雑断力 / スムーズな会話力

Title : 身の丈、背丈

 

 

油 (アブラー)「私の身の上話、聞いてくれるかなー」

亜油 (アユ)身の上だよねー。ちゅうことはお肌の話?。英語でゆーとスキンケア・ト。いいよ、お薦めのローションとかアンでしょ?」

「してもいいんだけど、アそれもう古ッ、とか言われると傷ついて立ち直れなくなるからヘタに人とは話したくないよ、そんなお肌の話なんて思いッきり情報関係の話じゃないですかぁ」

亜油「ア、そーそー。どんだけ新しくすりゃ気が済むんだよって話。一新腐乱だよね。一つ新しくなったと思ったら既に腐乱」

「だよね、ダヨネー。今年はその傾向もっと強くなんだってよ。いぬどしだけに腐乱ダンスの戌っちゅー話なんだってサ。今年も茶番な一年になりそうだよ」

亜油「それが分かっててどーゆー心掛けしよーかなって考えたら何も浮かばん。ひざ掛けなら掛けるモン分かるけど、心に何掛けろって話だよ」

「シールドじゃない?。二重パスワード掛けんだよ」

亜油「煮汁パスワード?。良く分かんないけど、絶対本心悟られたらアウトだよね、それだけは言えてる。無理心中に務めてるね日々。アタシの心を覗くのは誰でも無理。自信あんね」

「心よりやっぱルックスで勝負。こないだセクシーな服着てカレシに会ったら思いっきし感服したって言われた。露出度高い服だけで男はマッハ感服、感全服従」

亜油「ソレやりすぎるとヤバイよ。欲情が先か情欲が先に来るかケースバイケースだけど、その気にさせたくない奴には絶対見せんなって話でしょ」

「こないだカレシんちで初めて夜明けのコーヒー飲んだけど、それってさわやかなはずジャン。外がシラジラしてきた頃ジャン。なんでシラジラシイなんて言う権利あんのよって話。バカにしてんの?。だよねー。思いっきし、だよねー」

亜油「人のこと攻撃し過ぎなんだよー。アタシなんか、こないだ友達に寝癖ついてるよって会ったらすぐ言われた。寝る癖がついたらサ、いけないわけ?。夜通し遊んでんのが若いと思ってんだ、タク…」

「そんなヤツまともに相手しなきゃいいんだって。ムキになって相手してる子もいるけど、何?、あくなき戦い?。嘘つけ、料理もしないヤツが何でゴボウのアク抜き出来んだよ。あれ大変なんだよ主婦的にはー」

亜油「うちは料理しない。ゴハンにフリカケが多い」

「うちと逆かー。うちは絶対毎日まかない料理。ゴハンには何も振りかけないし、まかない」

亜油「人それぞれでいいジャン。自分の身の丈にあった生活してりゃいいんだよ。他人とか関係ない」

背丈にあった生活?。天井低いの?」

亜油「あははは笑えるー。身の丈って身長って意味だよ。背丈は背中の長さ」

「アそっか。体重が先か重体が先か、いわゆるコロンブスの卵?。何だろ」

 

自分探しをやめたカモ

Title : 車を運転するカモ

 

 

カモは家路に向かう車を運転しながら物思いにふけっている。先ほどまで彼は渡り鳥達に大人気の湖畔スポットに居た。

アシの繁みには白鳥が8羽ほど、他種はマガモである自分だけだった。

彼は茶褐色の羽毛をやたらと白鳥達に褒め上げられ、最初はからかわれているのではないかといぶかしんだが、どうやら本当のようだと確信すると妙に落ち着かない心持ちになってしまったのだった。

