって感じだなあ」

 

ハブ「塁に出てる盗人捕まえられるのは捕手だけでしょ?。一、二塁手も三塁手も捕手じゃないもんね、野手っていうんでしょ?」

 

アワフキ盗人は人聞き悪いなあ~、お母さん、言葉遣い悪いって注意しないのか」

 

ハブ「オジさんの方こそ注意しなくっちゃダメなんだよ。

死の球だとか盗むだとか捕まえる手だとか、

まるで野蛮だよ!」

 

波浮彦 ( はぶひこ ) はプンプンしながら叔母の脇を通過する際、

 

「オジさん、野球のこと何にも分かんないのに

無意味に好きなだけじゃないのかなー」

 

 

 

◆写真タイトル / 東京ドーム球場

 

 

 

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