歳末大特価市 / トビ職ネコに朗報

Title : 冷え性知らずのソーラー・ニッカボッカ2019(個人差があります。これはイメージです)

 

 

今年もガテン系作業服メーカーのガチマイザリーが、年末恒例の歳末大特価市を塩止(しおどめ)ガチマイ・ラフォーレ27階特設催事場で開催する。今回の目玉は何と言ってもトビ職ネコ御用達のソーラー・ニッカボッカ2019改良版の先行販売だ(写真参照)。

「ニッカボッカの尻部内側にソーラーパネルと全く同じ素材が埋め込まれていて、晴れ曇りどちらでも親方は大事なトビネコに体調を悪化させることなく作業に専念してもらえるようになりました。以前冬場の屋外作業時、冷えから来る肉球のシビレなどで物が握れないネコが続出していましたが、ソーラー・ニッカ着用で作業したところ58尾のネコ中53尾が気温4度の中、生きたドジョウをわしづかみ出来ました。また56尾までが1つのご飯粒に爪楊枝を刺し弁当箱に戻すことが出来ました」

ソーラー・ニッカボッカはネコの下半身を快晴なら常時28度に保ち、ウレタンと牛タンの合成素材が快適な肌触り。通常価格23400円を大特価市の2週間は価格割れの230円で限定200着販売。予約は受け付けておらず、入場者は入口で整理券を購入して会場に入って欲しいとのこと。整理券は大人30000円、ネコ無料、子供120円。尚、18歳未満の方には購入をご遠慮いただいているそうだ。

お年玉要求排除ハンド2020年版予約受付開始

Title : DXMZでキャッチャーされるお年玉要求心 (これはイメージです)

 

 

今年もベストセラー商品『お年玉要求排除ハンドDXMZ』の予約受付が銀座AIスティショナリー別館6階にて始まった。会場は午前9時の開場時点で詰めかけたPTA達約8000人で既に過密状態、メーカー側が用意した商品27000個は予約受付開始わずか5分で予約完売となった。何故、購入手続きが5分以内に完了したのかは不明だが、近年のお年玉業界の人工知能搭載商品の顧客獲得競争は異常ともいえるほどだ。

PTA商会発売のハンドDXMZは使用するPTAの後頭部にMZチップをワンタッチで埋め込み、PTAはチップの人工知能のサポートに従って左右ハンドを操作するだけで簡単に子供のコメカミからお年玉要求心を除去出来る。

毎年、人工知能をそのまま後頭部に残し日常生活のサポートに使用する消費者から眩暈がするなどの苦情が寄せられるそうだが、正月終了時に煎茶服用で必ず自然排出して欲しいとは担当者の弁。

価格は左右ハンドとチップ込みで34000円と手頃。この価格で我が子へのお年玉金額が10~15%削減出来るとなればお安い買い物ではないかとメーカーは自信満々だ。

合格必勝お守りの決定版!インフルちゃん発売!

Title : 只今ウィルス除去中

 

 

医薬品メーカーのデロンベロンが掟破り、突如受験生御用達の合格必勝お守り販売に乗り出し業界を騒然とさせている。

このお守りは肌身離さず身に付けているとインフルエンザ予防接種を受けていなくても絶対にインフルエンザに感染しないというお守りで、その名も “インフル入ってない、略してIHN”。確かにインフルエンザにかかってしまっては優秀な受験生も合格どころではない。

早くもSNNではインフルちゃんと呼ばれ話題になっているそうだが、価格が220円と安価なことも有り飛ぶように売れているという。

合成樹脂使用、日本製。全長5センチ、色は写真の赤のほか、黄色、緑、青、ピンクの5種。

空中分解システム (11) / 守秘義務を免れたエピソード

 

 

 

周知の通り、医者には患者に対する守秘義務がある。ゆえに、その病気の明確なイメージを構築したくても、具体例を示してもらえなければお手上げ。いくら難しい学術的専門用語を並べられても医学知識のないボク達は、ただ成すすべなく立ち尽くすばかりだ。

極めて症状の重い、ある強迫性障害者の話をしよう。

彼の名はトマス(仮名。欧州人、男性。年齢32、離婚歴1回)。

 

