Speak softly love / The God Father ~ Love Theme 〈ゴッドファーザー〉

Title : Pharaoh King of Horse〈ファラオの馬〉

 

 

Speak softly Love

so no one hear us but the sky

The Vows of Love

We make will live until we die

My life is yours and all because

you came into my world with love

So, softle Love

 

 

柔らかく愛を語れ

誰も居ない 二人きりだ  空を除けばだが

愛の誓い、それは死が二人を別つ(わかつ)まで続く

私の人生ばかりか 一切のものはお前のものだ

お前は私に柔らかな愛をくれた

 

 

◆ ゴッドファーザー愛のテーマ〈アンディ・ウィリアムズ、歌〉

 

 

 

★ 見事な光と影。その陰影は人々の思惑と結末をつづれ織りにしながら刻々とセピア色へと変貌する。展開するシーンの数々は、人生に約束された歳月などなく、寿命の確約は神だけではなく隣人さえもが握っていると教える。子供が入り込む余地などなく、終始する大人達の都合は弱者を排斥し、強者を弱者へ変える手段の摸索に余念がない。王は必ず狙われる。

森永ホットケーキCMソングの罠

 

 

 

思うに私ほど森永ホットケーキの回し者はいないだろう。

物心ついてすぐ、私は森永ホットケーキを食した。釈迦が誕生と同時に数歩歩き、天上天下唯我独尊と口走ったのと大差ない。

森永は用意周到にホットケーキの作り方が歌詞のCMソングを巧妙に流し続け、世間慣れしていない純粋無垢な児童達を次々と狙い撃ちしていった。

このように分別備えた立派な大人に成長した今でさえ、私は真夜中、ひとり密かに森永のホットケーキを焼く。

 

♪ フライパン フライパン 温ったまったら

濡れた布巾で チョイと冷やす

焼けた 焼けた 美味しいホットケーキ

耳たぶ位の柔らかさ

 

幼児体験とは恐ろしいものだ。未だにこの歌が耳をついて離れない。

友人が彼女と別れ 、♪ With out you が耳から離れないと言っているのを聴いた時、自分にとってのそれが森永ホットケーキミックスの素であるという事実は私をどんなに歯ぎしりさせたことか。

森永の功罪は未だ断罪されることもなく、それどころか永遠のベストセラーを誇っていると聞く。

妻をめとらば / 哀愁のメトラレーゼ

かつて恋愛とは、結婚とは、娶り(めとり)だった。メトリが正体だった。妻をめとる。男が女をめとる。残念ながら、女が男をメトルとは言い難い。なんせ男尊女卑の時代であった。“ 娶る ” は取る女、と書く。女を取る、とはイササカどころか野蛮の極み、されど言い得て妙は男の性(さが)というものか。

 

男と女の間には 深くて暗い 河がある。

誰も渡れぬ 河なれど エンヤコラ、今夜も舟を出す

 

黒の舟唄 (能吉利人 / 作詞、桜井順 / 作曲)

 

昭和当時、マイナー扱いだったこの唄、その後の息の長さは当然といえば当然。男と女の難解さ(むずかしさ)を言い当てている。フォークでも演歌でも歌謡曲でもない、既成ジャンルに収まりきらぬ、ただただ凄みある唄。誰も渡れぬ川?。恋人、夫婦、渡れてるでしょ?。そうなんだよねえ、渡れてる人沢山いるもんねえ…。じゃ何で歌い継がれてるわけ?。ウ~ン、そこが問題だ。

 

 

「連れて逃げてよ…」「 ついておいでよ…」 夕暮れの雨が降る 矢切の渡し

 

矢切の渡し (石本美由紀 / 作詞、船村徹 / 作曲)

 

渡る、というのはサンズイに “ 度 ”。つまりは1度きりじゃないんだね~、これが。度々渡る。度々行き来する。

長い人生、男と女、日々の暮らしは異性と異性。最初は仲良く2人乗り。

段々お互いの気持ちが離れてゆく。遠くに感じるようになる。互いの気持ちを取り戻すには相当な力が要る。エンヤコラ、腕(かいな)にモノ言わせなければならない。それはやっぱり男の業でしょう。娶る(めとる)を “ 取る女 ” なんて書くのだからネ~。

