恋しなければ傷つかない / 夢を捨てる / 決断の歌

Title : 物語を待つ栞〈しおり〉

恋。物心つく美しき季節の始まりに、

子供が夢を捨てる。諦める。一体何が起きたのか。

少女は自身を中国人形だという…。

共産圏では極く当然?。

それなら日本は民主主義国家、日本の子供は夢一杯?。

中国人達が理解に苦しんでいるそうだ。

経済大国日本で毎年2万人の自殺者。その多くが若者。

何故?。どうして?。誰か彼らに教えてあげて欲しい。

子供の頃に夢を捨てた少女、チャイニーズ・ドール。

感情は失せ、人間ではなくなり

生きた屍と化してしまった。

ある男性が突然彼女の心を動かし始める。再び息を吹き返す人形。

人間としての鼓動。彼女には奇跡、魔法に等しい。

黒猫の顔は闇。

黒猫に姿を変えたなら再び私の表情は失せる。

アナタにときめく私の表情は、闇に溶けて見えなくなってしまう。

動き出した心に涙が流れ始める。恋が成就する保証はない。

天の川に身を投げる彼女を見て

全ての星は息を潜めるだろう。

人間を取り戻そうとする彼女は、たとえ焼け死んでも引かないと呟く。

彼が彼女に再生させる勇気,、生きる勇気、を与えたのだ。

◆中国人形 (チャイニーズドール / 尾崎亜美 / 作詞作曲) 杏里

子供の頃に 夢を捨てた そうよ 私は中国人形

星が舞う夜 魔法は起こる あなたの愛で 動き始める

黒猫に 変わる前に その腕で 抱きしめて

この恋に 賭ける はじめての涙 チャイニーズ・ドール

自分達の関係は恋人同士なのか、結婚を約束出来る程の仲なのか。

幼い二人は、自分達の愛の深さを世間一般の形式で計ろうとした。

未熟ゆえの手段。結果はサヨナラ。

もっと心と心で向き合えば良かったのに、

形式にばかり囚われ大切なものを失ってしまった。

取るに足らない大人の決め事を真似ようとしたばかりに。

◆花のように鳥のように (石坂まさを / 作詞、筒美京平 / 作曲) 郷ひろみ

形式や夢では アア ないのさ 心が求めて アア いたのさ

今になってそれに気づき 唇かんでいるよ

どうして二人は サヨナラを告げたの 意味など ないのに

大きな選択、大きな決断。

目測を誤り、二度と結べない絆の事実を前に、ただうなだれるだけ。

何故、目測を誤ってしまったのだろう。

何故、いともたやすく絆を断ち切ってしまえたのか。

信じ切れなかったからだ。

でも何を…。

相手を。自分を。

二人の心以外の何かで二人の愛を計ってしまった。

◆青春のあやまち (unknown) トワ・エ・モア

どこに 私は居ても いつも あなたを感じる

なぜにあの時 二人は別れた 大事な愛を 愚かに二人捨てた

朝の 電車の中で 街の 人ごみの中で

今日も あなたの姿を求める

愛の大きさ 今頃 知った私

自問自答しながらも、心は既に答を得ている。

恋人同士になれば、その後二人はどうなるのか。それさえ心は答を得ている。

それでも止めることの出来ない狂おしい想い。自分達の情熱以外は

一切の要素を考慮に入れず始める物語。

二人は大人だ。その結末に耐え切る自信が、ある。

◆季節風 (有馬三恵子 / 作詞、筒美京平 / 作曲) 野口五郎

何故 出逢ったのだろう

もの言わぬ過去の傷に ひかれたみたいに

なぜ 暮らす世界が違う二人して 名乗り合ったのか

過ぎ行く風 泣いてる日がある

数々の経験の後、彼女は十分すぎるほど大人の女になった。

その分別には未熟さのかけらもない。

だからこそ形を欲しがった。大人だからこそ求めたのだ。

それは左薬指を飾る指輪だったのか。命を絶つため此処へ来たのか。

◆渚にて(阿久悠 / 作詞、中村泰士 / 作曲) いしだあゆみ

誰かしら愛してる形が欲しい さびしくて 消えそうで つらくなる

知らぬ間に 引き潮に流されそうで

ゆらゆらと 揺れているこの体

◆誰もいない海 (山口洋子 / 作詞、内藤法美 / 作曲) トワ・エ・モア

今は もう秋 誰も いない海

いとしい 面影 帰らなくても

私は 忘れない 空に 約束したから

ひとりでも ひとりでも

死にはしないと

自身が描く結末にならないのなら、その恋を止める。やめてしまう。

悲劇の結末であろうとも、この恋を始められないというのなら死ぬ。

自身が描いていた夢の結末が絶望だと分かった時、死を選ぼうとする。

物語がひとたび始まれば、幾度も幾度も決断を迫られる時を迎える。

何をもってその決断を下したのか。その根拠は何か。

◆君こそわが命 (川内康範 / 作詞、猪俣公章 / 作曲) 水原弘

あなたを ほんとは探してた この世にいないと 思ってた

信じる心を なくしていたが

けれどもあなたに愛を見て 生まれて はじめて 気がついた

君こそ命 君こそ命 わが命

信じることをやめてしまった男。

生まれて初めて気がついた時には、既に遅かった。

どんなに愛していても、きっとアナタを傷つけてしまう、

だから離れていくと決める。物語を始めない決断。

自分が傷つくことを怖れたのではない。

相手を傷つけることを怖れたのだ。

子供が夢を捨てることは許せない。大人になればいくらでも

好きなだけ捨てられる。

心だけで世界の全てを計れる権利。その一切を何故放棄してしまうのか。

強制シャットダウンさせられたのだとすれば、

益々絶対、命じたものを許せない。

知らず知らずのうちに自身が夢を失い、あるいは夢を捨て、

その事実にさえ気づかぬ単細胞な大人が、

重罪の意識もなく簡単に子供の夢を奪う。

さあ、仕事に行ってくるからな。今言ったこと分かっただろ?。

約束ちゃんと守れよ。

車は動き出す。道の真ん中、ポツンと取り残された、

うなだれた子供の顔が段々小さくなってゆく。

運転手は一度もバックミラーを見なかった。

◆渚にて (阿久悠 / 作詞、中村泰士 / 作曲) いしだあゆみ

傷ついて 死にそうな鴎 ( カモメ ) が一羽  引き潮にさらわれて 消えてゆく

ぼんやり それを見る 私のこころ なぜかしら 似ていると ふと思う

恋も経験しなければ傷つくことはない

と思っている人達が居る。悲しい人達だと思う。

もう、傷つく権利なんて許されてはいないのに。

とっくに神様が取り上げてしまったよ。

神様から取り返す気になったのなら急いだ方がいい。

時が経てば経つ程、きみの身体は重たい石のように、

到底動かなくなるから。

◆学生街の喫茶店 (山口路夫 / 作詞、すぎやまこういち / 作曲) ガロ

あの時の歌は 聞こえない 人の姿も変わったよ 時は流れた

あの頃は 愛だとは知らないで さよならも言わないで 別れたよ 君と

◆流星 (吉田拓郎 / 作詞作曲) 吉田拓郎

流れる星は かすかに消える 想い出なんか残さないで

君の欲しいものは何ですか 僕の欲しかったものは 何ですか