雨 / 毬と子犬 / 行っちゃダメ!

Title : 雨あがりに消えた鳴き声

 

 

★ 毬咲。まりさ。このエピソードの主人公。

 

日曜昼下がり、都会の雑踏ただ中。憂鬱な雨の中、

傘と共に二の腕の肌寒さも畳もう ( たたもう ) と、

足早に百貨店を目指す毬咲、ふと目を落とした

信号待ちの断裂傘群の隙間、

ひょろけたムク犬の姿に胸を突かれる。

 

ココア色の体色に真っ黒な鼻回り、

びしょ濡れで露呈した貧相な肉付き。

近寄って屈み、子犬を抱き上げようとして

左耳の上を誰かの傘骨先でこすってしまう。

軽い痛みを黒髪で流し投げ、素早くしゃがみ

子犬をトレンチコートの下に覆い隠す。

 

意外なことに、きゃしゃな子犬は彼女の眼下、

コートシェルターから飛び出す様に

よろよろと真逆方向へ小走り。

数人の脚で軽く蹴られながらも、足を止めようとはしない。

 

蒼ざめた毬咲は、素早く数メートル人林を潜り抜け、

再び子犬を貝襲うタコの要領で手中に収め、唇を強く噛む。

 

さっきと真逆側の信号が変わり、

向こう岸とこちら岸の入れ替わりが始まる直前、

毬咲は立ち上がろうとした刹那、

彼女だけは決して見てはならない光景を目の当たりにする。

 

彼女が交際を始めるかもしれない予感を持ちえた男性が、

恋人らしき女性と毬咲の前を横切る。

幸せそうな2人。子犬が2人を見せたといってもいい。

 

犬持ち込み厳禁のマンション一室に戻った毬咲は

子犬にドライヤーを当てた後、暑いシャワーを浴びながら

先ほど目撃した光景をフラッシュバックさせてみる。

バスタオルを使いながら置時計を右斜め見。

親友の麻子が食事に来るまであと30分もない。

続いて左見。キッチンの隅、冷蔵庫の横、隠れているつもりか

上目遣いに毬咲をジッと見上げ続けているムクちゃん。

 

ヘッヘッヘッ…、

ちっちゃな濃いピンクのベロが愛らしい。

 

「何食べる?。ミルクもあるんだよ」

 

そう話しかけ、冷蔵庫の取っ手を掴んだ時チャイムが鳴った。

 

“ おお、来た来た!、ちょっと早いけど ”

 

スリッパ引きながらドアへ歩み寄る毬咲より早く、

ムクが彼女とドアの間に挟み入り、クルッと彼女に向き直ると、

左右前足で切なげに宙をかき始めた。

 

「なあに?」

 

ア・ケ・ナ・イ・デ

 

そう懇願しているように見えた。不思議なことに。

 

毬咲はドアの前で気配を消したまま、ジッとムクを見下ろし続けている。

その間チャイムは3度鳴り、やがて再びの静寂が訪れる。

ムクの動作が同時に止ん だ。

 

毬咲はスリッパを脱ぎ、足音を消して窓際へ。

カーテン越し、信号機ライトや窓灯りをにじみ映している

イルミネーション道路を見下ろす。

 

麻子の車がない。代わりに数メートル離れた所に止めてある

ジャガーに乗り込もうとする彼の姿が視界に。

何しに来たのかしら、さっきの彼女はどうしたのかしら。

 

バカな私ッ。

 

発作的にトレンチコート引っ掛け、

目にも止まらぬ速さで廊下に裸足で飛び出す毬咲。

背後でキャンキャン聞こえるその鳴き声は悲痛!、

 

イッチャダメ!