駆け落ちする二人を描写した矢切の渡し。こちらは櫓がむせんでいる。息を殺して身を寄せながら、とあるのでエンヤコラなどとはいかない。やはりコレも娶り(めとり)の極致。女を誰から取り上げたのだろう…。いずれにしても、男が取った男頼りの渡し舟。

 

 

同じ夢を追いかけ 同じ風に吹かれた だけど互いに違う事 考えていた

何にもしてやれなかった だけど貴方となら 死んでもいいと思った

 

傷心 (大友裕子 / 作詞作曲)

 

死んでもいいと本気で思える程の相手でさえ、いつの間にか相手の事が分からなくなってしまう。何を考え何を望み、何に満たされ今この時、幸せの在りかは何処なのか。主人公は後ろ姿が段々小さくなってゆく相手を、ただこうして見送るだけの結末。取るからには終わりは捨てる?。愛の破たんは取捨選択?。自分は捨てられたのだと女自身が思えば、それは娶り(めとり)の関係だと、女自身も捉えていたことになる。“ 娶る ” の概念は使い捨て時代の象徴だったのだろうか。

分からなくなってゆく。娶る(めとる)という意味。女を取る。とか言っても今や死語。待て待て、死語になったからといって “ 女を取る ” の考えが消滅したわけではない未だ昨今。搾取の時代と言うではないか。取得の時代だと聞くではないか。アア、哀愁のメトラレーゼ!。取るのがお得というのなら、メトリは男にお得?、女にお得?。

 

 

恋と愛とは 違うものだよと いつか言われた そんな気もするわ

 

真夜中のドア (三浦徳子/ 作詞、林哲司 / 作曲)

 

男特有の思考で恋と愛とは違うと結論付けた彼、説き伏せられる彼女。頭では理解しつつも、強く湧き上がる感情が理屈をいともたやすく組み伏せる。真夜中のドアを叩き帰らないでと泣く。人間を産む生き物と産まない生き物との純然たる違い。両者の間には深くて暗い河がある。

 

 

遠くひびく波の音 窓を叩く潮風

これきりと言いかけた くちびるがくちびるに ふさがれる北ホテル

北ホテル (夢野めぐる / 作詞、猪又公章 / 作曲)

 

いつまでもこのままでいいはずがない、と言う女。人の眼をさけながら、というからには許されぬ愛。劇的で臨場感の極致とも言えるこの一節、日本歌謡界史上最高の愛行為描写である。

背景は未曽有に湧く経済大国驀進中のエネルギッシュな日本。その情熱は良くも悪くも娶り(めとり)。裏返せば、女達は企業戦士達の中に男らしさを見出し、男達もそれを真に受けた時代だったと言える。キス、くちづけ、などの言葉が織り込まれた楽曲歌詞は多い。だが、この北ホテルに見られる様な力強く直接的な言い回しは他にない。時代の勢いが、日本人の勢いが、そのままダイレクトに歌詞にぶつけられた金字塔である。

だがしかし、経済大国まっしぐら時代、企業戦士の存在にNO!を突きつける事の出来る人はこの国には居なかった。“ 24時間戦えますか? ” なる仰天CMコピーに人々は湧き、それを時代にピッタリのフィーリングだと信じて疑わなかった。過労死が深刻な社会問題となっている現在からすれば、全く有り得ないコピー。かくも時代の価値観とは違うものかと改めて煮え湯を飲まされる思いだ。

イケイケドンドンの時代、経済力をつけた女性達は我が世の春を謳歌し、封建的要素の強いメトリを全否定した。取る女は取られる女、取るに足らぬとは誰かの噂?。ご冗談でしょ、と女性群。

 

 

ジョニーが来たなら伝えてよ わたしは大丈夫 もとの踊り子で また稼げるわ

根っから陽気に出来てるの 友達ならそこのところ うまく伝えて

ジョニーへの伝言 (阿久悠 / 作詞、作曲 / 都倉俊一)

 

自立した主人公はジョニーを待たなかった。彼女の未来の全ては “ 男 ” だけではなく、自身の夢を託せるものは他にも在った。それも幾つも。待たない女、それが企業戦士の時代だった。

