絶食ダイエット (1) / 自宅浪人生の減量作戦 / 拒食症全記録

Title : 挑戦者の涙

 

ボクは凄まじいダイエットを経験したことがある。

その時ボクは間違いなく大学浪人生だったはずで、決してボクサーではなかった。なのに過酷な減量を強行してしまった。

“ 絶食 ”という名の無謀ダイエットを。

ヘタをすれば命も落としかねない程の過酷ダイエット。

いいや違う、違う、違う。

ダイエットだと思い込んでいたのは愚かなるボクだけ、

それは異常な精神世界への無邪気なトランポリン・ゲームだったのだ。

 

ポーンポーンと天に向かって自身を発射し、

落下しては有頂天顔で再び天を目指す。

無知ゆえに成せるワザ、未熟さゆえに出来たワザ。

鏡を手にすれば1時間近くも食い入るように覗き込み、こけてゆく頬に満面の笑顔。

 

そしてそれは、みるみる酷く不機嫌な顔へと変貌してゆくのが常(ツネ)。

毎回ワンパターンの怪人二面相、日々スリムになってゆく自身の姿に

輝かしい未来を重ね合わせるピンボケな誤解。

画素数の高い鮮明なる勘違い。

 

とにもかくにも、ボクは恐ろしき闇から奇跡的に生還した。

この命がけの1人芝居、その恐怖の内訳を知る人は片手に余る。

このエピソードは、“ ネコならエッセイ ” 中、突出した有益情報

だと言えるだろう。これは若さへの警告、思慮のなさへの戒め。

これは1人の、特筆すべきアンポンタンが挑んだ24日間の絶食エッセイである。

 

大学5校に全てに落ち、ボクは自宅浪人を始めた。そう聞かされた元担任のポンポコリンタヌキ先生は憮然として言い放つ。

 

「俺の教え子でそんな奴は1人もいなかったぞ。

皆ぃ~んな、予備校へ行ったんだ。偏差値1つ上げるのが

一体どれだけ大変なことなのか、お前は全く理解していない!。

宅浪してお前が志望校に合格したら

オレは校庭を逆立ちして1周してやるよ!」

 

ボクの好きなポンタヌキ先生の言葉は愛の鞭。

それはボクのスポンジ脳ミソに心地よく浸み込む。

だがボクはそれを、すぐさま両手で力一杯絞ってしまった。

 

高校を卒業するや、ボクは住まいを市内から市外へと移した。

一足早く単身赴任していた父と合流したのだ。

ボクは友人達と切り離され、誰1人として知り合いのいない土地に

軟禁状態となった。

 

「つまらん。全くもって、つまらん」

“絶食ダイエット (1) / 自宅浪人生の減量作戦 / 拒食症全記録” の続きを読む

絶食ダイエット (2) / 匂いひとつでダイエット挫折 / 減量宣言むなしく

Title : 未知なる世界を覗いてみれば

 

 

 

魔が差す、という。ヤキが回る、とも。そういう状態や状況を経験した人は、

後になって判で押した様に呟く。

 

「何でこんなことしたのか、自分でも全く分からない…」

 

そう言い放って首をかしげる。あるいは途方に暮れる…。

ボクにもコレがドンピシャ当てはまる。何故、ある日突然、ある日を境に、

絶食などという危険サーキットにフルスロットルで挑んだのか…。

 

キッカケはウロ覚えながら思い当たる。

ボクは自宅浪人の師をラジオ講座に求めており、その流れのまま

ラジオ番組を聴くことが多かったのだが、

何かの番組にゲスト出演していたお坊さんが

 

「一週間の絶食であれば、むしろ健康体になります。体の毒素を綺麗に対外へ排出する作用をもたらします」

 

と発言。コレを聴いたからではないか。しかし、コレは

厳しい修行に耐えるお坊さんだからこそ出来る御業(みわざ)なのか、

一般人にも当てはまることなのかは記憶にない。

うつらうつらしながら聴いていたので前後の会話が分からないのだ…。

 

だが、希代(きだい)のお調子者は何の脈絡もなくソレに飛びついた。

ボクもやりたいなー、1週間ダイエット!。やれるかな?。

お調子者の脳に住みつく、もう1人の更なるお調子者が即答。

 