彼は週に2~3度、夕刻のロンドンにやって来る。何処から来るのかは伏す。ロンドンで目的を達成出来ない場合、ポケットに十分な紙幣があるのであれば、1時間ほどかけてフランスのカレーまで出かけることもあった。

彼はバーで独身女性に声をかけ、運命の出会いを感じる程に気が合えば、長々と話をする。決して娼婦には近づかない。ごく普通の、真面目な女性ばかりと接点を持つ。目的は相手の女性を妊娠させること。

SEX依存症の性犯罪者、という非難は社会的通念として免れないだろう。だが、彼は異常性欲者ではなく強迫性障害に自我を乗っ取られた病の従者だった。

彼が異常に固執したこと。それは、もう一人の “ 完璧な自分 ” をこの世に生み出すことだった(完璧な自分、の意味は未だに不明)。その目的を実現させるための擬似恋愛。結婚詐欺。

SEXの快楽に特別な関心などはなく、トマスが異常な眼差しを向ける対象は、結婚を前提に交際を始めたばかりの、彼の目の前に座りビールを飲んでいる女性の性的魅力などではなく、健全で完璧に近い胎児を宿せる能力を彼女が有しているかどうかだけだった。

彼女のどこを見ればそんなことが分かるのか。だがトマスだけには分かるのだ。

不完全極まりない今の自分。それは自分を生んだ母親の母体に問題があったからだ、という思い込み。故に、自分の母親と全て真逆の要素で構成されている女性であれば、論理的に考えて、今のお粗末な自分とは正反対の、健全で優れた能力を有するトマスの改良版コピーがこの世に創出されりことになる。それを思い描く時、彼女が出産する直前まで、彼は自身の病、“ 自分が自分自身を強迫する病 ” の苦痛を緩和することが出来た。

トマスの失望。失意。絶望。それは決して許されざる証拠だった。産まれた赤ん坊がそそうをした。何という事だ!。これでは全く赤ん坊が自身の不完全さをハッキリ掲示して見せたも同然ではないか!。

婚前交渉。出産。破棄された約束。子供の父親になるべき男は、ある日忽然と姿を消す。逃げたのだ。妻となるべき女性と我が子を置き去りにし、霧の闇に消滅した。

トマスは6人の女性を妊娠出産させ1人の女性を自殺させた。結婚詐欺で逮捕されなければ7人目は間違いなく生を受けていたことだろう。彼の精神鑑定結果は強迫性障害。罪に問えると判断された。

被害を被った1人の女性の父親は、トマスの異常行動を夜ごとバーで出くわす不特定多数にぶちまけ、トマスの外的特徴を話し、所在を突き止めようとしていた。それが功を奏し、結局トマスは逮捕される。

父親は初めて強迫性障害という病名を聞かされた。バーで出会った見ず知らずの男の口から、その病気の疑いがあると。

自分は欠陥人間だから新たな自分を生み出さねばならない。完璧な分身を作るためにはキミの協力が不可欠だ。娘にしつこく話していたトマスの言葉が鍵となった。父親に病名を告げたその男、運のいいことに精神科医だった。

父親はトマスの精神鑑定結果を聞き大いに納得し、それもまた誰彼構わず詳細に話して回った。守秘義務の壁に阻まれなかったひとつの事例、トマスのエピソード。

ボクが又聞きしたこの話をし終えた時、車座になっていた数名の中から一人の中年男性が憮然と言った。

「嘘だ。作り話だ。そんなことをする奴の話、今まで一度も聞いたことがない。有り得ない。絶対に実話じゃない。絶対に嘘だ」

ボクは尋ねた。「その根拠は?」

何度尋ねても、彼は絶対に嘘だ、でっち上げだの一点張り。そのくせ決して根拠を明かさなかった。当然だと思う。根拠などない。

 

全否定する彼、推定だが、強迫性障害者だ。

 

 

◆写真タイトル / 揺れない揺りかご

 

 

 

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空中分解システム(4) / 分解しない強い子

Title : 喜ばせ上手

 

 