 

 

私 待つわ いつまでも待つわ たとえあなたが 振りむいてくれなくても

待つわ いつまでも待つわ ほかの誰かにあなたが ふられる日まで

待つわ(岡村孝子 / 作詞作曲)

 

いつまでも待てる余裕が女性にはあった。安定した経済力、友人達とのグルメな食べ歩き、温泉旅行に海外旅行。三高が不文律なら妥協は許さじ。時が全てを変えてしまう、そんな “ 時 ” の恐ろしさについて考える人間、この時代にはおよそ似つかわしくなかったし、現にそんなことを考える人は居なかった。約束された退職金、約束された株配当金、個人レベルでの金余り、財テクは大流行り。待てる女性の時代、それもまた企業戦士の時代だった。

名曲ジョニーへの伝言待つわ。いずれもカラオケでは余り歌われない昨今。あれほどの超ビッグ・ヒットでも時代の価値観には到底勝てない。娶る(めとる)どころか今や “ 芽取られる ”。お約束は次々上書き。待てない年金支給、待てない要介護認定、待てないベッド待ちに保育所待ち。待てないのに待たされる。

メトリ、ミトリ、ソウドリ、イイトコドリ。企業戦士から草食系へのこの落差。公家の天下から武家天下統一、明治維新から文明開化、戦争から復興、焼け跡から経済大国、バブルから低成長。忙し好きの日本人らしいこの歩み。普段マジメな分だけ、振り子が振り切れる時は半端ないのが我が日本。

 

もういやと 拒む手も いつかしら熱い胸

抱きしめる 北ホテル

 

 

 

◆写真タイトル / 時をかける症状

 

 

 

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だけどハートはジミーの様に ちょっぴりイカしたロンリー・エンジェル

Title : 栄え (はえ) ある飛行

 

 

かつて横浜銀蠅 (よこはまぎんばえ) なるメジャーなロックバンドが存在した。彼らは王道を行く暴走族で、ブンブン走り回りうるさく、装いはド派手なので横浜銀蠅というネーミングにしたそうだ。

そんなゾクも姿を消して久しい。確かに暴走族の爆音はうるさく、特に真夜中はキビシイものがあった。しかし、良い悪いは別にして自暴自棄という名のアピ-ルが、社会に向けての若者の主張がそこには在った。世間から認められない主張ではあっても、甘えと呼ばれても、確かな実存感は確認出来た。

今や1台が60万円もするバイクは高嶺の華、バイト先もままならないし。

そんなことをフト思ったのは夜中の2時、外が余りに静かすぎるからだろう。日本は静かになった。世間は静かになった。サイレント・モードになった。

静寂の音が何故だか、怖い…。

梅雨時はそうめんダイエットで3キロ減!

 

ファミレス窓際でエットモ(ダイエットの話題のみを語り合う友)待つ励美(はげみ)の目にファミレス階段上ってくる隙有(すゆ)の姿。

“ 良かったア。全然痩せとらんヤン!”

共に鳴き、共に笑うのが芯の友。喜びも悲しみも育年月(いくとしつき)なのだから…。2人は高校時代からの固い梱包用タコ糸で結ばれた強い絆のナゲキャー(嘆きながらキャーキャー騒ぐ者)達だった。

「ねえねえ、そうめんダイエット、歯がゆいくらい検索かけてくれたんか。アタシ、知りとうてメッチャ気合い入れて来たんやでぇー!」

着席するなり、大きく強めに息を2回吐き出す隙有(すきゆ)を見て、

“ アアやっぱりウチと同じや、体重重いと階段上がんのシンドイやん ”

「マ、倖田來未は10キロ痩せたけど体も鍛えとるわけやしな。そうめんは確かに痩せるらしいワ。白米の代わりに食べたらエエゆうて書いてあったワ、…アンタ何食べんの今日。素麺もメニューにあったで」

「ウーン!。せやなァ。今日はまだ暑ぅないからテキサス・ビッグ豚のゴマカシ垂れだけでええワ。ライス付けたらダイエットにならん」

「いらっしゃいませ。今日のランチはアリゾナ直送のゴードン豚のピーナッツバター添えがお薦めとなっております。お決まりになりま

「ピーナッツバター添え?。それエエやん。ピーナッツバターはダイエット向きなんやろ?。ダイエットメニューとしてアンタんとこ、出した?」とウェイトレスの顔をまばたき一つせず見上げる励美。