 

エレベーターが閉まり、鳴き声が遮断された。

 

降りしきる雨に濡れそぼる2人が、もつれる様に抱き合いながら

部屋へ戻ってきた。もう毬咲の頭の中は

親友をどう追い返すかで一杯。

ムクの姿がないことには気付きもしなかった。

 

数か月の交際。結婚のプロポーズを待つ彼女に、彼は別のことを囁いた。

彼はAV業界の人間だった。

 

その翌月、毬咲は母の墓参りに帰省。何となく故郷に戻りたかった。

実家隣のおばさん宅でお茶を飲んでいると、

 

「そうそう、お母さんの写真、1枚あるから持っていきなさいよ」

 

手に取り覗きこむと、母が見覚えのあるムク犬を抱いている。

 

「この犬は?」

 

「ああ、入院する少し前に、見かけた捨て犬がかわいそうって、

連れて帰ってきたのよ、ザンザ振りの中、

びしょ濡れで可哀そうだったって」

 

 

 

 

 

 

 

金太郎伝説 / もうひとつの隠れ秘話 / 改名への手順とは

Title : 勝利のおまじない

つい最近、つい最近、出がらし山のふもとに

金太郎という元気な男の子が

乳母と一緒に暮らしていました。

金太郎は山の仲間達、猿や猪、鹿、熊などと共に毎日全力で遊び回り、

同時に乳母の仕事の助けもしっかり努め、

畑仕事、土間のオオガメの水汲み、絹織のために育てているカイコ達の眼に、

時々懐中電灯の光を当ててまぶしがらせたりすること

も怠らなかったので、乳母には大層重宝され可愛いがられていた。

空澄み渡る五月のある日、仲良しの月の輪グマが

金太郎のところにやってきて、

「金太郎。お前もそろそろ十歳だな。随分立派になったもんだ。

そろそろ男らしい身体造りでも始めたらどうだ。

これから毎日オレ達と相撲を執って

鋼の身体に鍛え上げないか」

「それは良い考えだ月の輪。やろう、やろう、今すぐやろう!」

クマと金太郎が相撲を執る!。たちまち土に書いた土俵線周りには

山の仲間が押すな押すな。ガンバレ!、負けるなよ!、の大騒ぎ。

なんせ、金太郎は山里一の人気者。気はやさしくて力持ち!。

はっけよい、はっけよい!。

サア、ガップリ四つに組んだぞ!さてどうなるか!

と皆が興奮大声援、と同時に

金太郎はアッケなくゴロン。

「どんまいどんまい、金太郎!。まだ小手調べ、ほらほら、

もう1番いっちょ行こう!」と月の輪。

「あたぼうだい!」

ゴロン。ゴロゴロン!。ゴロゴロゴロッ!。

その繰り返しで、金太郎はアッと言う間に0勝37敗。

その日から山の仲間達は、金太郎のことを

銀太郎

と呼ぶようになった。

夜。乳母の差し出すヤマメの塩焼きに手を伸ばしながら銀太郎、

「バッチャン、心配には及ばないさ。いきなりクマとヤったのが無茶だった。

明日は子馬とやる。だから安心して!。また名前が金太郎に戻るから!」

「そうかい?……。ならいいけどねえ…」

翌日、銀太郎は子馬に完敗。0勝28敗。

その日から銀太郎は、山の仲間達から

銅太郎

と呼ばれるようになった。

「銅太郎、もう明日は決してお相撲なんか執っちゃいけないよ!。

明日も負けたらアトがないんだから。ここでやめておけば、

まだしも対面は保てるだろ、ね、もうおやめよ、後生だよ」

「はっはっはっは!、大丈夫なんだよバッチャン、明日はねえ、

猿の奴と執るんだ。アイツはボクより小柄だし、

間違っても負けるわけはないから安心してよ!」

銅太郎の屈託のない笑顔はブザマにも土にまみれた。猿を相手に0勝16敗。

「もうやめなよ銅太郎、オレなんか心苦しいよ。

いとも簡単に転がるお前の姿もう見たくないよ。ここで打ち止め!」

とおろおろ顔の猿。

「何を馬鹿な!、あと一番ッ!」

その日から銅太郎は、山の仲間達に

ニッケル太郎

と呼ばれるようになった。以降、懲りずにというか、躍起になってというか、

ムキになってというか…。

対小鹿戦 0勝21敗。翌日から

アルミニウム太郎。

対ウリンボ(猪の幼児) 0勝6敗。翌日から

プラスチック太郎。

対ムク犬戦 0勝4敗。翌日から

ダンボール太郎。

対リス線 0勝3敗1引き分け。翌日から

紙太郎。

対野鯉戦 0勝56敗。翌日から

太郎。

乳母の企て通り、誰に疑われることもなく金太郎は、

自然な形で改名に成功した。

あるカウンセラーのカルテ / 会話がない世界で / 人をすくい上げる話

Title : 待合室に置き忘れられていた仮面

 

