空中分解システム (10) / 熟知した上での完璧なプラン / 軽んじられる私の存在感

Title : コンダクターはしくじらない

 

 

自分で市販品と同等、完璧な爪楊枝を1本手作りしようと試みる。

膨大な時間を要する。非常な手間暇をかけ、しかも満足のいく作品になる保証もない。恐らく制作前から既に自信さえ無いだろう。

この徒労。膨大な時間とお金をかけ、手塩にかけ育てた我が子が爪楊枝。よくある話。誤算と呼ぶには馬鹿げ過ぎている。

我が子が立派な社会的地位に付ける様な道筋を作る。立派なコースのお膳立て。その甲斐あって幅のある人間に育ってくれた。確かに分厚い。幅は十分。

ただし紙ナプキンの束だった。一枚一枚離して使う。この薄っぺらさがいい。捨てる時にかさばらない。便利。

必死の頼み事を誰かが誰かにしている。土下座して両の手を併せ、仏にすがるが如く、拝むが如くに頼み事。これは、私の手を縛って罪人として扱ってください、その代わりに私の頼みを聞き届けて下さい、という意味なのだと一度も考えたことがない人など居ない。はず。

手作りの爪楊枝は軽すぎる。軽んじられ過ぎだ。

紙ナプキンなど誰も評価しない。非常に役立ってさえもだ。何故かって?。大量生産品じゃないか所詮。ええええ何だって!、軽んじちゃ失礼!、抗議しろ!。

でも、今自分が使ったことさえ、次の瞬間には誰も覚えていない。

 

私をしょっぴいて下さい?。語るに落ちた。価値無き人間をそこまで相手にしてる程コッチは暇人なのかね。随分と見くびられたものだ。

 

立派な肩書をつけてあげるからね。だから頑張るんだよ。子供に価値ある努力を要求しよう。そして休みの日には肩並べ、親子仲良くアニメ・ビデオでも観ようじゃないか。

ルパン三世に社会的な肩書はない。その一派も以下同文。ア、そうか銭形警部のファンか。立派な肩書あるもんね。コナン君も肩書ないなァ。肩書社会の裏返しで、肩書のない主人公の大活躍観て息抜き。子供にもそういうことだとキチンと説明してる。実際はね、勉強していい大学に入らないとルパンみたいに泥棒するしかなくなるんだぞ、と。でなければ子供は混乱するからね。ああ、確かに。

無駄。駄目。駄。駄は太った馬と書く。納得。競走馬でなければ馬に価値なし。農耕馬じゃ大金稼げない。駄々こねる子、最低。競走馬とはほど遠い。コラ、大人しくしろ、出ないと掛け金つかない馬に将来なるぞ。困るだろ。脅しは効果あるね。

 

ダルマさんが転んだ。かくれんぼ。缶蹴り。

 

ダルマさんが転んだ、のホントの遊び目的は何だ。

はい。相手をじっくり見る、観察力を子供達に知らず知らずのうちに身に付けさせる試みです。

正解。では、かくれんぼのホントの目的は?。

はい。居ると思い覗く。居ない。

居ないと思うが念のために覗く。

居た。

わあ、何で此処なんだよう!。だって今日寒いから、ここ温かいんだもん。ああ、そっか、わお!、ホントだ、ボクも入れて!。居て当たり前の仲間が居なくなることがある、という個々の存在の重さ、それを無意識に子供心にインプットするための知恵です。

探して見つけた!、見つけられた!のハプニングで、毎回意外なコメントが飛び出し、コミュニケーションの楽しさを子供達に無意識に教えるための試みです。

正解。では缶蹴りは?。

不測の事態に備える心構えの訓練です。相手の奇襲を読むこと。正確に読むためには相手の思考や行動パターンを常日頃から頭に仕入れておかなければならない。そのためには相手のことを常に気にかけておかねばならない。

観察は同時に理解する、されるで相互信頼を生み出します。絆は大げさですか?。とにかく人間同士の楽しくてスリリングな知恵比べです。

正解。では、何故このように有意義な遊びを学校は推奨しない?。親達が薦めないのはどうしてだ。

はい。遊びに隠された先人たちの知恵を知らないからです。

人は一人では生きられないのだから、と教えつつ、弱い人間、もろい人間を量産する試みは面白いね。真意は一体何だろう。この難問、分かる人は?。

 

セキトシテ コエナシ (返答なく恐ろしい沈黙が…)

 

 

 

 

 

空中分解システム (32) / 破壊度数100一95〈9〉/ ヒステリー

 

 

涼愛は自分がヒステリー症ではないかと疑い友人に相談。二人の友人は育児疲れではないかと言う。そうかもしれないが自分で自分が恐ろしい。涼愛は友人達のアドバイスに適当な相槌を打ち、誰にも秘密にして医者の門を叩いた。