「あ、ええと…どうなん…。ちょっと聞いてきます」

「ピーナッツバターもやったんやろアンタ、ちょっと痩せた様な気がしたて、言うとったやん。前やからウチ忘れてしもたワ。どうなん」

「ウーン!。よう覚えとらん(笑)。そうめんはやってもエエ思う?」

「お待たせしました。特にダイエット効果はないとのことでした」

「ああ、そうなんやぁぁぁ…。あ、今思いついたんやけどな、メニュウのそうめんにトッピングでハムとかテンプラとか、何かあるのアンタんとこ。あるんやったら…「トッピングですと、こちらの、どれでも200円プレートからお選びいただく形になっておりま「ハムないやん。コレ、カラアゲとフライドポテイトウやん。あと、カラアゲやん。ないの?天ぷら」と口尖らせ励美。

「エエよ、エエよ、あんましイジメたら可哀そうやんか、ナァ~?。ウチは合同豚でエエわ。ライスいらん、ダイエット中やから」

「ほならアタシも合同豚のピーナッツバターでライス抜き」

「かしこまりました。メニューお下げ致しま「置いてってエエよ。追加注文するかもしれんしな」

「結局、そうめんダイエットやった方がエエの?」

「一束くらいならダイエット効果あるんやて。1回の食事で3束は太るらしいデ。それとな、天ぷらとか入れたら意味ないらしいんやて」

「何やアンタ、今、天ぷら入れようとしてたヤンか!、あははは!」

「アホ、試したんやないのぉ~。ホンマにそうめんダイエットが浸透しとるゆうなら、あの娘は天ぷら乗せたらダイエットになりませんよとピシャリ言うたハズや。何にも言わんかったゆうことはやで、あんまし世間的に浸透しとらんゆうことやろ、考えてみぃな、今、7月初旬やで、そうめんシーズン迎えとるやんか全力投球でな。それが無反応やったんやデ、あの娘。そうめん、苦しいダイエットの割に報われん可能性あるんとチャウか?」

「ウチもな、そんなことやろと半分思うとったんや。握り寿司も低カロリーやと思うとったらラーメンと大して変わらんカロリーやったしなあ。寿司は油使うとらんからテッキリ痩せると思うとったのに、詐欺やデ、もはや。どれもこれもデタラメばっかしヤン!。ええ加減にせえよ言いたなるワッ!」

「ホンマや。何かがおかしいワ、今の世の中」

 

◆写真タイトル / 中トロ60~65キロカロリー

 

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むくみが消えるサボテン・ダイエット / 便秘も解消!

「ねえねえ。あのサ。………新しいダイエットネタ仕込んできた。聞く?。ねえ。………聞くなら言うけど。部分で聞く?。全部聞く?」とキングコブラに一定の距離を置きながらも相手のフトコロ入りを狙うかの様なネコ背体勢でドテラの袖に両手首を入れ、コタツからその寝姿で肘を使わずに一体どうやって立ち上がれるのか分からないが、スゥーッと貞子のように抜け立ち上がるドン(女子校生)。

「てか、前髪切れよ。オカッパでもいいし。目が前髪に隠れてんの意図的なのか?。そういう犬が居るのは知ってるけど、アレは視力が弱いから直射日光避けてそうしてんだよ。お前もそうなのか?」と春先になってもドテラを手放そうとしない妹に苛立ちの声上げるボーリング帰りのデン(女子大生)。