「やれるやれる、やっちゃえ、やっちゃえ!。スリムになればモテモテだぞ~、その上に健康体になるって特典付きだあーッ!」

 

夕飯時。食卓につく両親と弟の前、ボクは淡々と宣言する。

 

「ワタクシは明日から1週間絶食します」

 

体の毒素を抜き健康体になります、と。大事な大学受験を控える身、

何より求められるのは健康ですこやかなる精神だ、と。

絶食すれば頭は澄み渡り、学問も一言一句ストレートに頭に入るのだ、と。

“絶食ダイエット (2) / 匂いひとつでダイエット挫折 / 減量宣言むなしく” の続きを読む

絶食ダイエット(3) / 敵は生存本能にあり! / ダイエットの敵は脳みそ

Title : 暗闇の手探り!コウモリだけが知っている!

 

 

 

絶食初日、いともたやすく矢尽き刀折れたことが

逆にボクをムキにさせてしまった。ちょっとしたキッカケで

ティーンエイジャーは対象にのめりこんでしまうことが多い。

熱狂や興奮に最も純粋に反応する生き物とも言える。

 

プリンで言えばスが入っていない状態、ホットケーキで言えば

小麦粉のダマが一切検出されないということなのだ。

未熟な未成年が唯一大人に勝る武器、それが情熱という名の固執だ。

 

であれば、ボクの具体的な武器は何だ?。

自問の結果、こだわりの分析癖であろうかな、と…。

早速ボクは分析瞑想(めいそう)に入る。

 

何故、あれほどの固い決意がいともたやすく挫折したのか。

即答!、空腹に耐えられなかったから。

たとえ散歩に出かけなかったとしても、

自宅にこもったとしても同じことだっただろうと確信する。

 

空腹という名の生存本能。

ヒヨコのボクが生存本能に抗えるハズもなし。

ただちにコンビニに走ったは必然!。

 

ならば敵は生存本能に有り。そのお方はボクの体の何処にいらっしゃる?。

全身に伏兵が散らばっているのかもしれないが

恐らく総大将は脳に違いないのではなかろうかいッ。

昨日ボクにアンドーナツを買わせたのは脳の命令に違いない。

 

ならば脳を説得出来れば、納得させられれば、

ボクは絶食1週間を見事達成出来るということになる。

なにしろ生存本能の免罪符、通行手形を手に入れたのだから、

どんな関所もフリーパス!。

ああ、これだこれだ、この路線で行こう!。

 

アンポンタン浪人生の決意は固まった。

1週間だけ期間限定、リングに上がらぬボクサーになるのだ。

目的達成翌週から再び受験生に戻ればよい。

 

脳をどう説得するか。

“ 人の心を動かしたければ眼を見て話せ ”

という先人の教えがあるではないか。よぉぉぉ~し、分かった。

 

人間の眼は脳の一部。つまりボクの両目は、脳の両目でもあるのだ。

“絶食ダイエット(3) / 敵は生存本能にあり! / ダイエットの敵は脳みそ” の続きを読む

絶食ダイエット(4) / ダイエット前より食べる量が増えて / 減量に反抗する身体

Title : キノコのようにニョキニョキ伸びる食欲

 

 

 

7日間絶食作戦。仕切り直しで早3日目。

くじけちゃいかんゼヨ、三度目の正直というではないか。

などと誰しもが思う事を呟きフトンから這い出る。

頭がスッキリし始めるのは起床後2時間。現在ボクは

“ 受験生転換ボクサー ” をカスタマイズ中なので、

ラジオ講座はラジカセで自動録音状態。

家族の者達はボクの挫折事実など一切認識していない。

悲しいほど当然である。

 

食卓での絶食宣言以降、ボクは普通に彼らと食事を共にしているのだから。

まだダイエットの既成事実がない以上、

この2日間の失敗はリセットと呼べない。

 

つまり、ボクは今日初めて絶食を始める、

ということで宜しいんじゃないでしょうかね。やり直しではない。

今日初チャレンジ。始めるにあたり、秘策もある。

脳は目の一部。当たり前だが目は耳ではない。

にもかかわらず、ボクは鏡に映る自身の眼を見つめ、

こともあろうに語ってしまったのだ。

「絶食する」と。

 

