黄色いヒレ / 強烈な引きが味わえるキビレ

“ エビでタイ(鯛)を釣る ” という諺(ことわざ)がありますが、この黄色い鯛はゴカイで釣り上げました。姿、体型は一見黒鯛そっくりですが、体色がまるで違います。黒鯛は銀か黒、黄鯛は銀。では、お互いが銀色の時は区別がつきにくいのでは?。ノ~プロブレム!。黄鯛の尾ビレ下部は真っ黄色、黒鯛にはソレがありません。黄色いヒレだから黄鯛はキビレと呼ばれています。キビレは汽水性(塩水と淡水が混じり合う環境)が高いので、海への河口域などで多く釣れます。それにしても、凄まじき鋭利な背ビレだと思いませんか。トゲみたい。実際、尋常でないほど硬いです。一般家庭で使われる包丁やハサミでは、歯を食いしばり全身全霊で切断しようとしても到底無理。切れてせいぜい1センチ。しかも背ビレ最後尾の一番柔らかいトコです。キビレをどんな天敵が襲うのかは知りませんが、丸呑みしたが最後、大変な災難を経験することになるでしょう。

ある気持ちの良い初夏。沖へ竿仕掛けを50mほど遠投し、置き竿。ボクは遅いブランチのコンビニおにぎり鮭。ふたくち目を口一杯に頬張って喉がむせ、ペットボトル麦茶をラッパ飲み。口の中が鮭茶漬けになった刹那、

「ミャヒャヒャ~ン」(何かちょーだい、ちょーだいよぅ)

美しきメスネコ、王道ミケネコであるところのポッティ嬢が繁みよりお出まし。ここはモッちゃんとは別の釣り場所。此処はポッティのホームグランド。ポッティのネーム由来は、ポッテリとしていてボッティチェリ作 “ ビーナスの誕生 ”の様に美しい、というイメージから。

「いやぁ、今日お会いできるんじゃないかと思って。100円ショップでネコ缶買ってきましたよぉ~。お待ち下さいね」

缶蓋開けかけるボクの指が止まる。今、竿先の鈴、鳴らなかった?。気のせい?風のイタズ…竿の鈴がジャリッ!、続いて竿が立てかけてあるコンクリートフェンス上をポルターガイスト現象の様にズズズズズーッっと右へ横滑り!。

「ミャハァァーン?!」(どうなさったの?、まだですの?!)

ネコ缶をポッティ眼前足元に置き、脱兎の如く竿尻掴むボク!。竿先で天を突き、ヒジを閉め、大きくアワセを入れる。乗った!。ハリ先が確実に魚の口をロック!した手応え!。つまり、竿全体に魚の全体重が乗ったという実感!。

向こうが潜ろうとすればコチラは逆らわずに糸出し、向こうがバテて動きを止めれば、コチラはゆっくり糸を巻く。それを繰り返すこと約5分。ギブアップした魚体が波間に浮上。ぐったりボッテリ横たわっている。目を輝かせ海面覗き込むボク。至福の瞬間。アナタはドナタ?。オオオーッ!、まさかのキビレさんでしたかァーッ!!。あとは慎重にタモ網ですくい上げる作業。ズッシリ重い網を足元に置いた瞬間、真隣でネコ缶と奮闘中のポッティと目が合う。わずかに開いた缶蓋の隙間は2センチ。そこに何とか舌先を入れて味見するだけの空しい食卓。

「ミ……」(コレなんですけど…)

こッ、これは大変な失礼を致しましたッ!!。

 

◆キビレ49センチ。スパイク天秤に自作1m仕掛け。ハリス3号。鍼チヌ5号。

 

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