「鬼の鼻にも水」「え?。アッ!」

慌てて鼻水ぬぐう姉の姿を上目遣いに見つめてククク、と笑う妹。

「そういう笑い方がこの話題のキモだな。で、どんなダイエット?」

「聞きたい?。としたら部分的?。全部?」

「何なんだよ、その部分的ってのは。てか、何で電気つけないんだよオマエは~。スマホの明かりだけで画面見てると目が悪くなっちゃうだろ~?」

「目は悪くならない。視力が低下するんだ。頭痛が痛いと同じ発言だ今の。ツイートしてもいい?、今の」

「部分的にしなよ。全部ではなく。ソレ、お前にお似合い」

「ダイエット。サボテン・ダイエット」

「は?。……サボテン食べんの?。アレ食べれんの?」

「インディアンは昔から食べてた。苦くないよ。味も全然ないよ」

「カロリーは?」

「高くない」

「どれくらいか、知らないのか」

「サボテン食べると便秘が治んだよ」

「マジ!。それ重要だ、マジか!」

「全部聞く?。部分的だと今ので終わるよ」

「全部聞くから。何、それで何ッ」

「ジュース飲みながら食べると胃袋の中でサボテンが膨れるから満腹になるんだよ。沢山食べなくても腹パンパン。お姉ちゃんはコビトカバフグになれるんだよ」

「コビトカバフグ?。どういう意味なんだ」

「トラフグじゃないから、お姉ちゃん。コビトカバだから」

「お前、コビトカバって見た事あるのか」

「見なくても察しはつく。カバのコビトだよ」

「そうかそうか、うんうん、分かった分かった。それで?」

「サボテンは顔のムクミを取るんだよ。肌もツルツルになるんだよ」

「マジ?!。それやるよ、やる!。どうやって食べるんだ」

「口に入れて噛むんだよ、バカだなあ」

「そうかそうか、うんうん。どう料理するって?」

「ステーキか酢に漬けてピクルスにするんだよ。体重が凄く減らなくても便秘しなくなって、顔むくみが取れて、美肌になる方が、体重減るより女は綺麗になるんだよ」

「言えてる!!、やる!!、それやる!!。サボテンどこで買えばいいの?!」

「ウチワサボテン売ってるとこ。ググりなよ。ネットで買えるよ」

 

◆写真タイトル / ささやかな願い顔

 

 

 

永遠とは永く遠くと書き

Title : 褒められる小象

 

 

小学生の時に瀕死のモグラを校庭脇花壇で見つけ、おろおろと安全な土場所を探し午後の授業に遅刻。訳を問う先生にポツポツ説明。先生は彼を抱き寄せ頭を撫で、偉かったねと言ったそうだ。

釣り竿先の餌針を海に放り投げながら、白髪のじいちゃんは、こうも言った。

「オレが人に誉められたんは、そん時だけ。たった1度」

ボクは返した。

「それを未だに覚えているなんて、ジイチャンは偉い。これで2回になった。そうッしょ?」

 

 

たった数十秒の出来事が永遠になる魔法。

 

 

ネコならエッセイ、カモノナカの海外におけるハンドルネームはハピカット。ブログ?1年契約満了まであと3ヶ月。更新か抹消か、う~ん~悩む。

ポテチな少年 / 油断禁物の事例

 

 

 

小学6年のある時、突如としてボクはチョコバーにはまってしまった。何故だか分からないが、下校時途中の道にぼんやりと佇む小さなお菓子屋さんで、必ずチョコバーを買い求めずにはおれなくなった。常にお気に入りの銘柄、ソレしか買わないのに、何故かメーカー名はサッパリ認識していないのだが。

ピーナツチョコバーをせわしなくボリボリかじりながらノロノロ歩き、前方に人の姿が見えると片手のチョコバーを背中に回し隠し、すれ違う数秒間は口を閉じ何も食べていない通常の歩行者顔を装う。そういったことを数日繰り返すうち、次第にボクは、非常に遠回りとなってしまうであろう大きくカーブを続ける人気のない裏道を歩くようになっていった。生きる知恵だろうか。

所変われば品変わる。道変われば人変わる。向こうから違うクラスの顔見知り男子が歩いて来るのが見える。同学年の彼の名前は知らない。だが、彼のひっそりと存在を消さんとする立ち振る舞いは、いつもボクの目に留まったものだ。廊下でも、校庭でも…。いつも、常に、伏目がちだった。いつもわずかなことで驚愕し大きく目を見開くボクの対極にあると言っていい彼だった。

ボクは、とりあえず「今帰り~?」とやや明るめに声をかけることに決め、残り僅かなチョコバーを半ズボンのポケットに押し込んだ。あと数メートルですれ違うというところで、ボクの背後から飛び出た自転車の小学生が、笑いながら彼に