ヒステリーだと診断され抗不安剤を出される。長期服用は依存性に陥りやすい、あくまで短期の服用であると説明される。

薬を飲む気にどうしてもならない。恐ろしくて娘に近づけない。近寄れば手を上げてしまうに違いない。

娘は母親の顔を見なくなっている。始終うつむき何か身近な物を無意味にいじっている。その横顔は、涼愛が生まれてこのかた見たこともない程悲し気な人間の顔だった。

この表情を造ったのがこの私。突っ伏し大声で号泣する母親。激しい感情の爆発。拳を握り締め歯を食いしばる。

何とかしなければ。今こうして自身の爆発的な怒りを自分自身に向けていられるうちに、時間を稼いでいるうちに、何とかしなければ。

 

近年、日本人は子守唄を我が子に歌い聴かせることが少なくなった。

子守唄は子供を寝かしつける時に聴かせるものだと勘違いしている人が少なくない。勿論、それが主流ではあるが他にも様々な使い道が在る。

子供をあやす、子供の笑顔を作る。子供に親の愛情を温もりという形で伝える。父親でも母親でも構わない。勿論、双方が代わる代わる歌って聴かせることが最も理想的ではある。

我が子の耳元で囁き歌う。抱っこ出来る年の頃から、抱っこしない年頃まで続ける。6~8歳までは続けたい。我が子が子守唄を覚えたら、一緒にお風呂に入っている時に親子で歌うのが最も良い。

この愛情伝達法の総仕上げに近づいている証だ。我が子が独自に覚えた歌を歌って聞かせてくれるようになったら、その頃が子守唄の卒業式だと目安にすると良い。

抱っこを嫌がるようになっても、子守唄を聴かせる。我が子の手を握って歌うか髪を撫でながら歌うのも良い。顔を見ながら頷きながら歌う。

「アレ?、この先なんだっけ?、覚えてる?、教えてよ」

子供とコミュニケーションを取りながら歌う。恐らく、そんなゆったりとした気分になれない、という人が多いかもしれない。面倒臭いという人も。

だったら子供なんて作らなければよかったね。

産んだ後に気づいた?。育児疲れ?。育児ノイローゼ?。出産前に全くそんな情報知らなかった?。興味なかった?。出来ちゃった婚?。どれもこれもエゴ。

 

全てを立て直さなければ。出来るでしょうか。出来るかではなく、これまで生きてきた自分の全身全霊をかけて成功させなければならない。出来なければ許されない。

 

涼愛は両腕付け根を縫い塞いだシャツを着こみ、自分の腕が動かせない様にしてから、胡坐をかいて麻里奈に子守唄を歌い始める。一ヶ月、二ヶ月。ある時、涼愛は気づいた。

自分も子守唄を聴いている。自分の声を脳が聴いているのをフト実感した。

三ヶ月、四か月、麻里奈に変化が現れ始める。チラチラ、母親の顔を盗み見る様になった。

「マリちゃん、一緒にママと歌う?」

首を振る娘。心なしか振り方が以前より強い。あれ以来、忌まわしきヒステリー症状は出ない。我慢に我慢を重ねていた当初とは違い、今は怒りを何とかコントロールできる様になり始めているのを感じることが出来る。

 

アナタのせいだ。ご主人は悪くない。医者の言葉に涼愛は烈火の如く激怒した。その怒りも今はない。涼愛は今、生まれて初めてひたむきに学んでいる。いつしかカラッポだった彼女の心に想像力が芽吹く。我が子が自分を抱きしめている姿を思い描くようになった。

 

 

半年後、涼愛がいつものように胡坐をかいて積み木遊びする麻里奈の前で子守唄を歌っていると、ふいに娘が母親の胡坐の上にピョコンと乗った。

 

その娘の後ろ髪に顔を伏せ、涼愛は泣き始めた。凄まじい号泣で我が子を委縮させたくない。彼女は涙を飲みこみ、娘の髪にくちづけると、静かに立ち上がり拘束服を脱ぎそっと外へ出た。庭の隅の物置小屋に入り、封印を解き号泣する。薬物を摂取することなく彼女はヒステリーを吐き出し続ける。これは嬉し涙だ。とうとう彼女は自分でも勝てると知ったのだ。

 

 

だから出来るって言ったでしょ。

 

 

 

◆写真タイトル / 臨兵闘者皆陣烈在前 (りんぺいとうじゃかいじんれつざいぜん)

 

 

 

空中分解システム (25) / 破壊度数100〈5〉/ 自閉症スペクトラム

 

 

自閉症スペクトラムなる病症の定義を読むと酷く驚く。こういった特徴がある、という記載を読むと、大半の人に自閉症スペクトラムの疑いがあるのではないかとさえ思えてくる。

まるで狂犬病ではないかと周囲が疑いたくなる様な飼い犬。のべつまくなしに誰彼構わず吠えて吠えて吠えまくる。飼い主の言う事など馬耳東風、一切聞く耳持たず。困り果てた飼い主が飼い犬躾のプロを呼ぶ。アッと言う間に吠えたてもしない、見るからに利発そうなお行儀の良い子へと転身してみせた犬。

