パディントンとテッド / マーマレードとドラッグ / 今と昔をつなぐ旋律

Title : 本質を考える主人公は常に興味深い

 

 

「時代が大きく変わり、ひとたまりもなかった」と言って店じまいをする小規模経営者社長。何もかも規模が小さいゆえに、倒産回避の手立ては用意出来ても、それを実行に移せるだけの資金調達が出来なかった。

「時代の波には勝てなかった」と言って吸収合併される大規模経営、すなわち大企業もある。何もかも大規模で倒産する危険性など思いつきもせず、乗っ取られる最悪のシナリオ回避の手立ても、有り得ないの一言でタカをくくり考えさえしなかった。

つまり、時代の波に勝てなかった、のではなく、時代の波が現在どんなものなのか、昨日の波、今日の波、そして明日の波はどんな特徴や要素を持っているのか、どうすれば乗り切れるのか、操れるのか、徹底分析などしたこともなかった。

つまり、サーフィンとは若者だけのものであって、陸の人間には一切関係がないと真顔で言う種族は確かに多く存在する。

 

映画『パディントン』はイギリスを舞台に物語を展開したクマの物語。

映画『テッド』はアメリカを舞台にひと騒動起こしたクマの物語。

映画パディントンのスタッフ一同は、古き良き時代のモラル、すなわち子供に悪影響を与える表現を完全排除し、徹底的に愛と夢を与えられるよう、最新の注意を払った映画作りに終始した。

映画テッドのスタッフ一同は、今という時流に背くことなく一切の現実社会の実態、その要素を受入れ、子供に悪影響を与える表現一切を、現実の日常通りに映画の中に反映させ、それでも夢と愛を子供達に与えられるかどうか、実験的な試みを行った。

両者は対照的な性格と生い立ちを有したクマ。従って、何もかもが違う映画として、ただただクマと人の関わり合いを通じて形成されうる愛一切を目指す。

両作品の注目すべき共通点は、古き良き時代のブロードウェイミュージカル的演出舞台が用意されたことだ。

つまり、今現在の時代の流れ、ミュージックシーンの流れなど一切考慮に入れずに原点回帰を試み、反転させて今の息吹を観客に与えようとした。

意地悪なお月様の弾き語りも、映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の楽曲やTVに映し出される古き良き時代の香りも、全てが今の息吹に負けない力を持たせることに製作陣は成功している。

水没したクマ、水没したかった女性、水辺でつまびかれるギター。水の流れは、うねりは『時』なのかもしれない。

時代の流れは確かにある。それに乗るしか選択肢はない、と常に考える人達は凡人で、流れをコントロール出来、それを楽しめる人達こそが、

常にクリエイターと呼ばれる。

岸にたどり着く人ではなく、岸を創り、人々を手招きする人だ。