「イモッ、何してんのッ?」

言い残し自転車は滑らかに、そして素早く姿を消した。彼はその言葉にあいまいな頷きを見せボクとすれ違おうとする。とっさにボクは「何でイモなの?」と。彼は足を止め「前、焼き芋食べながら歩いてるのを同級生に見られて……それから皆がイモって呼ぶようになった」と相変わらずの伏目で答える。「ええッ?!」

自分のすっとんきょうな声に彼と共に驚く。一瞬彼の口元に笑みが浮上しかけ、それはオタマジャクシの空気取り込み時によく見られる水泡のようにたちまち消えた。「たった一度焼き芋食べてるのを見られただけなのにアダ名になった?」「そう……」。彼は一層うつむき、そのままゆらゆらと離れていった。

ボクはクラスの女子達にチョコバーを食べているところを目撃されてしまい、以来アダ名がチョコバーになってしまった様子を想像した。結構悪くないアダ名で聞こえが良い、などとニヤニヤしながらチョコバーの残りひとくちを食べようとポケットに手を入れた。「アッ!」。ポケットの中が溶けたチョコでベトベト。

くだらない想像をしたから神様が怒ったのだな…。そうに違いない…。

 

●写真タイトル / 帯に短し襷に長し

 

★当ブログのエッセイ文、写真、イラストの無断掲載、転用を固く禁じます。

利き梅 / コミュニケーション不足

小学5年の夏休み。例年通り、母は熊本の実家へボクと弟を連れ疾風のごとく舞い戻った。ボクにとってオバアチャンちへ遊びに行くというのは “ 楽しみ番外編 “ といったところ。地元とは違う友達が何人もいる。言葉使いも話題も、当然遊び場も、何もかも違う新鮮さ!。生まれ変わったような、何かこう…、地上に這い出たセミの幼虫が初めて目にする陽光や地上の空気に触れてワナワナ身震いするような、そんな戸惑いと胸騒ぎ…。

ある日の夕暮れ刻。神社の境内を駆け回り半狂乱の川遊びから帰宅したボクに、夕飯の食卓を整えていたオバサンが「おいしい物あげようか」と笑って台所に姿を消し、小皿に梅干しを1粒乗せて舞い戻ってきた。梅干しなど食べたくもない。などという顔はみじんも見せず、ボクは作り笑いしながら一気にそれを口に放り込み、口中で種と果肉を引き離す作業に移った。イヤなことはただちに済ます、がボクのモットーではないか!。だがこれは………?。

何というおいしさであろうか!!。こんなおいしい梅干しは、生まれてこのかた1度たりとも食べたことがない!!。いつものボクなら大騒ぎしてお代わりを激しくねだっていたことだろう。
しかしそれは出来ない。オバサンは非常にクールな雰囲気を持っていて、ボクのようなフザケきったガキンチョには非常にとっつきにくいのだ。よって、軽口をきくなどもってのほか。おそれ多い。

せめてボクは、満面の満足笑みを作ることによってオバサンがお代わりを持ってきてくれる可能性に賭けたのだが、オバサンは「1個だけよ」と笑い、梅干しをもらったことを母にも弟にも内緒にしなさいと言う。ボクはたちまち理解した。非常に貴重な、価値のある梅だったのだ!。だとすれば、たった1粒かあ、チェツ!、などという低次元の話ではない!。ボクは選ばれた人間なのだ!。小学生ほど自分の優劣性に敏感な者はない。ボクは紛れもなく勝者だ!。

夏休み明けの初日。下校途中、ボクはいつものパン屋でアンドーナツを買い、傍らの電信柱に身を隠してソレを頬張っている時、視界に入った漬物屋の看板文字に目が釘付けになった!。

梅干し各種あります

ボクは軽いめまいを覚えながら、酔いどれイカのもつれ足でハアハアアと帰宅。TVの前に寝そべり、主婦の束の間、黄金のうたた寝むさぼる母に膝がしらで詰め寄り、ねえ、ねえ、ねえーッと弾む息で母のヒジ枕を激しく揺さぶりながら、