犬の躾と人の子の躾を一緒にするな?。畜生と人間だから?。その考え方は西洋諸国には無い。犬も人間も愛情に敏感な、感情に波動を受けて壊れる動物だと大人も子供も周知徹底している。日本の犬猫殺処分件数が8万匹を超えると知ったら欧米人は気を失うであろう。しかもこれは1年間だけの数だ。

釣り座の傍に動物愛護センターがある。ボクが側面の道を歩いていると、突然一斉に犬達が泣き始めた。明らかに吠えているのではない。鳴いているのでもない。助けて!。乞うている。いたたまれなくなる程の悲痛な泣き声。

人も犬も変わらない。愛情を失えば空中分解する。

子供のいないオシドリ夫婦が2週間のヨーロッパ旅行へ出かけた。子供代わりの愛猫を家族に預けての安心旅行。

楽しい旅行から帰宅すると愛猫の様子がおかしい。全身がまるで岩の様に硬い。ビロードの様にしなやかだった毛はゴワゴワ。

家族は誰1人として虐待行為などする人間達ではない。重い病気にかかっているに違いない。すぐさま病院へ。

診断は特に問題なし。その後、愛猫は二度と夫婦に懐かなかった。ほったらかしにしていたからだ。怒ってスネているのかもしれない。そのうち御機嫌直してくれるだろう。獣医はその猫を自閉症スペクトラムなどとは言わなかった。実際、違うからだ。ボクも違うと思う。アナタは?。

2人を待っていたのだから、いなくなるはずはない。だが、愛猫は2日後忽然と消え、夫婦が彼女に逢えることは二度となかった。何処をどんなに血眼になって探しても、駄目だった。

明らかに先天的要因の自閉症スペクトラムは確かに存在する。原因は未だ解明に至ってはいない。解明されていない現状においては誰でもその病名の冠を戴く可能性がある。病気だということにすれば、本人と周囲の心が休まる場合もあるのだし。

お母さんの愛情は凄まじい。酷い便秘に苦しむ赤ちゃんの夜泣き。過疎村に医者は居ない。明日まで待ち1時間かけて病院へ行くまで待てない。

お母さんは自分の舌でウンチをかき出し続けた。

この女性が過去に潔癖症だったと、一体誰が信じるだろう。

 

 

 

◆写真タイトル / 怯える眼

 

 

 

 

 

ねたみ / やっかみ / そねみ / 自分を亡ぼす3み一体

Title : セルフ・コントロール・システム

 

 

ねたみ。妬み。

女が石になる、と書く。本来はおしゃべりで屈託のない女性が無口で頑な(かたくな)になってしまう程のマイナス感情。とはいえ、最近では男性も中性化してしまい、ねたみ、そねみ、やっかみも同等シェアするほどにまで進化してしまった。

退化の為の進化。この代表例だろう。その退化は劣化のようなものではなく、幼児化と言えば分かり易いものの、細胞は若返るどころかボーロボロの卵ボーロのまま、マルコ・ボーロのように東方見聞録が執筆できるわけではない。

ねたみ、はシット。

やっかみ、は、ねたみを行動で表したもの。やっかみで悪い噂を流してしまった、といったような。

そねみ。近年は死語に近いが、嫉み自体は日常的にバンバン行われているサムライニッポン。

シットやヤッカミ、それより悔しくてタマラン、の感情が強い。

クヤシければ精神のバランスを失い、自分をコントロール出来ない未熟者は自暴自棄にも似た行動に出る。クヤシさは、やり場のない怒りを肥大させ、心に重いストレス石を積み上げてゆく。押しつぶされる限界点前に突発的に心の外部に吐き出す。

それがかなりシンドイ場合は日常的に小出しにする。

 

バイクによる集団暴走が昭和の抜きがたい要素のひとつ。落ちこぼれ共が、自分の存在感を示したくてたまらず爆音とどろかせ公共道路の花道をジグザグ走行。

不景気になった平成、1台が50万円前後する200CCバイクを更に10万かけて改造出来る奴らは居なくなり、あげくに、仲間でつるまないオヒトリサマになってしまいもしたので、

狂気の暴走チャリが台頭するようになった。高額であろうがなかろうが、とにかくチャリで人を脅かし威嚇する幼稚なブチ切れ走行。

平成最後から問題になり始めるのが、今度は

四輪車によるアオリ運転

 

シット、ねたみ、やっかみ、そねみ。所得の二極化が進めば進むほどマイナス感情が身体を蝕んでゆく。人を傷つけたい、幸せそうな笑いが出なくしてやりたい。

人を傷つける、殺傷する。人の人生、運命を握っているのはオレ。などという歪んだ蜃気楼優越感を持つ人間は思考に客観性がない。

ストレスを溜め込まずに何か他の事をして発散すればいいのに。

しかし、何か他の事を熱中して継続するためには軍資金が要る。

軍資金を調達するにはサマザマなやりかたを用いなければならない。思考能力を駆使して軍資金を稼ぐ。

思考能力が低ければ軍資金の額も低い。あるいは、即刻、両手が後ろに回る。

 