イラつく。ウザい。KY消えろ。

分かる!。と皆言う。もはや時代の共有体験、共有体感。市民共鳴。皆が口を揃えて言うからには歴然たる事実。

とはいえ、聞く耳持たない、は、マジ友持たないへと発展進展する恐れあり。犬養毅言うところの、話せば分かる、話しをしよう、では通用しないご時世ではと皆半ば諦め顔か、サジ投げ放題。

しかし、それでもやっぱり、聞く耳持たないは絶対に宜しくない。何故なら、聞く耳持たない、は処世術としては簡単ご使用便利ワザ。

つまり癖になる。癖になってしまったが最後、便利でラクチンだと納得のアナタは自覚なき社会の落伍者。受験戦争だのエリートコースだのといった部分的で短絡的な落伍者ではなく、本当の意味での落伍者だ。だって、大人じゃないでしょ。子供でもない。じゃ何。

ともあれ子供を、聞く耳持たない大人にすることだけは回避したい。

子供は模倣しながら覚えてゆく。大人もそうだが、子供の覚える内容は、これから自分が良質人間になるための模倣。真似。つまりは正しいお手本が前提。大前提。子供の物の考え方がすっかり歪んでしまう前に、是非とも効果的なバックアップをしてあげなければ。

 

子供の前でグルグル、グルグル、空(そらではなくクウ)に人差し指で円を描く。直径20センチほどで、アナタの全身が子供に見える距離。ニコニコ笑いかけながら、

「ほらほら、クルクル、クルクル回ってるよ。来るよ、来るよ、近づいて来るよ、クルクルクルクル回ってるよ。これな何だ?何だろう」

笑うだけの子もいるし、「指っ」「丸」という子達も。

子供の目の奥を覗きながら、ニコニコ顔を絶やさず、上記の言葉を繰り返しながら、ゆっくりゆっくり子供に近づく。目の前に行ったら、尚も上記の言葉を繰り返しながらゆっくりしゃがんで子供と同じ目線になる。その間もずっと指は弧を描き続けている。

「これは〇〇(子供の名前)ちゃんの▽▽(怒りなら具体的な怒りの対象、要求なら要求の対象)だよ~。さっき〇〇ちゃんの中から飛び出したから〇〇ちゃんの中に戻すよ~。クルクルグルグル回ってるよ~。戻してもいいかな~?」

「ダメ!。やだ!」「いいよ」様々なリアクション。

許可しようが断ろうが、最終的には「ハイッ!」と軽やかに手の平で心臓部分を叩くような素振りで素早く撫でる。

「入ったァーッ!」

大げさに嬉しさ一杯の声で盛り上がる。大喜びしながら周りの子に向かって、

「今見てたよね皆!。〇〇ちゃんの▽▽は綺麗に〇〇ちゃんの中に安心して帰っていったよー!」と拍手。〇〇ちゃんの頭をやさしく撫でるか、肩を抱く。

子供の年齢に応じて上記の言い回しレベルを微妙に変える。催眠術ではない。暗示でもない。子供が目撃した1つのパフォーマンスだ。しかもそのパフォーマンスの主人公は紛れもなく自分。賞賛されたという事実。子供の周囲の人間が1人でも多く加われば加わるほど効果がある。それは絶大な効果だ。

鮮烈な印象。鮮烈な体験。自分の怒りが自分の中に大人しくなって戻ってゆく、という感覚。不当な要求が何故か取り下げられ、自分の中にただ普通に戻ってゆくという体験。

絶対に、〇〇ちゃんの怒りはなくなった、とか、要求なんかしたくなくなった、などと言ってはならない。ただソレらは大人しくなってご機嫌で戻った、とだけ伝える。子供は訳が分からず混乱する。良い意味での混乱だ。脳には意味が分からない。しかし、脳は意味よりも主役になったことに酔う。ひたすら酔う。もう一度味わいたいと自身に要求する。このパフォーマンスを子供が何度も経験すると、その子供は必ず他の誰かにそれを行う。模倣が始まるのだ。

 

幼児でさえも、自分をコントロールし始める。その子なりに。そしてこのパフォーマンスは、グルグルする人なしには成り立たない。

 

