Title: 友達の中でひとりホッカムリ
流石に、高校時代の親友3人からの誘いは断れない。
過酷なダイエット中であろうとも、だ。
市外の片田舎から快速バスで1時間半、約2ヶ月ぶりに
懐かしき市内中心地へ降り立つ。
待ち合わせ場所は、ジャズ喫茶サテンドール。
ここは大学生達の隠れ家的な溜まり場として知られ、
雑居ビル地下の空間は
自由文化論語るヤカラのルツボ、タコツボ、指圧ツボ、
極めて暗い照明に浮かび上がる
レンガ壁の赤が目に染み入る場所であった。
高校生のボクらは度々ここに入り浸り、
オトナな会話を得意げに盗み聴きしては悦に入っていたのだが…。
今、想い出深き店の片隅に再び座し、馴染みのダチと差し向かう。
ついこないだと、ちっとも変わらぬこの空気感。
マンネリとも呼べるし、お気に入り登録とも呼べる。
ボクらの間で変わったことと言えば唯ひとつ、
高校生ではなく揃って浪人生だということ。
仲間は各々サンドイッチを頼み、
食い意地張ったボクが何も食べモンを注文しない
ことに意外そうな表情を見せるが、
それ以上は何も聞こうとはしなかった。
人間は自分が不服とする状況が継続すると口数が減る。
というボクの持論は如何 ( いかが )なものか。
それはともかく、彼らのホッペタがモグモグ動いている光景
に奇妙な不思議さを感じる。
何をしているんだろう?
とさえ率直に思えてしまう。
何をって食事に決まっているのだが。
ボクが夢見るように眺めているので、友達が
「お前も食う?」と尋ねてくれる。
「今、チョー満腹。家で焼きソバ、ガッツリ食ってきたから(笑)」
とうそぶく。