その間、ボクの耳は1人密かに、いや、耳は2つだから、

ボクの耳は2人密かに持ち主であるところのボクを

あざ笑っていたに違いない。右耳がボクの口調を真似て

 

「あのぅ~、ワタシは脳の一部じゃないんですけどぉ~」。

 

すると左耳がドッと笑う、みたいな…。

まあいい。とにかく、目は脳の一部。目は見るためのものなのだから、

絶食に全面的に協力してもらう為には、

視覚に訴えなければならないわけだ。

 

ダイエット効果として、太っている自分の写真を壁に貼って毎日眺め、

自己嫌悪を誘発して食の誘惑に打ち勝つ、という話を小耳に挟む。

これでは脳の感情面を担当する作業員の同情は買えるかもしれないが、

前述の通り、我が敵は脳の生存本能。

重大欲望部門に勤務している作業員達なのだ。

 

恐らく3名と思われる。すなわち、食欲、性欲、睡眠欲、

の三大欲望に各々従事するエキスパート達だ。

“絶食ダイエット(4) / ダイエット前より食べる量が増えて / 減量に反抗する身体” の続きを読む

絶食ダイエット(5) / 食欲が出たり出なかったり / 脳に暗示をかけたい

Title : 食欲なんてコントロール出来まへんよ

 

 

 

翌朝、ビックリ箱から飛び出したバネ仕掛けピエロ

さながらに布団から躍り出る。

正面壁に貼られたカレンダーにすがりつく悦び!!。

 

昨夜、就寝布団の中、眠りに落ちる直前にウットリ夢見た至福タイム

が遂に到来!!。赤マジック(極太)手に取り

 

絶食初日 ◎

 

と、一字一字を懇切丁寧に書き込む。

書いている間は呼吸が止まっていたらしく、描き終えた瞬間

「ハハァゼェェーッ!!」と呼吸困難に陥る。

それがどうした?、いいえ別にィ~、どうもしませんが、何か?、

などと得意の絶頂で1人漫談。

 

昨日、ボクの口を通過したものは温かい麦茶オンリー。

むろん、ガブ飲みして腹を水ッ腹にして飢えをしのぐ、

などという代償行為は一切していない。

通常の人の飲料と何ら変わらなかったハズ。

そういった意味では、ボクは王道ゼッショッカーと自分を讃えたい。

だがしかし、と眉間にシワが寄る。

昨夜のボクは奇妙なほどに空腹感を感じなかった。

 

当然絶食成功理由はそれに尽きるのだが、

ボクは本当にアカの他人であるところの

脳内食欲専任作業員と、7日間絶食契約を締結出来ているのだろうか。

 

こんな時、脳内食欲部門から

“ 健康絶食ダイエットを受け付けました”

とメール返信が来れば安心なのだが…。

などツラツラ考えるうち、突如として閃く。

 

違う違う違う!。ボクは自身の脳と契約など締結していない!。

ボクが行ったのは “ 暗示 ”!だ。

 

脳内食欲担当作業員に暗示をかけたのだ!。具体的に言えば、

ボクは作業員を温泉か何処かへ連れてゆき、彼を入浴させたのだ。

つまり “ 洗脳 ” したのだ!。

“ 眼は心の窓 ” という。

だとすれば、心の所在は胸ではなくて脳ということになる。

 

心とは、自分と自分以外の第三者とを比較検討し、

その結果や結論からもたらされる感情の状態を指す、ような気がする。

ブッチャケ、ボクとアイツを比較する。

アイツはイケメン、ボク違う。

ボクが片思いのカノジョはアイツが好き。とボクが結論づけたとする。

当然、無性に腹が立つ、

もしくは羨ましい、ねたましい、憧れる、その他もろもろ。

眼は心の窓だから、アイツを見るボクの眼は、妬みの眼差しか憧れの眼差し。

これらは脳内の感情や情緒部門が始発だから、

ダイエットはココに訴えてもダメ。まず90パーセント失敗する。

何故なら、自分の感情を完全コントロール出来る人間なんて居ないから。

 

心はアヤフヤなもの。感情だってコロコロ変わる。

そんな不確かな脳内感情部門専任作業員を洗脳するなんて絶対無理。

この作業員はチャランポランな奴。別の意味で、

生存本能部門より御しがたい男。

多くの人々がダイエット開始の窓口で早々に失敗するのは、

最初のアクセス先が間違っているからではなかろうか!。

 