 

 

 

 

 

 

空中分解システム (15) / サジ加減よりサジ投げて

Title : 紙屑も拡げれば情報のかたまり

 

 

生まれつきだから治せない。

どんな親も子供も関係各位、沈黙させる魔法の語り。

チャールズ・チャップリンはインタビュアーの質問、

「アナタの映画の最高傑作は?」に対しこう答えた。

「次回作」

 

生まれつきだから治せない。これはチャップリンとは真逆のコメント。

確かにそう。生まれつきなら完治は無理。しかし、ワラにもすがる思いで尋ねてくる人々全てにこの魔法の言葉を伝える根拠は何か。

それはもちろん詳細な質疑応答によるカルテの制作。カルテがその証拠を語る。

受診者が未成年者なら尚のこと、保護者はカルテを閲覧出来る。

質疑応答は最低20回、通常50回、1回の質疑応答につき最低2時間。それでは足りないが、物理的に仕方のない面もある。アナタはどれほどの時間と日数を割いてもらいましたか。

釣りをしていて、いつも通り、予測通りにマハゼが200尾ほど釣れた。

驚いたことに幻の魚、ウロハゼが1尾だけ混ざっていることが判明した。

たまたまベテラン釣り師がボクのバケツから飛び出した魚をみて僅かな違いを見逃さなかった。帰宅し即刻図鑑検証。確かにウロハゼ。奇跡中の奇跡だと大いに盛り上がった。

翌月、いつも通り、予測通りにサッパが300尾ほど釣れた。帰宅して1尾ずつ捌くのが重労働。ヒーコラするうちコノシロを発見。この界隈には回遊しないはずのコノシロ。

奇跡中の奇跡はその後、色々な魚種で起こった。奇跡は訂正。

文藝春秋社元編集長、半藤一利氏の言葉、日本が太平洋戦争で敗戦した時、思い知らされた。“ 絶対 ” という言葉は二度と信じない。口にしない。

専門用語を多用せず、シロウトにも分かる言葉に置き換えて話して頂きたい。分かる言葉に置き換えて頂けると、シロウトにも即刻分かりますから。判断出来ますから。色々なことが。例えば、

 

過ぎたるは猶及ばざるがごとし

「は?」「やり過ぎちゃ、かえって良くないって意味だよ」

「何だ!。最初からそう言ってよイジワル」

 

日々の暮らしに忙殺され、夫が妻や子を無視する。そんなつもりはないのだが、疲労困憊で最早力尽きている。妻も同じく。他方、子供は世の中の厳しさを知らない。仕事の過酷さを知らない。

だから激怒する。お父さんは何故、あんなにお母さんにキツく当たるのか、邪険にするのか。お母さんはどうしてお父さんの悪口ばっかりアタシに言うのか。

誰も子供に教えない。何故か。社会の厳しさ、仕事のキツさ、それを子供に話して何になる。

どうにもならない。理解も難しいだろう。何より心配かけたら子供が可哀想だ。

は?。可哀想、とは何か。一度たりとも熟考したことがありませんね。

哀しい想いをすることを許可する。そういう言葉ですよ、よく見てください。哀しい程度で子供は癒えない傷を負ったりはしない。

哀しみを幾度も経験し、将来襲う本物の悲しみに折れないための免疫力、抵抗力を養う。これが筋。お父さんお母さんの言うカワイソウ、は子供が哀しい想いをすることを許可しない、という意味です。

もしそれを続ければ、子供は傷つくことを異常に怖れ、やがては初恋の失恋さえ拒絶する子に育ってしまう。いともたやすくポッキリ折れる子に。

作家で天台宗僧侶でもあった今東光かく語りき。

社会に出たら三年間は文句をひとことも言わず、我慢して一生懸命働きなさい。三年経ったら話を聞こう。それが社会に対する恩返し、礼儀だよ。

「恩なんて受けてねーし。第一、入社したばっかで名前も全然覚えてねーし。何で恩あるかね、有り得ねーでしょ」

 

会社に入社させてくれたでしょ。

 

