亀の恩返し / 裏島太郎伝説 (後編)

Title : ビューチフル乙姫様

 

 

 

竜宮城は余りにも地味な海底城だった。

 

「いわゆる色がねえんだち。そりゃそうでよ。この城で

人間様の恰好してんのは乙姫(おつき)様だけって話よ。

高貴なお方はペンキなんぞ塗らんでよ」と、亀。

 

「そうなんかい。しかし…残念だ。あんなに良い歌なのに何故……なぜに

乙姫様は気に入らなかったのだろう…。解せない…」と、いぶかしげな太郎。

 

「ア、それオレ知ってる。さっき乙姫様の従者に聞いた。あんなァ、

歌を歌う途中途中でお前が息継ぎするだろ。……コラ、裏島、聞けッ!

お前の話をしてんだろうがよッ!」突如キレるカニ。

 

「聞いてるよぅ~。ちいっと向こうの昆布をチラ見しただけでや」

 

「チッ !! ……。聞け!。よぉく。……息継ぎの時にな、

お前の鼻の孔が膨らむ角度が気に入らねえってよ。なんか

ブラックホールみてえだって。分かるかァ?このシリアスな

……なんかこう………。分かったか !!」とさらにブチ切れるカニ。

 

「うん、分かった。自分の見聞きしたことをよぅー、臨場感一杯に表現して

歌で聞かせちゃあーのによぅ!。やっぱ、歌詞が高尚過ぎたのかねぇ!」

 

「そうなの?」と、急に安らいだ顔になるカニ。

 

カニの話を黙って聞いていた亀は、全身が総毛だった!。

( 注 : 海亀の甲羅に繁茂しているコケを漁師が毛と勘違いすることがある。

ウッキーペディア)。

 

「だとすれば裏、お前は一刻も早く此処を立ち去らねばならん!。

お前は此処の存在を知ってしまった。乙姫様は用無しの人間を

此処に置くほど愚かではない。すぐにも刺客がやって来るぞ!」と亀。

 

「じゃ帰るっち。カニよ、またブクブクッてしてやりんな。行こ行こ」

 

「まあ待て裏。無事オカに帰っても、刺客がお前の家までやって来る。

そうだ、良いものをやろう。待ってろ」

 

亀は土間の冷蔵庫へ向かう。慌ててカニがそれを追い

冷蔵庫を一緒に覗き込んでいたが、亀だけが玉手箱を手に戻ってきた。

 

「カニは冷蔵庫の前で何を食ってんじゃろか」と太郎。

 

「トコロテンだ。……コラッ!カニッ!、冷蔵庫のドアちゃんと閉めろ!

…いいか裏、浜に着いたらすぐに玉手箱を開けろ。煙が出るから

顔全体に煙を浴びるんだぞ。そうすればお前は即刻オジイチャンになる。

その時いいか、上手いもんが玉手箱の底にあるぞ、とカニに言うんだ。

アイツはすぐ覗き込むから、その時、カニの後頭部を叩いて

玉手箱の底にアイツの顔を打ち付けろ。どうだ、出来るか」

 

「どういう意味かサッパシだなし。そうすっと、ドんぎゃなるんね」

 

「蟹もオジイチャンになるんだ。アイツも刺客に狙われるだろうから

顔を変える方がいい」

 

「カニも年取ると顔変わるんけ!」

「変わらない。あくまでもアイツの気分の問題だろう」

 

亀の指示通り、裏島太郎はその通りに実行した。確かに

紅顔の美少年はたちまち老人と化したが、

家族を始め村人のことごとくが、即座に彼を裏島だと承知した。

カニの素性は誰にも分からなかったものの、

カニは太郎の家で泡盛の味を覚え、村一番の酒豪になった。

裏島は一気に年老いたが、とうとう刺客など全く現れもしなかった。

亀の作り話で、おとぎ話の上っ面だけをなぞった帳尻合わせだった。

何が何でも玉手箱から煙が出る、というエンディングに固執しただけ。

 

ところで、太郎が老人と化したのは顔だけ。他は青年のまま。すなわち、

老人が清らかなボーイ・ソプラノで歌いながら浜辺をスキップする。

その噂はたちまち全世界を駆け巡り、

太郎の村は一大観光村で栄えたという。

 

完。

 

 

金運上昇の秘訣 / ヘビの抜け殻 / 貯金箱はカラ

Title : 人生はヘビィ~ (花蛇風月)

 

 

敗者を指す言葉、

“ 手も足も出ないだろう!”。

 

たしなめるのに使われる言葉 、

” 鵜呑み丸飲みにしてはいけない “。

 

こうも言う、

“ 体に毒よ ”。

 

諦め口調で呟かれるのが、

“ 長い物には巻かれろ ”。

 

“ 冷え性はツライ。 ヘビみたく動けなくなっちゃう ”。

 

これら全てに該当するヘビ。マイナス要素を踏まえた上で

 

“ ヘビは金運を呼び込む ”。

 

絶体絶命のマイナスイメージなのに、プラスイメージへの反転は何ゆえ?。

打たれ強いと視るか。デマ、迷信とみるか。

私の場合、ヘビの抜け殻を財布に入れていた時、

気のせいではなく、確かに金運が上昇した経験がある。

アオダイショウの物だった。

 

やはり貯金箱はカラ、より蛇の抜け殻だろう。

セミの抜け殻、これはいらん。