 

 

「最近は、昔に比べて話をしてる人が少なくなりましたね先生。

街でも電車の中でも…。華やいだ声なんて滅多に聞きません。

コロナになる前から…。一体どうしてしまったのでしょう」

 

「それがアナタの、当面の悩みですか」

 

「そういう訳ではありません……。ありませんが、気になる事だけは確かですね。

“ 人のふり見て我がふり直せ ” という有名なコトワザから推察しますに、

皆さん、周りが全員喋れないふりをしているので

真似て喋らないのでしょうか。

それが次第に連鎖拡大しているという様にも感じられてしまうのですが…」

 

「アナタも職場などで、皆さんに倣って ( ならって ) いるのですか」

 

「いいえ。私は “ 無い袖はふれない ” タイプですから、

ふりは出来ません。従えない性分です。

振るのもふりをするのも私にとっては同じこと。

揺れていて自分が安定出来ないのですから。

ゆえに浮いてしまい行き詰ってしまうのです。

ですから、今ここで先生とお話をする状況になってしまったのです」

 

「人間がすくうのは、祭りの金魚すくいやドジョウすくいだけではありません。

人間を救うことも出来ます。私はそれを信じてカウンセリングを行っています。

一見違うように思えるかもしれませんが、

すくい上げるのと救うことは、大して変わらないのですよ。

火事現場から人を救出する消防隊員だって、人を抱き上げて戻ってきたりするでしょう。

すくい上げる形に似ています。

ハンモックでくつろいでいる人も、

抱きかかえられているような体形をしているでしょう。

救出というのは結局、すくい上げるということなのです。

極めてシンプルな行為なのですね」

 

「そうでしょうか。その状況次第でで変わるように思えますが。

常に人をすくい上げて救出するというのはチョット…。

無理があるような気がします」

 

「お母さんが赤ちゃんを抱っこするでしょう。

あの行為、実は赤ちゃんをすくい上げているんですよ。

赤ちゃんを救出している最中の行為なんですよ」

 

「初耳です。全く理解が出来ません」

 

「金魚すくいでは、乱暴に金魚をすくい上げることは、絶対に出来ません。

薄紙がいともたやすく破れてしまいます。

何匹も次々にすくい上げるチャンピオンは

金魚すくいアミの丸縁に金魚の体重を乗せて、

ほとんど紙を水で濡らさないのです」

 

「それが、一体何だというのでしょうか」

 

「水が周囲の人。薄く弱い紙がアナタ。

紙が張られた〇骨がアナタの愛です」

 

「私の愛?」

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刻々と変わるパスワード / 桃多郎伝説 / ハッキングされないように

Title : 「オレのためにおとぎ話読み聞かせサンケウ!」とオムツBABY

 

 

桃多郎は単独で鬼退治に向かった。

鬼達は、浜からでも全貌が見渡せる鬼が島に住んでいる。

若干16歳の彼は夜道を一切休むことなく歩き通し、

夜が明ける頃には三つの山をも越えていた。

最後の難関である四つ目の山中に入ったところで

比較的に男前の犬に呼び止められる。

 

「桃田郎さん、そんなに急いでどちらへ行かれるんですかい」

 

「何故、私の名を貴様は知っておるのだ。怪しい。

ひたすら怪しいが、マァ許そう。これから鬼退治に行くのだ。

貴様もプラプラしておるのなら、どうだ。

私と共に民を苦しめておる鬼をば退治しに行かんか」

 

「へへへ、そうですねえ…。桃他郎さん、その

御腰に付けている茶巾袋の中身は何でやんす。

もしやキビ団子じゃねぇんですかい」

 

「これか。これは鼻のテカリを取る吸い取り紙の束だ。お前も欲しいのか。

鼻が光っておるではないか。どうだ。これでテカリを取るか。

どうだ。ん?。一緒に来るか。

どうだ。幾枚か、くれてやるぞ」

 

「何だキビ団子じゃねぇのか…。

アッシはこれで暇 ( いとま ) させて頂きやす。

そいじゃ桃汰郎さん、随分とお達者で」

 

犬は並足で森の中へ消えて行った。その後ろ姿を見送りながら、

桃多郎は時の世の非情さを身をもって痛感せずにはおれなかった。

 