「買い物行こうよ買い物ーッ!」「何なんですかアナタはァ、もうッ!」

母の後頭部ヘアが、寝ぐせで一部ドリルのように鋭く突起しているのも指摘せずボクは母をせっつかせ漬物屋へといざなう。「何?漬物?梅干し?」。降って湧いた子供のオネダリに解せぬ様子の母とボクは薄暗い店内へ。

異様に背の高い、年期の入った電信柱のようなヒトが「あっはは。どうもね」と奥から出てくる。「何差し上げましょ」「何かコレが梅干しって」と母。

今までかつて食べたこともない程の至福をもたらす謎の梅干し。それは熊本独自のものかもしれないが、もしやして此処にあるのではなかろうかと…。生きており、且つ言葉を話す電信柱にひるみながら、果敢にも説明続ける小学生。

「そーゆーことならね~」と電信柱は妙に機嫌良さそうに二段重ねのズラリと並んだ各種梅干しに満たされたガラス鉢の背後へ。笠電球の光が届かぬ暗がりで見る彼は、電信柱ではなく巨大な黒ゴボウの様にも見える。端っこの鉢フタを開け

「片っ端から味見してみるしかァ~ないんだよぉ~、と、ホレ!」

ボクは手渡された楊枝刺し梅干しをパクリ。すすすすすすすすすぅぅぅッぱい!!

「で、どう?」と真顔の電信柱。ボクは小首傾げ、「違うぅ」。

何故、漬物のプロも、母も気づかなかったのだろう。ボクが魅せられのは梅干しなどではなく、梅酒に漬かった梅だったのだということに。ボクは、赤くなくて緑色っぽかったと告げたはずだ。オバサンだってそうだ。あの時、ひとこと梅酒の梅だよと教えてくれてさえいれば、こんな…。

子供心にも、ボクにはタダで試食させてくれる電信柱のやさしさを踏みにじることなど出来やしない、との思いから、出された梅は種を除いて全て丸飲みした。ひとくちかじってポイなんて出来るわけがないのだ。ボクは少なくとも16個の梅干しを、ゴハンや飲料水の援護もなく、孤立無援の状態で続けざまに食べた。

その間ずっと、電信柱も母も、ある種の疑いを抱いているようだった。ホントに梅干しの味の微妙な違いが分かるのか?、これは利き酒ならぬ利き梅ではないか、と…。それはボクにもヒシヒシと伝わってくる。どれも違っていたら一体どうなるのか。電信柱はからかわれたと思いやしないだろうか。母はどうするのだろうか。なかったわね、さよなら。ってわけにはいかないのではないか。そう思うと全身に冷水を浴びせかけられたような面持ちとなる。自分は梅干しを主食とするウワバミ(ヘビ)なのか。次々と梅干を丸飲みしてゆくのだから。

利き梅も終盤にさしかかる頃には、もはやボクの両目は酸っぱさのあまり真一文字に閉ざされ、決して自分の意志をもってしても開けることが出来ない状態となっていた。首筋、両手のヒラはビッショリ汗をかき、喉が水を欲して、のたうち回っているではないか!

「うぇぇぇ~い……。全部違ったかァ~!」と電信柱は温かく微笑んだ。このオジサンはやさしい。いい人だ。ゴボウの妖精だ。しかし、彼は梅酒の存在を知らなかったのだろうか。漬物屋ゆえの盲点だったのか。

母は彼に詫び、梅干しを一袋買い求めた。高菜漬も。店を出て歩きだすと、母は

「アンタの顔、しわくちゃジイサン。あはははははーッ!」

 

●写真タイトル / 綿菓子雲

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初恋とギターとインコ / 騒音問題の是非 / ヒッチコックの鳥

 

 

 

中学2年の夏休み初日。

四方を緑に囲まれた坂道をプランコプランコ下りるボクの頭上、唐突に鳴き始めようとしたアブラゼミが

「ウォージッ?」

と唸ったまま疑問形で鳴くのを止めた。

ボクは足止めず聞こえた辺りを振り返りながら

「セミ採りは卒業したッ。心配しないで思い切り鳴くんだ。いいな?」と諭す。

やはり夏休み初日はいい。この世の全てを許せる気がする。

 