絶食ダイエット開始にあたり、

ボクは脳サーバー内のアクセス先を間違えなかった。両目のURLに正しくアクセスした。

絶食キーワードの

“ 健康 ”

もキチンと打ち込んだ。食欲生存本能の一時無効化に成功したのだ。

結果、昨夜は耐えられる範囲内の食欲しか自覚しなかった。

この状況を連日維持出来るなら目標貫徹、達成出来そうだ。

だがしかし、本当にマグレではないのだろうか。たまたまではないのか。

ボクは不安にかられ、再び大学ノートに絶食キーワードを速射撃ちし続けた。

ノート5枚。

夕暮れがボクの腹部へ忍び寄った刹那、ボクの顔に戦慄が走った。

異常な食への渇望が湧き上がってくる!!。次から次へと!!

 

 

 

 

 

絶食ダイエット(6) / 空腹を紛らわす方法 / 呼吸を止めてガマンして

Title : 空腹で注意力ばらばら

 

 

 

絶食ダイエット2日目。

 

朝食抜きは長年のルーティーンだし、さして昼食も特別な食の要求はなし。

こいつァー前日続きで調子がイイぞォ~、

と思っていたところへ衝撃の魔の刻。

 

台所から食欲そそる匂いがボクの自室に届いてきたわけでなし、

美味しい食べ物を思い描いていたわけでもない。

突然に、そのスイッチが入ったのだ!。

 

夜6時半、全身が震える程の空腹感。瞬時にして

 

“もうダメだ!。

絶食はおろかダイエットなんて

これっぽっちも無理だ不能だ不可能だ!! ”

と、観念してしまう程の凄まじい飢餓感!!。

 

机に向かいイスに座し、何とか魔の刻やり過ごそうと抗うボクだったが、

アリャリャ?、自分の意志とは無関係にスックと立ち上がってしまった。

まさしく本能の成せるワザ。

 

アア、これか。生存本能起動か。

時間が来て録画予約番組がスタートし

自動的にTVのスイッチが入るように、

それはあらかじめ約束されていたところの

“ 生存本能 / 食欲カテゴリの更新と実行 ” の自動インストゥール。

 

いや、ボクもコレを全く予期しなかったわけではない。

でもボクはティーンエイジャー。自分中心に物事を決めがち。

決めたい。だから、それは無いっしょ、で目をつぶった。

その反面で対応策はウッスラと用意。

受験生ならば滑り止めは用意するもの。

それを実践しよう。

 

脳ミソという主人。その御方にに大目玉をくらった食欲部門専任作業員は

ハタと我に返り、直ちに飢餓警報をボクの身体全機関に発令。

その音色は最優先事項を示す。

ウワワワォォォ~ン。

全血管中の赤血球や白血球、血小板が

 

「食わせろーッ」

 

と激怒で煮えたぎり始める。

全身の筋肉が張りつめ、その皮膚には畏怖の鳥肌総ウブ毛立ち。

胃袋は絶望的な面持ちでしゃがみこみ、肺はシャックリ寸前、

腸はひきつけ寸前、自分の意に反して何度も喉が鳴る。

いてもたってもいられなくなったボク、自室脱出!。

 

「ちょっと散歩ッ」

 

言い放つや食卓に背を向けスニーカーつっかけ外へ!。

無一文だから買い食い不可。

既に、全身が食べる行為への渇望に完全支配されている。

今、何かひとつでも自分の好物を脳裏に思い描いたが最後、

昨日今日のボクの企ては水泡に帰してしまう。

 

「満腹、満腹!、アーお腹一杯だぁー」

などと、うそぶいても無駄。

耳は脳ではない。眼!。眼は脳だから、コヤツらに何かを見せなければ!!。

きびすを返して自宅に戻り、また大学ノートに書くか?!。

イヤ、駄目だ駄目だ、それが通用しなかったから今こうなっている。

アレしかない!!。

“絶食ダイエット(6) / 空腹を紛らわす方法 / 呼吸を止めてガマンして” の続きを読む

絶食ダイエット(7) / 突然に凄い空腹感 / 腹ペコを紛らわすためにコクる

Title : 今なら5枚は一気喰いが出来る3種のチーズピザ

 

 

 