三里ばかり進んだところで、流石に左ワラジの紐がブツリと切れた。

様子を見ると右も追って沙汰ありの気配。仕方ない、少々早いが

此処で新しい物に履き替えるかと、路傍の手頃な岩に腰かけたのを

見計らったかのように、傍らの繁みからバタ臭い顔のキジが姿を現した。

 

「ヒョッ、として。…桃太郎さんとお見受けしやすが実際のとこ、

どうなんでげしょう。朝一番の月間『犬』に掲載されておりやしたのを

ツイ今しがた読んだばかりなんで。それで、もしや、

ここいらで待ってりゃァお会い出来るんじゃねえかと。

ヒヒ、案の定お会い出来やしたね。大層光栄でげす。

で、やはり鬼退治なんで?」

 

「ああそうだ。助太刀とは見上げた奴。では共するか。んん?。

こらしめてやるか鬼を。どうだ。参るか」

 

「その前に肝心なことをお聞きいたしやす。その腰にぶら下げてるやつァ~、

何がしかの食い物でもへえっておりやすんでげしょうか」

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亀の恩返し / 裏島太郎伝説 (前編)

Title : 鼻が魚になった男

 

 

裏島太郎は、白き泡やさしげに打ち寄せる砂浜を

軽快にスキップしながら邁進し続けていた。ここ最近の、

己が自堕落さを払拭したき心持ちで一杯になったからだ。紺碧の空、

鮮烈な印象残さずにはおかないクリア・ハイビジョンな水平線。

「春だ!。私の心持ちの春だ!」

裏島は激しく気分が高揚、スキップのバウンドを

2から3へ上げてしまう!。もんどりうって自身を餅つきさながら、

白砂に叩きつける様に転倒した。その時だ!。彼は

30メートルほど前方の波打ち際、

大きな亀が数人の童(わらべ)をこづき回しているのを目撃!。

鼻の孔に入った砂粒を激しくハタき落としながら立ち上がるや、

裏島は異常な速さでスキップ走行。たちまち問題の現場へ到着した。

 

「あいやしばらく!。亀ッ!、お前は何ぞしとるだがや!。

こがいな (このような) 童ら相手に何ちゅう大人気 (おとなげ) ない!」

 

「いかんのか…。童をイジメたら、いかんのか?。

何故だ。何故いかんのだろう」

 

「弱い者イジメだによぅー!。亀!、お前の方が身体がゴツい。

見てみぃ、皆お前の足元で泣いてんでねーのよ、可愛そうに!。

おうおう坊、泣かんでええよ、泣かんで、よしよし~、

お兄ちゃんが歌を歌っちゃるよ、歌を……

 

♪  亀の心にゃ壺がある フジツボまみれの中をば覗け

可愛いタコの童 (わらべ) 入り

シャコらが覗きに来ておじゃる ナマコも遠巻き 見ておじゃる

タコの童は満一歳 亀は知らずに大暴れ

吸盤童泣くのに大暴れ 恥知れドんぶら ちょこざいな

 

 

「何だ、その歌は。誰の作った歌だ?。妙に耳障りがいいな。

乙姫様にも聞かせたいものだ。あんた、名前は?」

 

「太郎だ。裏島太郎。ほして(そして) お前は?」

 

「ソシャクだ。海亀のソシャク。よく噛め。…なあ、お前。今から

海底深く人知れず佇む竜宮城 (たつのみやじょう) まで来てくれんか。

そこの御姫様に、今あんたが歌った歌を聴かせてやってはくれんか。

何がしかの礼はするつもりだが…どうだろう」

 

「海底に城が?。それはどえりゃぁ面白そうな!。行こう!、と

言いてえところだが、知っての通りオレは亀と違ぅぞよ。

人間は海底まで行けんのよ。後ろ髪は非常に引かれるんよ、

ほいでも行かれんわ」

 

「それなら問題ない。そこいらの蟹に頼んで酸素補給してもらえば問題ない。

カニが酸素を大量に含んだ泡を

アンタに口移しで肺に流し込むから大丈夫だ!」

 

「そんいう話なら呼ばれよ。んで、蟹はどこぞにおりやさる」

 