甘えた乗り物による、ねたみの発散は、毎度のこと新しい法規制で鎮火する。乗り物で、というよりアイテムで、という事だろう。

法規制しづらいのが、

スマホなどのアンドロイド系アイテムを用いた誹謗中傷。姿の見えない無数のネタミ。

ターゲットを追い落とせれば、無数のストレス保持者にストレス倍加のヌマを与えることも可能だ。

誹謗(ひぼう)中傷攻撃で自身のストレスが発散できスカッとした、など有り得ない。スカッとした気分になった気がしただけで、自分の価値が1ランク落ち、その隠せない事実が自分を騙せず、コンプレックスがストレスを化け物に作り替えるだけのことなのだ。

ねたみ、やっかみ、そねみ。どれも英語ではJEALOSY(ジェラシー)、たったヒトコト。どの言葉も大して変わらぬ意味なのに、ワザワザ単語を3種類も作るとは。今ならさしずめ、

ヤベー。

これだけ。

 

いやぁ、映画ってホントに素晴らしいものですね / FRYDAY・NIGHT・FANTASY / 金曜ロードショー

Title : つらいDAY泣いと不安だじぇい

 

 

心おもむくまま、暇に任せ、自在にユーチューブ(音楽)サーフィンを楽しみつつ、知らなかった名曲発掘の戦利品に視聴泥酔いする。

昔のものは全て古臭い、昔のものは全て昔の人のもの、今の時代の人は今の時代の物しか関心を持たない。

という考え方にはまってしまう不運な人、

ではない人達は、

自由に伸び伸びと、少しでも見知らぬ良いものに触れようと選択肢を狭めず人生を豊かに自分を飾ろうとする。

 

♪ FRYDAY NIGHT FANTASY〈フライデー・ナイト・ファンタジー〉

1972年にTV放映開始、金曜ロードショー(日本テレビ、水野春郎解説)のオープニング・テーマ。リアルタイムでTV視聴することは出来なかったが、この曲を数年前に知り激しい衝撃を覚えた。

何と言う名曲。名曲とは、作った人、歌う人、演奏する人が誰なのか、それを全く考慮に入れず、どんな人でも心が打たれるもの、をいう。

 

ユーチューブに寄せられたリスナーのメッセージのほとんどは、

涙が止まらない、あの頃(昭和)がこんなに素晴らしかったなんて、あの頃は幸せだった、みんなありがとう、といったもの。

そんな感覚は平成だろうが令和だろうが同じだ、と言われるかもしれない。それはそうだが、

金曜ロードショーは、オープニング楽曲をピエール・ポルト(フランスの指揮者、作曲編曲家)に依頼した。フライデー・ナイト・ファンタジーは、既に発表済みの名曲で金曜ロードショーがそれを使った、と思い込んでいる人が大半であった。それほど唸る名曲だったのだ。

番組サイドは、安直で付け焼刃な気持ちで番組への取り組みをしていなかったことになる。流行りの人に右へ習えで作曲を依頼したわけでもなく、人生の重みを紡ぐ旋律、それを誰に依頼すれば実現出来るのか、結論へは遠かったはずだ。恐らく会議は難航しただろう。

高い依頼料が支払えるのは、高い視聴率によるスポンサーの満足度。

映画作品が今以上にステイタスだった時代、名作のイメージを会社のイメージに重ね合わせたいスポンサーは、依頼にGOサインを送り、賭けに勝った。素晴らしい名曲を新たに手に入れたのである。

 

いつからか、真逆の時代が開幕した。

いい加減な番組を安直に作り、結果、騙されない視聴者によって視聴率は地を這い続ける。遂には番組自体も消滅する。

 

ブラック企業はブラックを売りにし、消費者は不買運動すらしない。

CDも売れなくなればクリエイターの名曲を生み出す意欲は極めて説得力を失くす。

作曲家編曲家は、アドリブ一発で量産出来る、使い古されたコード進行メロディーを新曲と称して歌い手とファンに提示する。

それが問題なく受け入れられ、挙句、名曲だと騒がれる。

作曲家は、制作意欲も湧かず、面白おかしくもないものに溜息しつつも、楽して依頼をこなせる旨味には笑いをこらえきれない。

 

安直さの連鎖は、社会全体の底抜けを生む。

もう、誰にも止められない。

空中分解システム (11) / 守秘義務を免れたエピソード

 

 

 

周知の通り、医者には患者に対する守秘義務がある。ゆえに、その病気の明確なイメージを構築したくても、具体例を示してもらえなければお手上げ。いくら難しい学術的専門用語を並べられても医学知識のないボク達は、ただ成すすべなく立ち尽くすばかりだ。

極めて症状の重い、ある強迫性障害者の話をしよう。

彼の名はトマス(仮名。欧州人、男性。年齢32、離婚歴1回)。

 

彼は週に2~3度、夕刻のロンドンにやって来る。何処から来るのかは伏す。ロンドンで目的を達成出来ない場合、ポケットに十分な紙幣があるのであれば、1時間ほどかけてフランスのカレーまで出かけることもあった。

