Title : ダイエットの大敵、その香り!
絶食5日目、am9:00。
気絶就寝 ( 寝床に入りバタンキュー睡眠、の人は失神に近い状態である、と言われている )
から意識を取り戻したボクは、早送りの “ 起き上がり小法師 ” ( 福島県の郷土オモチャ )よろしく起床ーッ!。
3日間に渡る絶食にも関わらず、何故体重が1グラムたりとも減っていなかったのか?!。
ググッてみればと言うかもしれない。しかしそれでは面白くない。
手に汗握る一進一退の攻防は、最初から最後までボク1人だけの戦いなのだ。
それこそが、アンポンタンなボクが手にすることが出来るかもしれない、
絶食貫徹の名誉に添えられる唯一の花なのだから!。
などとブツブツ言いながらカレンダーに
◎
待てよ!。4日クリアってことはだよ、
期間折り返し地点を過ぎたってことでないの?!。
やったーッ!!。両手バンザイ、ガッツポーズ。
んッ?、寒いッ。両手限界まで上げたから、
シャツとパジャマが浮いちゃってお腹半出しでないの!。
このパジャマ洗い過ぎて縮んじゃってんのよねぇ。
でもお気に入りだから絶対新しいの買わないッ。
そんなことより体重計。ただちに計測。また70㎏なんてったら許さない!。
と、自室の机の下にキープしておいた裏切者のソイツを抱え
測定場所である台所へ。昨日と違い母が目の前。
「何ですかアナタは。後生大事に体重計抱えてぇ~」
「ワタシのことは放っておいて下さい」
「放ってあるわよー、常にー」
母は昆布飴をくっちゃらくっちゃら。ゴクン!、と巨大な音で喉が鳴り、
その音に仰天するボク。しかし母は気にも留めず新聞を読んでいる。
どうやらボクにだけ聞こえたようだ。
何だかなー。物を一切食べなくなったら体の感覚が非常におかしい。
間違いなく異常な世界に入り込んでいる気がする。
でも残りあと3日じゃないの。
気を取り直して体重計をセット。
ゴルファーがスイング前に微妙なスタンディングチェックやるじゃない?。
あんな感じでマジ顔セット。母の前、まさか全裸になるわけにもいかず、
仕方なしにパジャマ姿のまま乗っかる。
「何キロ減った?」
と新聞に目を落としたままPTA。
「静かにッ!」
左右小刻みに震えている針が止まった。ゆっくり視線を落とす。
70・1キログラム。
灼熱のマグマの様に、凄まじい怒りがボクの足元から急激に噴出!!。
それに乗ったなら、
ボクは一直線に月まで瞬時に到達したであろう
程の激憤!!。その瞬間、ボクの頭をよぎる声。
奥さん、ジャガイモの芽、どうやって取ってらっしゃるのぉ~?。
昨日散歩中に八百屋の前で聞いた会話だ。何で今そんなのが出てくるのか!!。
おかしい。何もかもがおかしい。何かが狂っている。
「ちょっと体重計に乗ってみて」とイラ立ち、母に告げるボク。
「ヤァーよ!」
「え?。何で。それくらいいいジャン」
「ヤァーだァ」
非協力的な家族。非協力的な体重計。ボクは四面楚歌なのか。