亀は向こうの磯、あっちの岩の間をと、あちこちを覗き込んでいたが

ほどなく80センチ程のカニと並んで戻って来た。

 

「この蟹が酸素ボンベ代わりをしてくれる。なあ?、カニ。頼んだよ」

 

「気安くカニの肩に触るんじゃねえッ!、この、いまいましいドンタレ亀が!。こいつの歌を乙姫様に聴かせるだぁ?。そんなにいい歌か、ちょっとお前、

オレにサワリを歌ってみ。早く!。

早ァー、やァー、くぅー!」

 

♫ ♬ ♪ カニのハサミにワカメの手ぬぐい 淡路島より美しかのよ

まことの蟹の 誉れなれ ああ、誉れなれ  ぶくぶく

 

「こいつぁ~驚いた!。いわゆる泣ける歌じゃねぇかよ、ホントに!。

よし分かった、オレがひと肌脱いでやろうじゃねぇか!、待ってろ!」

カニはその場で脱皮したが、30分を待たねばならなかった。開始5分で

野良犬の乱入などがあり、裏島と亀はカニのディフェンスに追われたのだ。

 

続く

 

 

亀の恩返し / 裏島太郎伝説 (後編)

Title : ビューチフル乙姫様

 

 

 

竜宮城は余りにも地味な海底城だった。

 

「いわゆる色がねえんだち。そりゃそうでよ。この城で

人間様の恰好してんのは乙姫(おつき)様だけって話よ。

高貴なお方はペンキなんぞ塗らんでよ」と、亀。

 

「そうなんかい。しかし…残念だ。あんなに良い歌なのに何故……なぜに

乙姫様は気に入らなかったのだろう…。解せない…」と、いぶかしげな太郎。

 

「ア、それオレ知ってる。さっき乙姫様の従者に聞いた。あんなァ、

歌を歌う途中途中でお前が息継ぎするだろ。……コラ、裏島、聞けッ!

お前の話をしてんだろうがよッ!」突如キレるカニ。

 

「聞いてるよぅ~。ちいっと向こうの昆布をチラ見しただけでや」

 

「チッ !! ……。聞け!。よぉく。……息継ぎの時にな、

お前の鼻の孔が膨らむ角度が気に入らねえってよ。なんか

ブラックホールみてえだって。分かるかァ?このシリアスな

……なんかこう………。分かったか !!」とさらにブチ切れるカニ。

 

「うん、分かった。自分の見聞きしたことをよぅー、臨場感一杯に表現して

歌で聞かせちゃあーのによぅ!。やっぱ、歌詞が高尚過ぎたのかねぇ!」

 

「そうなの?」と、急に安らいだ顔になるカニ。

 

カニの話を黙って聞いていた亀は、全身が総毛だった!。

( 注 : 海亀の甲羅に繁茂しているコケを漁師が毛と勘違いすることがある。

ウッキーペディア)。

 

「だとすれば裏、お前は一刻も早く此処を立ち去らねばならん!。

お前は此処の存在を知ってしまった。乙姫様は用無しの人間を

此処に置くほど愚かではない。すぐにも刺客がやって来るぞ!」と亀。

 

「じゃ帰るっち。カニよ、またブクブクッてしてやりんな。行こ行こ」

 

「まあ待て裏。無事オカに帰っても、刺客がお前の家までやって来る。

そうだ、良いものをやろう。待ってろ」

 

亀は土間の冷蔵庫へ向かう。慌ててカニがそれを追い

冷蔵庫を一緒に覗き込んでいたが、亀だけが玉手箱を手に戻ってきた。

 

「カニは冷蔵庫の前で何を食ってんじゃろか」と太郎。

 

「トコロテンだ。……コラッ!カニッ!、冷蔵庫のドアちゃんと閉めろ!