「は?。こっちの実力でしょ。意味不明。向こうが欲しくて採ってんでしょ。青田買いまでして、来てくださいお願いしますって言われたんだけど。向こうがこっちに恩ありでしょ。入ってあげたんだから」

確かに。鋭い!。一理ある。

社会的制裁という言葉をご存知かな。姿のない人々の無言の制裁という意味です。規模?。日本中の有権者総数って感じですかねえ。いつ?。どういうやり方?。

今に分かります。と言いたいけど、君は一理あること言うから、ないかもね。社会的制裁なんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

空中分解システム(8) / 反響しない叫び

Title : エヘン虫は喉で反響する

 

 

日常生活の中に於いて内でも外でも、もともと日本人はスキンシップを人前で執ることを良しとしない文化を持つ。

ハグなどしない。キスもしない。

握手でさえ限定されることが多い。これ迄はそれで良かったし特に問題は生じなかった。

お母さんの背中にオンブ紐で括り(くくり)つけられたり、幼い時分から仲間同士で取っ組み合ってジャレ遊んだり、相撲に興じたりと、それでもまだ子供時代にスキンシップの機会は多々あった。

ひとり遊びがむずかしく、子供達の遊びと言えば、それは誰か相手の顔が浮かぶことを指していたのである。

 

高度成長期、大量の漫画本が量産され始め、それは瞬く間に子供達を席巻し、大人達の抗議は出版社に殺到した。

子供に悪影響を及ぶす、という趣旨が大半を占めていた。その社会現象に対し、良いかどうかここで論じることはナンセンス。

とどのつまり、子供達は1人で遊ぶことが可能であることを認識したのだ。

やがてマイホームブームが到来し、共働きの親の元、“  鍵っ子 ”  が量産される。

子供の寂しさを紛らわす手段の一つとして漫画は格好の材料。親たちの出版社に対する抗議は沈黙した。かたや子供達も自身の淋しさと折り合いをつけることに成功した。スキンシップを捨てても良い、と。

勤勉で統率のとれた日本人の底力は凄まじいものだった。エコノミック・アニマルと海外から皮肉を言われる程に凄まじかった。

 

日本は経済大国への道をひた走った。諸外国が決してマネ出来ないほどの好景気が持続に持続を重ねた。

Japan as NO1と言われるようになり、未曽有のいざなぎ景気は企業戦士達を巻き込みながら、やがて悲劇のバブル崩壊へと突き進んでゆく。

リーマン・ショックと何ら変わらない破滅への切符。それは誰にも破ることの出来ないチケットだった。

札束で他人の横っ面を引っぱたく行為に沸いたバブル期。卓球選手は根暗(ねくら)だと嘲笑され、バカ騒ぎのパーティーに水を差す根暗は追放の憂き目に遭った。近年の福原愛ブームなど到底有り得ない現象だったのだ。

生真面目で笛吹けど踊らない者達はことごとく根暗というレッテルを張られ疎(うと)んじられた。

そんな世相が精神病や心身症の者達をどう扱うだろう。

敗者は地下深く埋没した。潜行したのではない。ただ沈んでいったのである。

つまり、誰も精神病を話題にしない、口にしない社会的通念が屈強なまでに完成した。

誰もそのような職業には従事したがらず、その世界の人材は確保がむずかしくなっていったが誰も気に留めなかった。というより、関係者以外、誰も心の病に苦しむ人々の存在を全く思いつかないまでになっていたのである。

やがてコンピューター革命が起こり、人々はTV、ラジオ、新聞、雑誌以外から情報を入手出来るようになった。

マスコミから一方的にセレクトされた情報を受動するのではなく、情報の選択権を得たのである。

人々はネットに侵入し驚愕した。凄まじい事実がそこには在ったからだ。おびただしい事実が。情報が。

心の病に苦しむ人々や子供の行く末を考えない社会は、今なお幻想をひたすら追い求め続けている。

失われた経済大国への復権。国が栄え豊かになる事に異論がある国民は居ない。だが、国体を維持する、とは何か。

国の将来とは何か。弱者は国体ではない。弱者に国や将来は到底託せない。では誰になら託せるのか。

個人の尊厳を持たず、使い捨てされることに感謝の涙を流し、壊れかけた人の中にかつての自分の幼少時代を重ね合わせ、見ろ、オレはどん底から這い上がった!。オレは勝者になる!。オレ達が国の将来を決めるのだ!。そういう人達に託されるのだ。