小高い丘公園散歩道を下り終え、入口から道路へ出たところで同級生のガールと出くわす。

「ウォージッ?」と鳴く代わりに「アッ!。どうしたッ?」

とっさに出た愚かなる言葉に戦慄が走る。これが初恋の相手にかける言葉かッ?!。

「どうもしない」と冷ややかな声。

切羽詰まったボクは激しく動揺、右手に持っている天気予報図コピーをガールに差し出す。

「これ、いるッ?」

「なあに?」

ガールは受け取った予報図に目を落とした瞬間、ピンボールが跳ね返る如く視線をぶつけてきた。

いぶかしそうな眼差しが、滑稽きわまりないボクを一層道化師へと追い込んでゆく。

「今、気象台で今日の天気図もらってきたとこなのね」

「そうなの?」「そうなの」

あまりの断崖絶壁に失神寸前!、ボクという名の道化師。しかもソレは第1級クラス。どんなボリショイサーカスも引く手アマタだろう。

「天気予報、好きなの?」「ううん、どうなんだろう?、特に…」

背後に極めてすこやかなセミの鳴き声を背負いながら

「終わった…。終わったんだよ」

とつぶやき歩くボク。これがボクの初恋談、全記録である。

 

中学3年の夏。去年と状況は一変している。

丘公園を散歩するのは変わらないが、高台の気象台で無意味に天気図などもらったりしない。

大人へと成長しようとする者は決してそんなジャレゴトをしてはいけないのだよ。

初恋の相手も変わった。

初恋も3度目ともなれば、かなり形が出来上がってくるものだ。

中学生活の3年間、進級するごとに1度の初恋が許されているわけ( 本人の不文律 )で、

いよいよ3度目の正直、なんとしても相手の心を引き付けたいと雨乞いも確か。

 

ボクは安物のフォークギターをぶら下げ緑道公園に入り、散歩道の中腹傍らにあるベンチを目指した。

ギターはまだ独学で始めたばかり。

卒業前のお別れ会で歌いながらコレをかき鳴らす。

3人目のガールは、ボクのカッコよさにハートを射抜かれるに違いないのだ!。そう考えただけで卒倒しそうな程気持ちは昂る。

鼻の穴を膨らませたボクは、コソコソと緑が目隠しするベンチに腰を下ろし、

いかにも安物っちいペナペナの樹脂ケースからギターを引き抜く。

恋の歌…。恋の歌を、おずおずと自分でさえよく聞き取れぬ程の小さな声で歌い始める。

聞き取れないので音が外れていないか分からず、時々首をかしげ必死に声を聞き取ろうとしている自分に気づき、ひどく驚く。

も少し大きな声で歌えばいいだけでは?。

「ピーッ!!」

突如、殺気立った鳥の鳴き声!!。

ギターの弦から顔上げたボクの鼻先、マッハで駆け抜ける黄色い稲妻!!。

ド気も抜かれ前方の宙を見やる。

1羽の黄色いセキセイインコが樹木群の中に消え去るところ!。

 

何だったんだ今のは…。

カゴから逃げ出したインコだな?。

ボクの歌かギターが気に入らなかったってか?。

気を取り直し再びポロロロ、ポロロロと奏で始める。

ほぼ同時、再びインコが木陰から踊り出る。放たれた矢の様にボクめがけて突っ込んでくる!!。

ボクの頭に迫りくる真っ黄色!!。

ボクはインコに当たらぬ様、手加減しながらギターを振り回す。

インコは樹木群手前まで一旦撤退するも、大きくカーブを描いて再度突っ込んでくるではないか!!

ヒッチコックの “ 鳥 ”なる映画が脳裏をかすめる。

ギター振り回し追い払う。追い払えない。何度も攻撃してくる。

これは何かの罰なのか。

ピーピー鳴きながら襲ってくるピーコちゃんは神の忠実なるシモベなのか!!。

 

ギターをケースにしまうイトマもなく撤退を余儀なくされる第1級道化師。

憤慨しつつ慌ただしく坂道下る彼の心に、カーペンターズの “ クロス・トゥー・ユー” の訳詩が突き刺さってくる。

アナタが来ると鳥達が舞い降りる 私と同じ 皆アナタと一緒にいたいのね

 

 

 

●写真タイトル / 木漏れ日トンネル