丘の上の子供たち / 遅れて来た羽音

 

Title : あのひのふたり

 

 

★結子。ゆうこ。このエピソードの主人公。

 

 

小高い丘の上、雑木林のその奥には

ダンボールで囲った2人の隠れ家があって

2人はいつもそこで遊んでいました。

青い青い麦畑や金色の銀杏並木が、

そこからは一目で見下ろせたのです。

 

浩が村を出たのは16歳のある日。

夕立が始まりそうな真夏の暗い午後。

 

村のはずれの貯水湖岸には19歳の結子。

涙を溜めていた。

涙を溜めていた。

 

時は巡る。ずんずん過ぎる。

もう後戻りは出来ない。

結子は浩の夢に、もうついてはゆけない。

便りは止まり約束も消えた。

丘の上の子供達は、もうそこには居ない。

 

 

帰宅した深夜、浩は靴も脱げず、ネクタイさえ外せぬまま、

夕べも同じように玄関で眠った。

目覚めて目を通す新聞の片隅、

目を疑う浩。そこには懐かしい結子の顔。

 

“ 女性野鳥学者の卵、お手柄! 新種の鳥発見 ”

 

「この鳥が新種だなんて思ってもみませんでした。

小さいころ時々見かけることがあったので…。

ただのモズか何かなのかなって…。

命名の由来ですか、世の中広しといえども

私達の知らないことは

身近にも沢山あるんだなあって意味で、

 

ひろし。