問題の3日目…。

何が問題なのか分からないが、そんな心持で憂鬱なアクビ。

でもサー、もともと寝つきが凄く悪い割には、眠れてるかも。

エネルギー不足なのね?と微笑。オオ!いいジャン、微笑するなんてッ。

余裕をカマしてるねぇ~キミッ。と口走った瞬間、

全身に冷水浴びせかけられた思い。

 

受験勉強どうしたの?、そんだけ余裕なら合格間違いなしなのねぇ~?。

焦る。マジ、シャレにならない。もう1日たりとも無駄に出来ない。

つまり、ダイエット失敗でスゴロクよろしく、

モノポリーよろしく “ 最初に戻る ” なんて猶予は一切なし!。

 

カレンダーに

2日目◎

と、ご報告。なのにホワイ?。今日は盛り上がらないボクの心。

気がかりなことが有る証拠。今日1日、見事に持ちこたえられるだろうか。

自信がない…。

 

周囲が見えなくなる程、何かに集中しているとする。

その間、ブッ続けの2時間だったとする。

ア~ッ、終わったァーッ!と一気に緊張が解けた瞬間、

到底こらえきれない尿意に襲われトイレに駆けこむ、

なんて経験あるんじゃない?。

それッて脳がボーコーさんに命令してたからじゃない?。

 

「今コヤツは夢中でコレをやってるから、オマエ ( ボーコー) は

余計な口出しするんじゃない。いいな?」つて。

 

ガマン出来なくなるまで用足し欲求を感じなかった、

なんて信じられない!。脳ミソってスーパーマジシャンなの?。

米海兵隊合言葉の

“ 臨機応変であります!! ”

ってかい。それなら納得。

昨日のボクは、湧き上がる飢餓感を別の苦しさにすり替えて

脳の指示出しを上書きしたのかも。

でも脳は頭がいい。ボクと違ってジックリ考えるタイプ。

だから同じ手は決して通用しないだろう。

何か効果的な代案があるだろうか。ううむ…。ない。

ヤだな怖いジャン。どえりゃあ、マズいジャン。

 

お腹減ったァーッ!!

のオーダーしてこないボクのポッテリお腹。

昨日もそうだったなァ~この時間帯、と掛け時計見上げる。

午後2時15分。

すかさず、絶食ダイエット強行中のフレンドから電話。

 

「ピザ食いに行かね?」

 

行かね?ってチョットあんたねえ~、察しなさいよと言いたくも

インフォしてないもんねェ…。

 

午後3時。

突如、映画 “ ジョーズ ” の巨大ホオジロザメが

大口開けて海面に飛び出してきたような腹ペコ感!にドギモ抜かれる!。

また来たァァァーッ、サプライズショック Var-2!!。

反射的に立ち上がり、半身くの字に前かがみ、

思わず両腕で自分の腹部をロック!。

何だそりゃ、刺しこみじゃないでしょーが、

などと微笑ネタ。ダメだ笑えない!。

いかん、このままでは3分後に間違いなく

食物に大口開けて襲いかかっている!!。

どうする、どーする!!。ヒェェェーッ!!。

 

突拍子もないアイデアが閃く。

 

中学時に片思いだった麗しのカノジョにッ、

とうとう最後の最後まで勇気がなくて打ち明けられなかった熱い思いを

カノジョに告白したらどうだろうかッ?!、ダメだろうかねッ?!、

などと無言で叫ぶ。誰に聞いてんだか分からないが、

とッ、とッ、とにかくッ!!。カノジョはブティックで働いている。

検索しお店にマッハで電話。

 

「はい」

 

「アッ!。あの、◇◇さん居ますかボク△△で…

 

「ああ、あたしですけど(笑)」

“絶食ダイエット(7) / 突然に凄い空腹感 / 腹ペコを紛らわすためにコクる” の続きを読む

絶食ダイエット(8) / 全裸で体重測定 / 絶食3日で体重減らず

Title : 減量中につき入店不可

 

 

 

自己嫌悪な独演会、悲恋ものを見事に演じきった虚脱感からか、

寝ては覚めての繰り返し。

ボウッとするがロクな運動もしないボク、エエイ起きてしまえッ。

立ち上がりかけ足首に絡みつく布団に引っ張られ、

バランス崩し机の角にヒジをぶつける。結構痛いッ。

絶食で体力が相当低下しているのだろうか。

 

