上司へのタブー / 金句は禁句

Title : カンベンしちくりぃ~

 

 

「セトちゃんね、そんな考え方じゃキャリア・アップどころか、結局最後は “ 井の中のカワズ、大海を知らず ” で終わっちゃうんだよ。悪いけどサ」と過度に前かがみ、珈琲をひとくちすすり、過度に勢いつけて喫茶店席背もたれに背中を叩きつける部長のミト。

「カワズって何ですか」

「え。……カワウソだっけ……よく分からないけど」

「それでは、カワズが大海を知らないのであれば、カワズが何たるかを知らない部長は一体何を知らないことになりますか。出来ればお答え下さい」

「……」

「部長は、この間のビジネス・ソリューション相互戦略会議で発言されておられました。その中でワタクシ達は “ 同じ穴のムジナ ” であるとおっしゃってました。ムジナって一体何ですか」

「……そう言われ……ても…」

「部長の目から見て、ワタクシ達は皆、正体不明であり、それらが同じ穴に潜んでいる、つまり大変危険な状態であると言っておられる印象を禁じ得ませんが」

「セトちゃん……。キミさ」と言って過度に前かがみ、コーヒーを一気に飲み干し、今度は背もたれに自身を叩きつけないミト。

「お答をまだ伺えておりませんが」

「ううううむ…。キミ、会議のあと意味調べてみなかった?、自分で」

「ワタクシは部長の口からお伺いしたかったのです。前回の慰労会で部長がご挨拶なさいましたが、“ 一寸の虫にも五分の魂 ” と言っておられました。一寸の長さは何センチ、或いは何ミリなのでしょうか 」

「もうそろそろ戻らないと。キミも仕事あるだろう」

「ワタクシ、正直申し上げて何故このタイミングで異動なのか計りかねて悩んでいます。企業戦略情報部に転属されて未だ2年も経っておりません。仕事内容も半分覚えたか覚えていないといった状況です。それなのにキャリア・アップで金融解析部へ配属って、何だか不自然に思えてしまって」

「それが会社だよ。会社ってものなんだよ。キミも大人なんだから、いつまでも子供みたいにダダこねてないで、黙って…

「ダダってどういう意味ですか」

「ハハハハッ、ダダの意味なら流石に分かるな」

「教えてください」

「ダダは、……」

部長はテーブルの伝票を引ったくるようにして荒々しくレジへと向かった。職場に戻る素振りも見せずセトは涼し気に「あのう。コーヒーお代わり頂けます?」

するとウェイトレスが彼女に歩み寄り「頂けるに決まってます。それがお店の収益の全てですから。なのにどうして、頂けるかどうか聞いたりするんですか」

 

Title : 世の中、知らん生き物ばっか……