「妙に暗い顔だね、自分が褒められたのに。もっと愉快そうな顔をしなよ」とカモに比較的年齢の近い白鳥が声をかけた。

「いやなに、醜いアヒルの子の話を思い出しちゃってさ。白鳥の子がアヒルの群れに紛れ込んで、お前は自分達とは違うって上から目線されちゃう話をさ」

「ああ、そういう話は世界中どこにだってあるね。勘違いからくる仲間外れ。でも今は勘違いされてなくても仲間外れされるよね」

「そうそう。だから初対面の君達に誉められるとついつい疑っちゃうんだよね。からかわれてるんじゃないかってさ」

「う~ん、そうね。分かる。ボクらがどうして君を手放しで誉めたか分かる?」

「分かんない。どうして?」

「褒められると警戒するでしょ?。現にキミはそうなった。素直に喜べない。そんなキミのリアクションからキミは次のような事柄を考えずにはおれなくなると思われるんだよね。

1⃣ 何か裏があるのではないかと警戒するため神経が研ぎ澄まされる。

2⃣ 自宅の居間で昨日より鏡を見る回数が増える。知り合いにさりげなく自分の容姿について質問する回数も増える。

3⃣ ボク達白鳥のこと、今日のこのひとときを印象深く思い出す。

というわけで、馬鹿にされるより随分と自分探しの手助けになるってわけだよ」

「ほう?。つまり世間で自分探しを続ける人々は褒められたことが少ないって、キミはそう言いたいわけ?」

「そういうこと」

「じゃ、褒められることが多い人ほど自分の事を分かっている人だということ?」

「そうそう、そういうこと。自分探しの真意はね、褒められる要素を自分の中に探す行為なんだ。

探すんじゃなくて、それは自分で作るんだよ。

その方がずっとずっと簡単な行為なんだ」

 

謹慎処分は妥当か / すたれるコトワザ

Title : どうして地の球が地球なの?。惑星が球なら、どうして星は円形絵文字じゃないの?。

 

 

ニッケル良く読む誌は本日3日、生徒への不適切発言により謹慎処分6か月を受けていた相模原熱紙(さがみはらあつし、34才、丸干第二高等学校国語教諭)が教壇に復帰したと報じた。

相模原は授業中、「雨降って地固まる」とコトワザを引用したところ、生徒の中島広大君が「先生、いまは雨降って土砂災害の時代です」と発言。

「さすがは中島、頭がキレるな」

この相模原の言葉が問題となった。中島君の毛髪は硬く、それを担任教師がペーパーナイフ代わりにも出来る、といった意味合いで頭が切れると発言したのは明らかだと、事情を聴いた両親が教育委員会に抗議を申し入れた、というのがコトのいきさつ。

 

「今日、こうして再び皆と勉学に励むことが出来て先生は嬉しい。そこで今日は正しいコトワザについて皆と勉強してみたいと思う。中島、お手柔らかにな(笑)」

「先生、ボクの手を柔らかくしろと言うんですか。髪が硬いと失言したので、今度は柔らかく、ですか」

「違う違う(笑)。……では誰か、チョット変だなと思うコトワザがあったら教えてくれ。…オッ、早いな上島」

「ミイラとりがミイラになる。これ絶対おかしい」

「どうしてだ」

「日本から遠く離れたエジプトですよ。ミイラといえば。ミイラが略奪されている事実を、ほとんどの日本人が知ってることが前提のコトワザですよね、これって。日本人なんだから、ミイラより、干物とりが干物になる、のほうが絶対分かり易いと思う」

「ああそうかぁ~。そうだなぁ~。…確かに。アブ、ハチ取らず、なんていうのもあるが、これだって、アブはハチを食べる、という知識がないと意味合いが通じないコトワザだしな。…特殊な知識を皆が知っている前提でコトワザを作っているのはおかしいと先生も思う。…オ!下島も何かあるのか」

「磯カバ回れって、何でカバが回るんですかね。意味不明なんですけど」

「磯カバじゃなくて、急がば、だ下島。急がば、だ。磯にカバなんていやしないんだ。カバは淡水にいるんだ」

「へぇ。…だとしても、何で回んですかね。猿、回れ、なら分かるけど。猿回しなら日本人は皆知ってますからねー」

「遠回り、の回るだ。回転のことを言ってるんじゃないんだ」

「回り道のことですか。これもおかしい。わざわざ距離伸ばしたルートだとしても、カーブとは限らないじゃないですかー。直線道路は選べないってこと?」

「違うんだそれも。その考え方も根本的に違うんだよ。塗れ手に泡は石鹸のことじゃないし、泣きベソは泣きボクロのあるデベソのことでもないんだ。どうして分かってくれない?。えッ?。」