…いいか裏、浜に着いたらすぐに玉手箱を開けろ。煙が出るから

顔全体に煙を浴びるんだぞ。そうすればお前は即刻オジイチャンになる。

その時いいか、上手いもんが玉手箱の底にあるぞ、とカニに言うんだ。

アイツはすぐ覗き込むから、その時、カニの後頭部を叩いて

玉手箱の底にアイツの顔を打ち付けろ。どうだ、出来るか」

 

「どういう意味かサッパシだなし。そうすっと、ドんぎゃなるんね」

 

「蟹もオジイチャンになるんだ。アイツも刺客に狙われるだろうから

顔を変える方がいい」

 

「カニも年取ると顔変わるんけ!」

「変わらない。あくまでもアイツの気分の問題だろう」

 

亀の指示通り、裏島太郎はその通りに実行した。確かに

紅顔の美少年はたちまち老人と化したが、

家族を始め村人のことごとくが、即座に彼を裏島だと承知した。

カニの素性は誰にも分からなかったものの、

カニは太郎の家で泡盛の味を覚え、村一番の酒豪になった。

裏島は一気に年老いたが、とうとう刺客など全く現れもしなかった。

亀の作り話で、おとぎ話の上っ面だけをなぞった帳尻合わせだった。

何が何でも玉手箱から煙が出る、というエンディングに固執しただけ。

 

ところで、太郎が老人と化したのは顔だけ。他は青年のまま。すなわち、

老人が清らかなボーイ・ソプラノで歌いながら浜辺をスキップする。

その噂はたちまち全世界を駆け巡り、

太郎の村は一大観光村で栄えたという。

 

完。

 

 

金運上昇の秘訣 / ヘビの抜け殻 / 貯金箱はカラ

Title : 人生はヘビィ~ (花蛇風月)

 

 

敗者を指す言葉、

“ 手も足も出ないだろう!”。

 

たしなめるのに使われる言葉 、

” 鵜呑み丸飲みにしてはいけない “。

 

こうも言う、

“ 体に毒よ ”。

 

諦め口調で呟かれるのが、

“ 長い物には巻かれろ ”。

 

“ 冷え性はツライ。 ヘビみたく動けなくなっちゃう ”。

 

これら全てに該当するヘビ。マイナス要素を踏まえた上で

 

“ ヘビは金運を呼び込む ”。

 

絶体絶命のマイナスイメージなのに、プラスイメージへの反転は何ゆえ?。

打たれ強いと視るか。デマ、迷信とみるか。

私の場合、ヘビの抜け殻を財布に入れていた時、

気のせいではなく、確かに金運が上昇した経験がある。

アオダイショウの物だった。

 

やはり貯金箱はカラ、より蛇の抜け殻だろう。

セミの抜け殻、これはいらん。

初回限定、価格破壊、激安 / 安心3原則

Title : 燃えよ激安!!

 

 

 

「初回限定大好き!、

何何、それ早く言え、早くッ!」

 

と、大きな黒目を

ディズピカ ( ディズニープリンセス系アイキャッチ・ライト )

させる夏の恋人、その名も海家 ( みや。21歳、フリーター )。

 

「言うと思ったぜぇ~、ヘラヘラ。

幼児は、2歳くらいまでは固いモン絶対食わせちゃいけないってこと。

歯がイカレちゃうんだよ。

ベロで噛み砕くことが出来る、

くらいのモンしか食べさせちゃいけないってことサ。

これが、いわゆる初回限定。儲けた気分の情報だろ?」

などと、サーファー特有の

フッマイル ( フッ素加工を人々に促さずにはおかない歯並びの笑顔口元。別称、カコマイ )

を見せながら海家 ( みや ) の肩に手を回す

波流男 ( はるお。19才、アリゲーター )。

 

「価格破壊って言ったから、期待して聞いたんじゃんかよバカアー、

姉キの子供の話と何の関係があるっつうんだよぉー」

 

浜砂ついた足裏で、恋人半年目の

バミュパハー ( バミューダパンツの腿部を半分カットしてミニパンにしたもの。別称バミュミ )

のオシリを軽く蹴る、黒焦げ肌の夏美女。

 

「子供は、目につく場所に置いてある物を

考えも無しに口に入れる習性があるんだってよ。

そんなモンで喉詰まらせちゃったらシャレになんないだろ~?。

だから値札は、即刻ビリビリに破ってゴミ箱に捨てる

のが親の役目なのよ。コレが価格破壊、分かるっしょ?」

 

「じゃ、さっき激安って言ったじゃんかよ。ソレ何だよ、言ってみ」

 

「子供が喉に詰まらせるモンが

回りから無くなれば親は当然激安心。

アレ、オレそう言わなかったっけか。要するにサー、

初回限定、価格破壊、激安 = 幼児の為の安心環境整備スローガン

 