 

 

今、人々は首を傾げ始めている。

 

 

 

 

 

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空中分解システム(6) / 脳機能を逆手に取れ

Title : 私の脳は氷山の一角

 

 

 

後ろ手に縛り上げられ処刑場に引きずり出された男。眼前の殿様に向かい憎悪の伝達。

「この恨みはらさずにおらりょうか。死して後、必ず呪い殺しに戻ってまいる」

家臣達は罪人の形相と声に震え上がる。顔色ひとつ変えない殿様は平然と言ってのけた。

「お前の首をはねた直後、お前の眼前の飛び石に噛みついて見せよ。その通りになったらお前のいう事を信じてやろう」

男は頷き、即刻首をはねられる。宙に躍った生首、カッと口を開け石に食らいついた。それを見た家臣たちは総毛立ち、

「殿!、コヤツの言ったことは事実ではありませぬか!」

「安心いたせ。人は死ぬ直前の一念のみ、死してのち果たすことが出来るのだ。コヤツは石にかじりつく一心のみで命を落とした。もはやコヤツの想いは遂げられた。安心せい、もう何も起こらぬ」

 

この逸話は的を射ている。自殺した人間が死後の世界、最も苦しい心持で命を絶ったがために、永遠にその最大級の苦痛を抱えたまま彷徨い歩くのに等しい。戦慄のストップモーションと呼ばれるこれこそが地獄の正体だ。地獄という場所はない。それは各々自身の中に在る。

自身の髪の毛、すなわち自分自身の一部を紙屑に内包したものを溜めこみ始めたA。それは日増しに溜まってゆく。100個ほど溜まった段階から隠し所有ではなく自室に飾る。目に見えるところに並べる。理路整然と。あたかもステイタスな置物コレクションの様に。棚の上でもガラス戸中でも、机の上でも、とにかく目につく場所に陳列する。

「お父さん、これ何ぁに」「何なのよコレ」

どう返答しても良いが、部屋中にばらまき子供を誘って部屋中手当たり次第にサーッカーボールよろしくデタラメに蹴り回す。妻にも参加してもらえるのであれば理想的だ。妻が拒絶するなら紙屑を全部捨ててくれと頼む。捨てられてしまったら拾いに行き、全部回収して再び部屋に陳列する。

陳列するから視界に入る。ただそれだけではいけない。暇つぶしに、ランダムに手に取って広げ読む。声に出して読む。

これはD課長に対する怒りか。さっきのもそうだったな。多い。D課長に関する紙屑は机の上に集めることにしよう。妻への苦情はアソコの棚の上。そうしてゆけば、自分が最も苦痛に感じる事柄がハッキリと見えてくる。そんなものは紙屑にしなくても自覚している、とA。確かに。自覚出来ているなら通常の人々だ。それすら分からなくなり始めたら警告サインと見なす。

脳に見せる。両目は脳の一部。一人で沢山の紙屑を蹴散らして遊ぶ。それを脳に見せる。どんな思いで蹴散らしても良い。自虐的に笑いながらでも、泣きながらでも、罵倒しながらでも良い。

これが一念。これが、脳が囚われてしまう苦痛の種の目撃。蹴散らされる自身の苦痛の数々。紙屑が溜まれば溜まる程、Aの苦痛は自身の中になく、部屋中に散乱している。つまり外に在る。

子供と一緒に紙屑文を嘲笑しながら朗読しよう。笑い飛ばそう。妻とでもいいし誰とでもいい。人に知られたくなければ自分1人でも良い。

誘っても家人が一緒に1度たりとも読んでくれないのであれば、Aは気づく。全ては家族の幸せのため?。勘違いだ。思い違いだ。

いまこそ発想転換の時。脳は勘違いを始めている。チャンスだ。紙屑が増えれば増えるほど脳は錯覚する。

 

体内に悩みの種、ない?。