「だって、英国ってイングランドのことじゃないですか。UKって英国のことですよねー。何ですかイギリスって。どっから出てきたんですかイギリスって言葉。TVのスポ番観てたってイングランドって表記出てるじゃないですかー」と島中敦子。

「ガイコツの頭が何でドクロなのか分かりません。シャレコウベはガイコツの頭?。何?、ドクロとシャレコウベの違いって?。シャレコウベ……神戸がオシャレだってこと?」

「島上、島上ッ!もういい、やめろ。お前達が言ってるのはコトワザじゃない。全く違う話だ」

 

確かに違う話。しかしこのように教育現場から日々上がる悲鳴は、今後も不適切発言のオンパレードを示唆していると言わざるをえない。

 

岩猿を得ない ⇒ 岩猿狙いの猟師が、仕留められず手ぶらで帰ること。猿は岩山に居るものだ、という例え。

セロトニン不足とストレス / 睡眠と日光浴を

 

 

 

「ひとつ聞いてもいいかな」

アンニュイな雰囲気漂わせ、右目にしなだれかかる前髪を掻き上げながらソファから立ち上がる蚊納(かな)。薄暗いリヴィングの窓際まで流れるように進み、ソッとカーテン越し、ビル群に目を落とす彼女。その蒼白い横顔に街の灯が反射して、その頬は深海の人魚さながら。

「何?」

そう呟いて、やっぱりオレはこの女が好きなんだなあと、自身の本音を感じ、少し戸惑った自分を愛おしく感じながら囁く金鳥(かなと)。

「ワタシの親友ね…ストレスで今かなり参ってて…。最近ドカ食いが止まらないんだって…。心配だわ…。最後に太るのが顔だって言うじゃない?。彼女、それが始まっちゃって……」

「ストレスの代償行為だね……。丈夫な胃をしてるんだろうけど、長引くと良くないね。生活習慣病になっちゃってるのかな。外あんまり出ないんじゃない?」

「うん。デスクワークでしょ。残業多いから帰りは深夜だし…」

「休みは寝てるのかな」

「そうみたい…。寝貯めしてるって…」

「うん。寝だめってね、ホントに有効なんだよ。一日徹夜したとするでしょ?。一週間は7だからね、一日6時間の睡眠を取ったことにしたければ、休みの日1日だけ12時間睡眠を取ればそうなるじゃない。睡眠は帳尻合わせが出来るんだよ。1週間おきに計算して分配すれば過労にならなくてすむんだ。つまり、精神的に追い込まれる可能性が低くなるってこと。だから彼女、正しいんじゃない?」

「ふ。流石はお医者様。…の卵…。でもね、私だってストレス溜まってるけどドカ食いしなくても大丈夫。どうしてかしら?」

「セロトニンが失われてないんじゃないかな」

「セロリとニンニクが失われてない?、何言ってるの金鳥(かねと)。私どっちも得意じゃないって知ってるはずよ。食べてなんかいない」

ふッ。聞き間違えてムキになって怒る顔も可愛い…。やっぱりオレはこの女に惚れてるんだな…、と自分の気持ちを改めて噛みしめる。

「セロトニンだ。脳内にあるセ・ロ・ト・ニ・ン。それが不足するとね、健康面に問題が出…

「私が聞き間違えたことがそんなに面白いッ?!。ニヤニヤしちゃって何様なのよッ!、不愉快だわ私帰るッ」

たった30分前まで彼女は隣に居た…。彼女は人間に追われて薄暗がりを横切る蚊のようにプゥ~ンと飛んでいってしまった。つまりオレの腕をすり抜けて行ってしまったんだ……。

 

アレ?、………オレ、大して彼女のこと好きじゃないかも

 

 

◆写真タイトル / 彼女の分まで食べてしまえ!