やや不安になるが、そうだそうだ、

荒行のお坊さん達だって経験しているんだし大丈夫。いや待てよ、

あの方々は日々体を鍛えているから大丈夫なのでは?。まあそうなのかも…。

そんなことより今日はボクにとって特別な日。

誕生日でもイヴでも元旦でもない。

絶食3日間ごとに体重を計測する!。ハナからそう決めていた。

今日は4日目の朝だから。異様な程の昂ぶりみせるボクのハート。

 

神聖なる計量儀式を執り行う前に、まずはカレンダーに

◎を記入。

ああそうか…と赤マジックを極細黒ペンに持ち替え、

1文字が縦横5ミリ×5ミリの大きさで

SB と書き込む。

自分的には S (失恋) B (ブティック) なる暗号のつもり。

SB (ショッキング・ボーイ)、さよならばっかし、でもなんでも良い。

自虐の戒めコードということだ。

とにもかくにも物置コーナーから体重計をズルズルと引っ張り出す。

 

「オフオフッ」舞い上がるチリに軽く咳き込む。誰も使ってないもんなァ。

コレ防水だっけ?。水洗いして壊れちゃ敵わないから雑巾で水拭き?。

バカな。尊い儀式に汚れた台座などあり得ない。

母は外出中みたいだからと真新しい純白のタオルをかすめ取り、

水に浸して我が友に磨きをかける。その間5分くらいか。

両手に不快なだるさを感じる。え?、これしきのことで?。

やはり体力が異様に低下しているのかもしれない。

ドライヤーで足乗せ台を丹念に乾かし、準備は整った。

安定性から当然フローリング上に体重計を設置。

全裸計測を余儀なくされるので、玄関ドア真正面延長線上ではなく、

ドアから見て左に折れるキッチン角が良いだろう。

万が一、測定中に母が帰宅してもボクの姿は見えず、

マッハでキッチンテーブルに置いたパンツを穿く時間は十分にある。

 

スッポンポンで、おごそかに判決台に上がるケナゲな青年。

針が小刻みに左右揺れを続ける。

安定するまで少し待つ。もういーかいッ?。

もうーいいーよッ!。

“絶食ダイエット(8) / 全裸で体重測定 / 絶食3日で体重減らず” の続きを読む

絶食ダイエット(9) / 絶食4日で体重減らず / 身体の感覚がおかしい

Title : ダイエットの大敵、その香り!

 

 

 

絶食5日目、am9:00。

気絶就寝 ( 寝床に入りバタンキュー睡眠、の人は失神に近い状態である、と言われている )

から意識を取り戻したボクは、早送りの “ 起き上がり小法師 ” ( 福島県の郷土オモチャ )よろしく起床ーッ!。

3日間に渡る絶食にも関わらず、何故体重が1グラムたりとも減っていなかったのか?!。

ググッてみればと言うかもしれない。しかしそれでは面白くない。

手に汗握る一進一退の攻防は、最初から最後までボク1人だけの戦いなのだ。

それこそが、アンポンタンなボクが手にすることが出来るかもしれない、

絶食貫徹の名誉に添えられる唯一の花なのだから!。

などとブツブツ言いながらカレンダーに

待てよ!。4日クリアってことはだよ、

期間折り返し地点を過ぎたってことでないの?!。

やったーッ!!。両手バンザイ、ガッツポーズ。

んッ?、寒いッ。両手限界まで上げたから、

シャツとパジャマが浮いちゃってお腹半出しでないの!。

このパジャマ洗い過ぎて縮んじゃってんのよねぇ。

でもお気に入りだから絶対新しいの買わないッ。

そんなことより体重計。ただちに計測。また70㎏なんてったら許さない!。

と、自室の机の下にキープしておいた裏切者のソイツを抱え

測定場所である台所へ。昨日と違い母が目の前。

 

「何ですかアナタは。後生大事に体重計抱えてぇ~」

「ワタシのことは放っておいて下さい」

「放ってあるわよー、常にー」

 