彼はバーで独身女性に声をかけ、運命の出会いを感じる程に気が合えば、長々と話をする。決して娼婦には近づかない。ごく普通の、真面目な女性ばかりと接点を持つ。目的は相手の女性を妊娠させること。

SEX依存症の性犯罪者、という非難は社会的通念として免れないだろう。だが、彼は異常性欲者ではなく強迫性障害に自我を乗っ取られた病の従者だった。

彼が異常に固執したこと。それは、もう一人の “ 完璧な自分 ” をこの世に生み出すことだった(完璧な自分、の意味は未だに不明)。その目的を実現させるための擬似恋愛。結婚詐欺。

SEXの快楽に特別な関心などはなく、トマスが異常な眼差しを向ける対象は、結婚を前提に交際を始めたばかりの、彼の目の前に座りビールを飲んでいる女性の性的魅力などではなく、健全で完璧に近い胎児を宿せる能力を彼女が有しているかどうかだけだった。

彼女のどこを見ればそんなことが分かるのか。だがトマスだけには分かるのだ。

不完全極まりない今の自分。それは自分を生んだ母親の母体に問題があったからだ、という思い込み。故に、自分の母親と全て真逆の要素で構成されている女性であれば、論理的に考えて、今のお粗末な自分とは正反対の、健全で優れた能力を有するトマスの改良版コピーがこの世に創出されりことになる。それを思い描く時、彼女が出産する直前まで、彼は自身の病、“ 自分が自分自身を強迫する病 ” の苦痛を緩和することが出来た。

トマスの失望。失意。絶望。それは決して許されざる証拠だった。産まれた赤ん坊がそそうをした。何という事だ!。これでは全く赤ん坊が自身の不完全さをハッキリ掲示して見せたも同然ではないか!。

婚前交渉。出産。破棄された約束。子供の父親になるべき男は、ある日忽然と姿を消す。逃げたのだ。妻となるべき女性と我が子を置き去りにし、霧の闇に消滅した。

トマスは6人の女性を妊娠出産させ1人の女性を自殺させた。結婚詐欺で逮捕されなければ7人目は間違いなく生を受けていたことだろう。彼の精神鑑定結果は強迫性障害。罪に問えると判断された。

被害を被った1人の女性の父親は、トマスの異常行動を夜ごとバーで出くわす不特定多数にぶちまけ、トマスの外的特徴を話し、所在を突き止めようとしていた。それが功を奏し、結局トマスは逮捕される。

父親は初めて強迫性障害という病名を聞かされた。バーで出会った見ず知らずの男の口から、その病気の疑いがあると。

自分は欠陥人間だから新たな自分を生み出さねばならない。完璧な分身を作るためにはキミの協力が不可欠だ。娘にしつこく話していたトマスの言葉が鍵となった。父親に病名を告げたその男、運のいいことに精神科医だった。

父親はトマスの精神鑑定結果を聞き大いに納得し、それもまた誰彼構わず詳細に話して回った。守秘義務の壁に阻まれなかったひとつの事例、トマスのエピソード。

ボクが又聞きしたこの話をし終えた時、車座になっていた数名の中から一人の中年男性が憮然と言った。

「嘘だ。作り話だ。そんなことをする奴の話、今まで一度も聞いたことがない。有り得ない。絶対に実話じゃない。絶対に嘘だ」

ボクは尋ねた。「その根拠は?」

何度尋ねても、彼は絶対に嘘だ、でっち上げだの一点張り。そのくせ決して根拠を明かさなかった。当然だと思う。根拠などない。

 

全否定する彼、推定だが、強迫性障害者だ。

 

 

◆写真タイトル / 揺れない揺りかご

 

 

 

★ネコならエッセイ / 当ブログのエッセイ文、写真、イラストの無断掲載、転用を固く禁じます。

空中分解システム(4) / 分解しない強い子

Title : 喜ばせ上手

 

 

イラつく。ウザい。KY消えろ。

分かる!。と皆言う。もはや時代の共有体験、共有体感。市民共鳴。皆が口を揃えて言うからには歴然たる事実。

とはいえ、聞く耳持たない、は、マジ友持たないへと発展進展する恐れあり。犬養毅言うところの、話せば分かる、話しをしよう、では通用しないご時世ではと皆半ば諦め顔か、サジ投げ放題。

しかし、それでもやっぱり、聞く耳持たないは絶対に宜しくない。何故なら、聞く耳持たない、は処世術としては簡単ご使用便利ワザ。

つまり癖になる。癖になってしまったが最後、便利でラクチンだと納得のアナタは自覚なき社会の落伍者。受験戦争だのエリートコースだのといった部分的で短絡的な落伍者ではなく、本当の意味での落伍者だ。だって、大人じゃないでしょ。子供でもない。じゃ何。

ともあれ子供を、聞く耳持たない大人にすることだけは回避したい。

子供は模倣しながら覚えてゆく。大人もそうだが、子供の覚える内容は、これから自分が良質人間になるための模倣。真似。つまりは正しいお手本が前提。大前提。子供の物の考え方がすっかり歪んでしまう前に、是非とも効果的なバックアップをしてあげなければ。

 

