Title : 食欲なんてコントロール出来まへんよ
翌朝、ビックリ箱から飛び出したバネ仕掛けピエロ
さながらに布団から躍り出る。
正面壁に貼られたカレンダーにすがりつく悦び!!。
昨夜、就寝布団の中、眠りに落ちる直前にウットリ夢見た至福タイム
が遂に到来!!。赤マジック(極太)手に取り
絶食初日 ◎
と、一字一字を懇切丁寧に書き込む。
書いている間は呼吸が止まっていたらしく、描き終えた瞬間
「ハハァゼェェーッ!!」と呼吸困難に陥る。
それがどうした?、いいえ別にィ~、どうもしませんが、何か?、
などと得意の絶頂で1人漫談。
昨日、ボクの口を通過したものは温かい麦茶オンリー。
むろん、ガブ飲みして腹を水ッ腹にして飢えをしのぐ、
などという代償行為は一切していない。
通常の人の飲料と何ら変わらなかったハズ。
そういった意味では、ボクは王道ゼッショッカーと自分を讃えたい。
だがしかし、と眉間にシワが寄る。
昨夜のボクは奇妙なほどに空腹感を感じなかった。
当然絶食成功理由はそれに尽きるのだが、
ボクは本当にアカの他人であるところの
脳内食欲専任作業員と、7日間絶食契約を締結出来ているのだろうか。
こんな時、脳内食欲部門から
“ 健康絶食ダイエットを受け付けました”
とメール返信が来れば安心なのだが…。
などツラツラ考えるうち、突如として閃く。
違う違う違う!。ボクは自身の脳と契約など締結していない!。
ボクが行ったのは “ 暗示 ”!だ。
脳内食欲担当作業員に暗示をかけたのだ!。具体的に言えば、
ボクは作業員を温泉か何処かへ連れてゆき、彼を入浴させたのだ。
つまり “ 洗脳 ” したのだ!。
“ 眼は心の窓 ” という。
だとすれば、心の所在は胸ではなくて脳ということになる。
心とは、自分と自分以外の第三者とを比較検討し、
その結果や結論からもたらされる感情の状態を指す、ような気がする。
ブッチャケ、ボクとアイツを比較する。
アイツはイケメン、ボク違う。
ボクが片思いのカノジョはアイツが好き。とボクが結論づけたとする。
当然、無性に腹が立つ、
もしくは羨ましい、ねたましい、憧れる、その他もろもろ。
眼は心の窓だから、アイツを見るボクの眼は、妬みの眼差しか憧れの眼差し。
これらは脳内の感情や情緒部門が始発だから、
ダイエットはココに訴えてもダメ。まず90パーセント失敗する。
何故なら、自分の感情を完全コントロール出来る人間なんて居ないから。
心はアヤフヤなもの。感情だってコロコロ変わる。
そんな不確かな脳内感情部門専任作業員を洗脳するなんて絶対無理。
この作業員はチャランポランな奴。別の意味で、
生存本能部門より御しがたい男。
多くの人々がダイエット開始の窓口で早々に失敗するのは、
最初のアクセス先が間違っているからではなかろうか!。
絶食ダイエット開始にあたり、
ボクは脳サーバー内のアクセス先を間違えなかった。両目のURLに正しくアクセスした。
絶食キーワードの
“ 健康 ”
もキチンと打ち込んだ。食欲生存本能の一時無効化に成功したのだ。
結果、昨夜は耐えられる範囲内の食欲しか自覚しなかった。
この状況を連日維持出来るなら目標貫徹、達成出来そうだ。
だがしかし、本当にマグレではないのだろうか。たまたまではないのか。
ボクは不安にかられ、再び大学ノートに絶食キーワードを速射撃ちし続けた。
ノート5枚。
夕暮れがボクの腹部へ忍び寄った刹那、ボクの顔に戦慄が走った。
異常な食への渇望が湧き上がってくる!!。次から次へと!!