母は昆布飴をくっちゃらくっちゃら。ゴクン!、と巨大な音で喉が鳴り、

その音に仰天するボク。しかし母は気にも留めず新聞を読んでいる。

どうやらボクにだけ聞こえたようだ。

何だかなー。物を一切食べなくなったら体の感覚が非常におかしい。

間違いなく異常な世界に入り込んでいる気がする。

でも残りあと3日じゃないの。

気を取り直して体重計をセット。

ゴルファーがスイング前に微妙なスタンディングチェックやるじゃない?。

あんな感じでマジ顔セット。母の前、まさか全裸になるわけにもいかず、

仕方なしにパジャマ姿のまま乗っかる。

 

「何キロ減った?」

と新聞に目を落としたままPTA。

「静かにッ!」

 

左右小刻みに震えている針が止まった。ゆっくり視線を落とす。

 

70・1キログラム。

 

灼熱のマグマの様に、凄まじい怒りがボクの足元から急激に噴出!!。

それに乗ったなら、

ボクは一直線に月まで瞬時に到達したであろう

程の激憤!!。その瞬間、ボクの頭をよぎる声。

 

奥さん、ジャガイモの芽、どうやって取ってらっしゃるのぉ~?。

 

昨日散歩中に八百屋の前で聞いた会話だ。何で今そんなのが出てくるのか!!。

おかしい。何もかもがおかしい。何かが狂っている。

 

「ちょっと体重計に乗ってみて」とイラ立ち、母に告げるボク。

 

「ヤァーよ!」

「え?。何で。それくらいいいジャン」

「ヤァーだァ」

 

非協力的な家族。非協力的な体重計。ボクは四面楚歌なのか。

 

 

 

 

 

絶食ダイエット(10) / 絶食5日で体重減らず / 飲み水だけなのに減量出来ない

Title : 赤味が腹に染みる…

 

 

絶食6日目、朝10時ジャスト。

期待と不安、興奮で毛細血管破裂、鼻血まみれで体重測定せねばならぬ

覚悟で体重計に乗ったボク。

この時ほど神の存在を身近に感じたことは過去に無し。

“ 溺れる者はワラをも掴む ” (日本のコトワザ)。

ボクの様な未熟者には

“ 溺れるタコは漁師をも掴む ” がお似合いだろう。

タコが溺れるはずもない。そのタコが溺れている。あり得ない…。

 

絶食5日間。

口にしたのは、日本茶、ブラックコーヒー、水。それだけ…。

飲み水だけなのに減量出来ない。

それだけなのに体重が1グラムたりとも減らないミステリー…。

悔しさのあまり唇を噛まずにはいられないッしょ~?!。

海面でタコが溺れかけワァーワァーやっていると、

たまたま通りかかった小さな漁船がタコに優しく手を差し伸べる。

漁師といえばタコの天敵。

それを承知で差し伸べられた手に吸盤をシッカと張り付けるタコ…。

物悲しい光景だ。

聖書を読んだこともないボクが唐突に神にすがる。

神は人間の天敵ではないが、果たしてボクにはどうだろう。

1日の糧 ( かて ) に感謝するどころか拒絶。

さしたる重大な理由が有るでもなしに…。

 

神の怒りに触れたのだ。でなければ、

こんな異常現象が起こりうるはずなどないではないか。

今ほどボクは、ハムレットなる人物を身近に感じたことはない。

“ 生きるべきか死ぬべきか。それが問題だ ”

なわけで、神様やハムレット様に強く強くお願いしながら、

両目を固く閉じ測定に挑む。

 

「お願いお願いお願いします!!!!!!。1キロでいいですから減ってて下さい!!!!!!!」

 

70.1キログラム ( 前日と同じく春物パジャマ着用 )

 

ガックリと頭 ( こうべ ) 垂れ、ふらふらとキッチン。

ドッサリとイスに身を投げ出す。

 

アレ?。母親は外出だったか。じゃ全裸測定出来たあ~。

フッ(自虐笑)。体重減らないんだから無駄ジャンそんなの。

きっと全身の肉をヌイグルミよろしく脱ぎ捨て、

骨だけで体重計に乗っても70キロなんだゼ!。

去年、三日連続の寝正月、最高にドカ食いした時

たちまち3キロ太ったじゃないの!。

増えるのはマッハで、何でぜい肉だけはダメなの?。おせ~て ( 教えて )。

“絶食ダイエット(10) / 絶食5日で体重減らず / 飲み水だけなのに減量出来ない” の続きを読む