ネバドロン現る!

ヒイラギさんはネバドロン。全身粘液まみれ。ウルトラマンがネバドロンとガップリ四つ(ヨツ)に組んだなら、その凄まじき粘液過多でたちまち全身ネバドロン!、呼吸困難で戦意喪失間違いなし!。

息も絶え絶えの宇宙警官にヒイラギのたまう。「私は何もしていない。お前が1人芝居に興じただけだ」と。

最大寸でも15センチほど。葉っぱのヒイラギに体型が似ることからヒイラギ。勿論、トゲかと見間違う背ビレも同じ。DNAの保身進化ってスゴイですよねえ。大きな魚がネバドロンくわえたが最後、口の中がハナタレ洪水。鋭いトゲが口内チクリ。こらえきれずにオエエエエーッ!。

非常に美味しい魚です。アジにもヒケはとりません。市場流通しないのは、小さすぎる、調理経費が莫大、トゲが危険、の3点でしょう。調理経費?。ネバドロンを捌こう(さばこう)とするなら、まず粘液を取り除かなければなりません。

それには食塩。塩で揉み込み粘りをコソぎ落とすのです。が、想像以上の量が要求されますよ。1尾あたりに塩が大サジ5~6杯!。信じられます?。

ヒイラギはベビベビ(ベイビー)でもあります。口を開いて海底の小さなエサをスポイト吸引捕食するのですが、開いた口が哺乳ビンそっくり。

薄皮の収納口が5ミリ前後も伸びるのです。これでホムホム吸引なのですね。

八月のある激烈猛暑日、午前11時過ぎ。鉄の手すりにでもウッカリ触れようものなら

「アジャァーッ!!」

マジで火傷(第1度)間違いなし。流石の釣り師達の姿も皆無。熱中症恐れぬフラチな男2名、赤の他人同士で者間距離およそ8メートル。

おのおの修行僧の様に釣糸垂らしてダルマ大師(座して微動だに動かぬ)。

突如海中に動きあり!。2人ほぼ同時にアタリ(魚がハリ掛かりした合図)続出!。鼻息荒く抜き上げりゃ、ヒヒェェェーッ!!、良型ネバドロン!!。

したたる汗にまみれた指で慌ただしくハリを外せば、たちまち指と手の平ネーバネバ。次々釣れるヒイラギに、うっかりトゲチク、指の各所に血がにじむ。

汗塩パッパ、まさに傷口に塩!。水面見ればナブラ(魚の群れの移動で水面が波立つ状態)が立つサザナミ!。産卵でヒイラギ軍団が浅瀬に入ってきたああああーッ!。

30分の激闘は突如打ち切り。群れは行ってしまった。両指ヒリヒリ、ネバネバ、両腕ダラリで矢吹丈(明日のジョー / 主人公)。ボクは “ 座り釣り ” の兄ちゃんにフラフラ近寄り声かける。

「凄かったですよねぇ~!。何ビキ釣りました?」

彼は笑いながらバケツ指差し「数えきれないよー」。

アレッ?。その横顔、まさか超有名な若手俳優さん?。やっぱりそうだ、そのヒトだ。彼の手を見りゃネーバネバ。やはりネバドロンは芸能人とて容赦なし!。

 

●ヒイラギ14~16センチ。(真ん中にサッパが1)。棒浮き2号にハリス1・5号。メバル鍼(ハリ)、タナは底切り。