「これがキーワードってこと。今は少子化の時代だろ~?。

社会ぐるみで子供を守ろうって意識が高まってんじゃんか。

だから大人達はみんな目の色変えて

こーゆーキーワー追いかけ回してるってわけよ」

 

「え。そうなの。アタシ、みんな少ないお金でやりくり大変だから

目の色変えてるんだって思ってたんだけど。…違うの?。違う…」

 

「違わなくないよ。子供が喉に物を詰まらせたら大変だろ。

救急車呼んでヘタすりゃ命の危険さえあるぜ。

医療費考えろって。

固い値札、食品トレー、食品プラスチックケース、

何でもかんでも即ハサミ!。

小さく切っちゃえば、ゴミ袋だって3枚使ってたものが1枚で済むんだぜ、

ちゃあんとやりくりの役に立ってんだよ」

 

「じゃ、小さい子がいない家庭はどうなんだよおー。エ?。

大人が固い値札を喉に詰まらせるわけないじゃんかあー!」

 

「ま、そうだ。でもオレのダチなんかヨメに値札見せる時、

もとの本物捨てて、PCで巧妙に作った値札にすり変えたヤツ見せて

お金チョロまかしてんだよ。立派な倹約だろ?。

これを価格破壊と呼ばずしてなん…

 

「アンタと話してると、ウチラの関係が間違いだったって確信するよ。

もう付き合わない。今ここで恋人解消させてもらう!。

そうすりゃ未来も激安だよ、な、そーだろうが」

 

「キレイに別れられたな。初回限定ロマンスか。

海の恋人だったなオレら ( 満足笑 )」

 

 

 

 

 

 

 

2022年 最強お守り壁紙発表!/ わざわいを食うフクロウ

Title : 遂に満を持して宇宙落下した2022年お守り壁紙

禍食い・わざわいぐい

 

 

 

〇 映像は、南米産の納豆糸で編みこまれた

膨張フクロウ

として有名な

“ぼあ”

の正面飛行の図〈アマゾン多重人格民族ヘマデヘドモ族の長老、ヘドメドモヘが某宇宙人達の依頼で光速撮影したことが後に判明している〉。

“ ぼあ ” は、幻のフクロウとされ、パラソル蟻に長寿と繁栄をもたらす鳥としてジャングルの猿達からアリガタヤと、あがめられている。

カバは “ ぼあ ” が大嫌いだそうで、その話題が出ると貴重な水源から

湯上りノボセでクラッとなりながらも慌てて立ち去るほどだという。

〈アマゾン腰痛民族テレンテレコレテ酋長、アシギテロコイイウームアンの談話より抜粋 / 参考文献:オオアリクイは北極にはいなかった・轟五郎ノ助著〉

 

 

 

毎年、前年の暮れに未確認飛行物体から落とされる

全長3センチの地球適応型メモリーが、

12月5日未明、今年もアメリカはロズウェル南西部の牧場に落下し、MANAの手で無事回収された。宇宙語変換システマイザーで地球言語に変換されたコメントは、

 

SPACEのSを除去してPACEとし、Pの字のあとにEを入れよ

 

国連予備会議は、このメッセージを過半数には至らずとして却下した。

2021年自身反省会 / 覆水盆に返らず

Title : 今年、ダメだった自分のシーンにアヒルグチ・ハイキック・パーンチ!

 

 

さあ、皆さんもご一緒に!。

 

毎年、この時期になると

「あーすりゃ良かった、こーすりゃ、こうだったのに!

と毎度バカバカしい後悔しきり。

こらえきれず、人にゲロップしたくなるのだが

「だからいつも云ってんだろーが。それをお前がフニャララフニャラ……」

となるので、涙目で唇を噛むばかりなのであった。

 

世の中には、後悔し、悔やみに悔やんだあと、

何とかやり直そうと再びガンバレることと、

残念ながら、そうはいかないことが、在る。

 

細心の上にも細心の注意を払う。

それでもしくじってしまった時には

最後の手段で

覆水 ( ふくすい ) を盆に返して、

水は、最初っから、こぼれたりしてませんでした

にしてくれる

Time Pony

を待つしかない。

 

Ponyには夢の中で会える。

 

 

Title : 後悔を乗せて連れ帰る小馬