子供の前でグルグル、グルグル、空(そらではなくクウ)に人差し指で円を描く。直径20センチほどで、アナタの全身が子供に見える距離。ニコニコ笑いかけながら、

「ほらほら、クルクル、クルクル回ってるよ。来るよ、来るよ、近づいて来るよ、クルクルクルクル回ってるよ。これな何だ?何だろう」

笑うだけの子もいるし、「指っ」「丸」という子達も。

子供の目の奥を覗きながら、ニコニコ顔を絶やさず、上記の言葉を繰り返しながら、ゆっくりゆっくり子供に近づく。目の前に行ったら、尚も上記の言葉を繰り返しながらゆっくりしゃがんで子供と同じ目線になる。その間もずっと指は弧を描き続けている。

「これは〇〇(子供の名前)ちゃんの▽▽(怒りなら具体的な怒りの対象、要求なら要求の対象)だよ~。さっき〇〇ちゃんの中から飛び出したから〇〇ちゃんの中に戻すよ~。クルクルグルグル回ってるよ~。戻してもいいかな~?」

「ダメ!。やだ!」「いいよ」様々なリアクション。

許可しようが断ろうが、最終的には「ハイッ!」と軽やかに手の平で心臓部分を叩くような素振りで素早く撫でる。

「入ったァーッ!」

大げさに嬉しさ一杯の声で盛り上がる。大喜びしながら周りの子に向かって、

「今見てたよね皆!。〇〇ちゃんの▽▽は綺麗に〇〇ちゃんの中に安心して帰っていったよー!」と拍手。〇〇ちゃんの頭をやさしく撫でるか、肩を抱く。

子供の年齢に応じて上記の言い回しレベルを微妙に変える。催眠術ではない。暗示でもない。子供が目撃した1つのパフォーマンスだ。しかもそのパフォーマンスの主人公は紛れもなく自分。賞賛されたという事実。子供の周囲の人間が1人でも多く加われば加わるほど効果がある。それは絶大な効果だ。

鮮烈な印象。鮮烈な体験。自分の怒りが自分の中に大人しくなって戻ってゆく、という感覚。不当な要求が何故か取り下げられ、自分の中にただ普通に戻ってゆくという体験。

絶対に、〇〇ちゃんの怒りはなくなった、とか、要求なんかしたくなくなった、などと言ってはならない。ただソレらは大人しくなってご機嫌で戻った、とだけ伝える。子供は訳が分からず混乱する。良い意味での混乱だ。脳には意味が分からない。しかし、脳は意味よりも主役になったことに酔う。ひたすら酔う。もう一度味わいたいと自身に要求する。このパフォーマンスを子供が何度も経験すると、その子供は必ず他の誰かにそれを行う。模倣が始まるのだ。

 

幼児でさえも、自分をコントロールし始める。その子なりに。そしてこのパフォーマンスは、グルグルする人なしには成り立たない。

 

 

 

 

 

 

 

空中分解システム (15) / サジ加減よりサジ投げて

Title : 紙屑も拡げれば情報のかたまり

 

 

生まれつきだから治せない。

どんな親も子供も関係各位、沈黙させる魔法の語り。

チャールズ・チャップリンはインタビュアーの質問、

「アナタの映画の最高傑作は?」に対しこう答えた。

「次回作」

 

生まれつきだから治せない。これはチャップリンとは真逆のコメント。

確かにそう。生まれつきなら完治は無理。しかし、ワラにもすがる思いで尋ねてくる人々全てにこの魔法の言葉を伝える根拠は何か。

それはもちろん詳細な質疑応答によるカルテの制作。カルテがその証拠を語る。

受診者が未成年者なら尚のこと、保護者はカルテを閲覧出来る。

質疑応答は最低20回、通常50回、1回の質疑応答につき最低2時間。それでは足りないが、物理的に仕方のない面もある。アナタはどれほどの時間と日数を割いてもらいましたか。

釣りをしていて、いつも通り、予測通りにマハゼが200尾ほど釣れた。

驚いたことに幻の魚、ウロハゼが1尾だけ混ざっていることが判明した。

たまたまベテラン釣り師がボクのバケツから飛び出した魚をみて僅かな違いを見逃さなかった。帰宅し即刻図鑑検証。確かにウロハゼ。奇跡中の奇跡だと大いに盛り上がった。

翌月、いつも通り、予測通りにサッパが300尾ほど釣れた。帰宅して1尾ずつ捌くのが重労働。ヒーコラするうちコノシロを発見。この界隈には回遊しないはずのコノシロ。

奇跡中の奇跡はその後、色々な魚種で起こった。奇跡は訂正。

文藝春秋社元編集長、半藤一利氏の言葉、日本が太平洋戦争で敗戦した時、思い知らされた。“ 絶対 ” という言葉は二度と信じない。口にしない。

専門用語を多用せず、シロウトにも分かる言葉に置き換えて話して頂きたい。分かる言葉に置き換えて頂けると、シロウトにも即刻分かりますから。判断出来ますから。色々なことが。例えば、

 

