財産相続裁判の行方 / 本妻VS愛人

 

夫である貼彦(はるひこ)突然の他界、それは空恐ろしく炎上する骨肉の争いを示唆していた。白日の下に晒される妻と愛人の修羅場、それが法廷内でたった今、幕が切って落とされた。まずは愛人側弁護士QBが答弁。

「愛人であった金本さんは張子さん宅を訪問し、その玄関口で “ 私は内縁の妻なんだから貰う物は貰うわよ! ” と言った、と私の依頼人が供述書しております。これは…」

「裁判長、異議あり!。内縁の妻とは内側を指しておりますが、金本さんは貼彦氏とは1度も同居した記録がなく、よって部外者扱いとなりますので外縁の妻が相当であると思われます」と本妻側弁護士GH。

「分かりました…。書記官、内縁の妻という文言を記録から削除するように…。QB側は答弁を続けて下さい」と裁判長。

「とにかく、金本さんは張子さんに “ 私は外縁の妻なんだから貰う物は…」

「裁判長、異議ありッ、金本さんは如何なる場でも自分が目立たなければ気が済まず、いつも故人との交際を周囲に見せつけていました。つまり金本さんは裏方で故人を支えたことは一度もなく、縁の下の力持ちたる証拠を何ら有しておりません。よって、外縁の妻という文言からという字を削除し外の妻と表記するよう強く求めます」とGH。

「QB側、何か反論はありますか」と裁判長。

「確かに縁の下の力持ちではなかったかもしれませんが、金本さんはよく故人と縁日に連れ添って出かけており、故人と出かけた出雲大社でも八百万の神に縁結びの願掛けを度々行っています。それも必ず本妻には内緒の外出でした。以上のことから金本さんは推定内縁の妻に該当するものと考えます。また金本宅の庭は吹き抜け庭園で住居の真ん中に位置しており、そこには小さな縁側も有ります。ここに吹き抜け庭園の縁側写真Aを証拠として提出致します」

「受理します。QB側は答弁を続けて下さい」

「本妻である張子さんは訪ねて来た金本さんに “ 私が貼彦の家内でございます ” と挨拶した、とありますが真実なら虚偽発言です。家内とは家の内側に居る者の意味ですから、共働きの張り子さんには全く当てはまりません。正社員である張子さんの家外活家内に該当せず、家外でございますと挨拶せねばならなかったが、しなかった。裁判長、私は張子さんへの口頭弁論を求めたいと思います」

 

「張子さん、アナタは職場同僚の者達に向かって “ 所詮愛人は愛人、奥様に勝とうなんて十年早いのよ ” と発言したとあります。発言に間違いはありませんか」と愛人側弁護士QB。

「ありません…」

「とすると矛盾しますねえ…。大きな奥座敷の通称が大奥。家の奥で常に控えている方だからこそ奥方。現代表記では奥様、または奥さん。ですがアナタは毎朝出勤し、朝早いことから住居内では玄関に一番近い部屋を自身の部屋にしています。つまり奥様ではなく手前様だったのではありませんか?」

「だとしても金本さんが愛人で私が配偶者であることには何ら変わりありませんけど」

「しかし実質的にはアナタは料理など作ったことは1度もなく、白米は連日ストア購入だったとレジ係が証言しています。だとすると、また食い違いが出てきますねえ。奥様という漢字の中にはという字が入っており、この漢字はどう見てもオヒツに入ったで…」

「異議あり裁判長、根拠のない推論で誘導尋問です!」とGH。

「認めます」

「では質問を変えましょう。あなたはさっき自分が配偶者であることには変わりがないと言った。しかし実際に出雲大社で仏像を多数購入し故人にプレゼントしたのは金本さんでアナタではない。アナタは過去一度も夫に仏像神像の類一切を贈ってはいない。配偶者とは偶像配る者のことで…」

「裁判長、事実誤認で明らかな誘導発言です、削除を求めます」

「認めます。QB側は弁論に配慮をするように」

「分かりました。裁判長、金本さんは月に1~2回ほど故人を自宅に宿泊させる習慣を9年にわたって続けてきました。つまりこの行為は同棲に当り、という字には明白にという字が見てとれます。ここに本年度最新版電子漢字辞書Bを証拠確認補佐資料として提出致します」

「受理します」

 

公判はもつれにもつれ、最終的には最高裁の判断を仰ぐこととなった。財産分与訴訟では類をみないこの裁判は、結局元妻と元愛人が個人財産総額248,500円を二等分することで和解が成立した。

 

 

◆写真タイトル / 炎上する焼肉

 

 

 

★ネコならエッセイ / 当ブログのエッセイ文、写真、イラストの無断掲載、転用を固く禁じます。