過ぎたるは猶及ばざるがごとし

「は?」「やり過ぎちゃ、かえって良くないって意味だよ」

「何だ!。最初からそう言ってよイジワル」

 

日々の暮らしに忙殺され、夫が妻や子を無視する。そんなつもりはないのだが、疲労困憊で最早力尽きている。妻も同じく。他方、子供は世の中の厳しさを知らない。仕事の過酷さを知らない。

だから激怒する。お父さんは何故、あんなにお母さんにキツく当たるのか、邪険にするのか。お母さんはどうしてお父さんの悪口ばっかりアタシに言うのか。

誰も子供に教えない。何故か。社会の厳しさ、仕事のキツさ、それを子供に話して何になる。

どうにもならない。理解も難しいだろう。何より心配かけたら子供が可哀想だ。

は?。可哀想、とは何か。一度たりとも熟考したことがありませんね。

哀しい想いをすることを許可する。そういう言葉ですよ、よく見てください。哀しい程度で子供は癒えない傷を負ったりはしない。

哀しみを幾度も経験し、将来襲う本物の悲しみに折れないための免疫力、抵抗力を養う。これが筋。お父さんお母さんの言うカワイソウ、は子供が哀しい想いをすることを許可しない、という意味です。

もしそれを続ければ、子供は傷つくことを異常に怖れ、やがては初恋の失恋さえ拒絶する子に育ってしまう。いともたやすくポッキリ折れる子に。

作家で天台宗僧侶でもあった今東光かく語りき。

社会に出たら三年間は文句をひとことも言わず、我慢して一生懸命働きなさい。三年経ったら話を聞こう。それが社会に対する恩返し、礼儀だよ。

「恩なんて受けてねーし。第一、入社したばっかで名前も全然覚えてねーし。何で恩あるかね、有り得ねーでしょ」

 

会社に入社させてくれたでしょ。

 

「は?。こっちの実力でしょ。意味不明。向こうが欲しくて採ってんでしょ。青田買いまでして、来てくださいお願いしますって言われたんだけど。向こうがこっちに恩ありでしょ。入ってあげたんだから」

確かに。鋭い!。一理ある。

社会的制裁という言葉をご存知かな。姿のない人々の無言の制裁という意味です。規模?。日本中の有権者総数って感じですかねえ。いつ?。どういうやり方?。

今に分かります。と言いたいけど、君は一理あること言うから、ないかもね。社会的制裁なんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

空中分解システム(8) / 反響しない叫び

Title : エヘン虫は喉で反響する

 

 

日常生活の中に於いて内でも外でも、もともと日本人はスキンシップを人前で執ることを良しとしない文化を持つ。

ハグなどしない。キスもしない。

握手でさえ限定されることが多い。これ迄はそれで良かったし特に問題は生じなかった。

お母さんの背中にオンブ紐で括り(くくり)つけられたり、幼い時分から仲間同士で取っ組み合ってジャレ遊んだり、相撲に興じたりと、それでもまだ子供時代にスキンシップの機会は多々あった。

ひとり遊びがむずかしく、子供達の遊びと言えば、それは誰か相手の顔が浮かぶことを指していたのである。

 

高度成長期、大量の漫画本が量産され始め、それは瞬く間に子供達を席巻し、大人達の抗議は出版社に殺到した。

子供に悪影響を及ぶす、という趣旨が大半を占めていた。その社会現象に対し、良いかどうかここで論じることはナンセンス。

とどのつまり、子供達は1人で遊ぶことが可能であることを認識したのだ。

やがてマイホームブームが到来し、共働きの親の元、“  鍵っ子 ”  が量産される。

子供の寂しさを紛らわす手段の一つとして漫画は格好の材料。親たちの出版社に対する抗議は沈黙した。かたや子供達も自身の淋しさと折り合いをつけることに成功した。スキンシップを捨てても良い、と。

勤勉で統率のとれた日本人の底力は凄まじいものだった。エコノミック・アニマルと海外から皮肉を言われる程に凄まじかった。

 

日本は経済大国への道をひた走った。諸外国が決してマネ出来ないほどの好景気が持続に持続を重ねた。

Japan as NO1と言われるようになり、未曽有のいざなぎ景気は企業戦士達を巻き込みながら、やがて悲劇のバブル崩壊へと突き進んでゆく。

リーマン・ショックと何ら変わらない破滅への切符。それは誰にも破ることの出来ないチケットだった。

札束で他人の横っ面を引っぱたく行為に沸いたバブル期。卓球選手は根暗(ねくら)だと嘲笑され、バカ騒ぎのパーティーに水を差す根暗は追放の憂き目に遭った。近年の福原愛ブームなど到底有り得ない現象だったのだ。

生真面目で笛吹けど踊らない者達はことごとく根暗というレッテルを張られ疎(うと)んじられた。

そんな世相が精神病や心身症の者達をどう扱うだろう。

敗者は地下深く埋没した。潜行したのではない。ただ沈んでいったのである。

つまり、誰も精神病を話題にしない、口にしない社会的通念が屈強なまでに完成した。

誰もそのような職業には従事したがらず、その世界の人材は確保がむずかしくなっていったが誰も気に留めなかった。というより、関係者以外、誰も心の病に苦しむ人々の存在を全く思いつかないまでになっていたのである。

やがてコンピューター革命が起こり、人々はTV、ラジオ、新聞、雑誌以外から情報を入手出来るようになった。

マスコミから一方的にセレクトされた情報を受動するのではなく、情報の選択権を得たのである。

人々はネットに侵入し驚愕した。凄まじい事実がそこには在ったからだ。おびただしい事実が。情報が。

心の病に苦しむ人々や子供の行く末を考えない社会は、今なお幻想をひたすら追い求め続けている。

失われた経済大国への復権。国が栄え豊かになる事に異論がある国民は居ない。だが、国体を維持する、とは何か。

国の将来とは何か。弱者は国体ではない。弱者に国や将来は到底託せない。では誰になら託せるのか。

個人の尊厳を持たず、使い捨てされることに感謝の涙を流し、壊れかけた人の中にかつての自分の幼少時代を重ね合わせ、見ろ、オレはどん底から這い上がった!。オレは勝者になる!。オレ達が国の将来を決めるのだ!。そういう人達に託されるのだ。

 

 

今、人々は首を傾げ始めている。

 

 

 

 

 

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空中分解システム(6) / 脳機能を逆手に取れ

Title : 私の脳は氷山の一角

 

 

 

後ろ手に縛り上げられ処刑場に引きずり出された男。眼前の殿様に向かい憎悪の伝達。

「この恨みはらさずにおらりょうか。死して後、必ず呪い殺しに戻ってまいる」

家臣達は罪人の形相と声に震え上がる。顔色ひとつ変えない殿様は平然と言ってのけた。

「お前の首をはねた直後、お前の眼前の飛び石に噛みついて見せよ。その通りになったらお前のいう事を信じてやろう」

男は頷き、即刻首をはねられる。宙に躍った生首、カッと口を開け石に食らいついた。それを見た家臣たちは総毛立ち、

「殿!、コヤツの言ったことは事実ではありませぬか!」

「安心いたせ。人は死ぬ直前の一念のみ、死してのち果たすことが出来るのだ。コヤツは石にかじりつく一心のみで命を落とした。もはやコヤツの想いは遂げられた。安心せい、もう何も起こらぬ」

 

この逸話は的を射ている。自殺した人間が死後の世界、最も苦しい心持で命を絶ったがために、永遠にその最大級の苦痛を抱えたまま彷徨い歩くのに等しい。戦慄のストップモーションと呼ばれるこれこそが地獄の正体だ。地獄という場所はない。それは各々自身の中に在る。

自身の髪の毛、すなわち自分自身の一部を紙屑に内包したものを溜めこみ始めたA。それは日増しに溜まってゆく。100個ほど溜まった段階から隠し所有ではなく自室に飾る。目に見えるところに並べる。理路整然と。あたかもステイタスな置物コレクションの様に。棚の上でもガラス戸中でも、机の上でも、とにかく目につく場所に陳列する。

「お父さん、これ何ぁに」「何なのよコレ」

どう返答しても良いが、部屋中にばらまき子供を誘って部屋中手当たり次第にサーッカーボールよろしくデタラメに蹴り回す。妻にも参加してもらえるのであれば理想的だ。妻が拒絶するなら紙屑を全部捨ててくれと頼む。捨てられてしまったら拾いに行き、全部回収して再び部屋に陳列する。

陳列するから視界に入る。ただそれだけではいけない。暇つぶしに、ランダムに手に取って広げ読む。声に出して読む。

これはD課長に対する怒りか。さっきのもそうだったな。多い。D課長に関する紙屑は机の上に集めることにしよう。妻への苦情はアソコの棚の上。そうしてゆけば、自分が最も苦痛に感じる事柄がハッキリと見えてくる。そんなものは紙屑にしなくても自覚している、とA。確かに。自覚出来ているなら通常の人々だ。それすら分からなくなり始めたら警告サインと見なす。

脳に見せる。両目は脳の一部。一人で沢山の紙屑を蹴散らして遊ぶ。それを脳に見せる。どんな思いで蹴散らしても良い。自虐的に笑いながらでも、泣きながらでも、罵倒しながらでも良い。

これが一念。これが、脳が囚われてしまう苦痛の種の目撃。蹴散らされる自身の苦痛の数々。紙屑が溜まれば溜まる程、Aの苦痛は自身の中になく、部屋中に散乱している。つまり外に在る。

子供と一緒に紙屑文を嘲笑しながら朗読しよう。笑い飛ばそう。妻とでもいいし誰とでもいい。人に知られたくなければ自分1人でも良い。

誘っても家人が一緒に1度たりとも読んでくれないのであれば、Aは気づく。全ては家族の幸せのため?。勘違いだ。思い違いだ。

いまこそ発想転換の時。脳は勘違いを始めている。チャンスだ。紙屑が増えれば増えるほど脳は錯覚する。

 

体内に悩みの種、ない?。